ブレーキキャリパーO/H
 ブレーキフルード交換ブレーキパッド交換、ブレーキ関連の整備は自動車やバイクを走らせる為の生命線とも言える重要な整備かと思います。とにかく止まる亊の出来ない車はエンジンのかからないソレよりもタチが悪い訳でして日頃のメンテナンスがもっとも物を言う箇所でもあると思います。

 日常的なブレーキのメンテナンスと言うとグリスアップ等がありますがそれでも筒の中にピストンが入っていてそれをブレーキフルードを押して駆動するという構造上、シール類の経年劣化等は防ぐことが出来ません。気がつかないウチにブレーキを引きずっている車両も以外と多いかと思います。

 そしてブレーキがそういった状況まで悪化してしまうと、もはや分解してのO/Hしか道はありません。

 今回実践でチャレンジするのはそのブレーキのキャリパーO/Hです。しかし、読み進める前にひとつ言っておきたいことがあります。ブレーキフルード交換やパッド交換の時にも書きましたがヘタな整備は逆に命に関わります。特に自動車のキャリパーは4輪分あるって亊とサイドブレーキとの兼ねあいで車種ごとに複雑な機構を持つ物もあります。そういった特殊なキャリパーでは分解した手順で組み直せばOKってだけではダメなキャリパーもありますので初めて行う際や自信の無い場合は経験者に同伴を求めるか、思い切って諦めるくらいの覚悟で臨んで欲しい作業です。なぜこんな亊を書くのかと言うと上記のような特殊なキャリパーは分解した手順で組み直すと一見キチンと出来ている場合が多くちゃんと出来ていると思いそのまま装着してしまう危険性があります。すぐにブレーキフルードがだだ漏れとかなら誰でも「やばい」って分かるかと思いますが、組み付け直後は問題も出ずそのまま大丈夫と思って走行後、ダメになってしまうケースもあります。これが本当に怖いんですね。ご自分のキャリパーが少し普通と違うんでは?と思い当たる方がいましたら出来るだけ慎重に考えてみて下さい。

 以下で実践を進めますがそういった車種ごとの違いまではさすがに触れられませんので大雑把に作業の流れを紹介しますので後はご自分のブレーキと見合わせて臨んでみて下さい。見ていけば分かると思いますが作業自体は結構簡単ですので工具と部品を揃えて挑めば難易度はそれほど高くも無い作業でもあります。

●ブレーキキャリパーO/H 虎の巻その1
オーバーホールと言うくらいだからやばそうな部品は出来るだけ新品に交換していこう!素人さんに多いけど部品を入手するのを忘れて作業をはじめてしまい、しょうがないでの旧部品をそのまま組んでしまう亊って結構聞きます。分解整備さえしなければなんとか性能を維持していた部品も分解した途端にその寿命を終わらせてしまう亊って実際には良くあります。ブレーキ関連の交換部品はカップやシール類がメインですからそれほど高くはありませんので余ってもイイヤってな感じで準備しておいたほうがいいかもしれませんね。

●ブレーキキャリパーO/H 虎の巻その2
何気なく組んでいると分からなくなりがちなシール類。大抵はばらした逆に組んでいけばOKなんだけどたまにシールに方向性のある物があったり奥の方にいれなければいけないシールなんかだと最後の最後で裏返ってしまっている場合もある。何度も確認しながら進めよう。

●ブレーキキャリパーO/H 虎の巻その3
作業環境は清潔に。せっかくのオーバーホール、組み付けるものが汚れていたり地面に部品を落としてしまって細かなほこりがついたり・・・言わなくても分かると思うけどご法度。

●ブレーキキャリパーO/H 虎の巻その4
最初でも書いたけど「あぁ、これは私には無理だ」と思ったらすぐに気持ちを切り替えてプロを頼ってみよう。あいまいな判断でテキトーに終わらせるのは絶対ダメ。

 それでは今回は一番シンプルなオートバイのシングルピストンのキャリパーをO/H。

 まず用意したいのがこの手の分解整備にはとても便利なステンレストレー。そして洗浄&脱脂しつつ様子を見ながら進めるのでパーツクリーナーも。ステンレストレーは何個かあると分解用・新品部品準備用・組み付け用ってな感じで使い分けられるので便利。

 キャリパーをサポートから外す所ははしょりますが外したときにブレーキホースからフルードがたれないようにするならフルードストッパー等も用意していた方が良いかと思います。

インペリアル ホースクランプツール

SIGNET ホースクランプツール

 無事外してキャリパー単体になりましたらまずはピストンを抜きます。この時、ホースのジョイント部からエアーで吹いてピストンを抜いてもOKです。今回はエアー環境が無い前提でハスコのキャリパーピストンツールを使用。

 この工具は組み付け時や普段のメンテナンスにも使用しますので持っていて損は無いと思います。

 次にシリンダー側に残ったシールを外します。こう言った作業にはPBのピックツールがオススメ。

 この時の注意点ですが、写真の作業では大丈夫だったのですが稀にシールの向きに方向性がある車種があります。ばらすときにはなるべく「どうやって付いていたのかを覚えておく」ようにしましょう。どうしても自信の無い人はばらした順に向きを変えずに並べていっても良いかと思います。

 シリンダー内部の錆やちょっとした段付きを耐水ペーパーでこすって落とします。錆などの状況にもよりますが大体#400〜#1000くらいのペーパーを用意しておきましょう。

 このとき削る訳では無いのであまりガシガシやらないように注意してください。表面のザラザラを無くす感じです。仕上げはオイルストーンを使うときと同じような感じで防錆潤滑油などをペーパーに吹きつけ仕上げると良いと思います。

 ピストンもまったく同じ。突出していた部分の錆ももちろんですがその境界あたりのスラッジも爪で引っ掛かりの無くなるくらいまでは磨きましょう。

 またひどい固着の場合ピストンの再使用が不可な場合もあります。「こりゃ、まずいなぁ」って思ったらここは迷わず新品部品を使いましょう。

 シリンダー&ピストンの研磨が終わったら新品のシールを入れ直し、グリスを塗っておきましょう。今回グリスはおすすめしているワコーズのスーパーシリコングリースを使用。

 ピストン側にも薄く全体に塗り込みます。(もちろんシールが当たるであろう箇所ですよ)

ワコーズ 耐熱スーパーシリコングリース

 グリスアップの終わった両方を合体。この時、シールがずっこけないように細心の注意を払って挿入しましょう。一度入ったら何度か動かしてみて変な動きが無いか確かめましょう。この時変な動きをするようでしたら一度ピストンを引き抜き、どこがおかしいのか確認します。手で動かしておかしい動きをするくらいならば組み上げた後、まともに動くハズがありませんからね。

 で、最後はキャリパーツールで少しグリグリしてシール・ピストン及びグリースを馴染ませてあげましょう。

 この作業は日頃のメンテナンスでも出来ますので普段少しブレーキが気になったらやってみると良いと思います。ちなみにアルミキャリパーが特に固着しやすいですので日頃から少し気にするようにしましょう。

 最後にキャリパーサポートとのスライドピン部分やダストシール部等にグリスを塗って完成。

 出来上がりです。上記の説明を見て「なんだ簡単じゃん」って思った方も多いかと思いますが実際は・・・やっぱり簡単です(笑)ハードな重整備と違って部品をばらして慎重に組み付けるだけですのでチャレンジすれば誰にでも出来ると思います。

 しかし。冒頭でも書きましたが命を預ける部品でもありますので初めての方は出来るだけ経験者に付き添ってもらって行った方がいいと思います。また途中で「やばい、やっぱ出来ないかも・・」と思ったら悩んでないでプロにお任せしましょう。授業料だと思えば安い物かと思います。

 さて、あまりにもあっけなく終わってしまったのでついでにマスターのO/Hもやってしまいます。手順や方法はキャリパーをやるのと変わりません。

 お、ちょうどマスターのカップには向きがありました。画像で分かりますでしょうか?テーパー状のゴムのカップが付いております。この向きを間違えると後で泣きを見ますのでご注意を。

 またキャリパーのシールとは違いカップは筒に入れていきます。結構コツが必要で、最初はうまく入らないカモしれませんががんばって入れましょう。

 とにかく入れなければ始まらないので規定の位置まで挿入出来たらあとは裏返っているのとかを直せばOKです。この時カップに傷を付けないように注意です。

 写真下が新品です。上の古い物と比べるとカップが痩せてしまっているのが分かるかと思います。

 キャリパーやマスターを作業するときに車種によってはスナップリングプライヤーが必要になる物があります。今回はマスターでしたので1箇所で済みますが自動車のキャリパーに必要だった場合2箇所以上出てきますのでキチンとスナップリングプライヤーを用意しておきましょう。


KNIPEX スナップリングプライヤー

 これは最後にダストシールをはめ込んでいるところですが結構硬く力が必要でした。こういった場合、KTCのシールツールが相手を傷めずに便利ですよ。

 今回はブレーキ周りのO/Hと言う亊で普段あまり出番の無い工具がたくさん登場したかと思います。準備段階でめげてしまいそうな方もいるかも知れませんが上記に挙げた工具達はその後の整備でも持っていると便利な物ばかりです。ご自分のブレーキがなんかおかしいなぁ・・なんて感じている方はこれを機会に一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか?

●最後に・・、ブレーキのシステムは大抵同じですが各社その機構には独自性があったりもします。上記で説明した注意点だけでは補えない複雑なブレーキも存在しますのでそういった場合は出来るだけ事前に情報を集め、また経験者に同伴してもらいようにしましょう。一度やってしまえば大体の雰囲気や感じは分かると思います。

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