燃焼室容積測定!圧縮比を求めよう
 さてと……今回のお話はちょっとディープです。でもエンジンを搭載した乗り物が大好きな人で興味の無い方はいないかとも思います。とりあえず当面の予定の無い方でもおもしろく読める内容になっていると思いますので、まぁ気楽に読み進めてみてください。またこれから作業予定の方はなるべく必要となる工具も随時紹介しつつ行きますので参考にしてみて下さいね。

 ガソリンエンジンって奴は燃料を入れてそれをぎゅーっと圧縮し、火を付けて爆発させるといった行程を回転運動に変えて動力としています。わかりますよね。

 燃料(ガソリン)を送り込むのはキャブだったりインジェクターだったりしますが、とにかく空気と程よくまぜた混合気をエンジン内部の燃焼室に送り込んでいるわけです。で、今回はその爆発エネルギーの元となる燃焼室とピストン、そしてそれらが組み合わさる亊によって圧縮される比率、「圧縮比」を求めるまでを実践してみようかと思います。

 まぁ小難しい亊は置いといて、プライベーターがエンジンをあけてどこかしらのチューンを施そうとした場合、ヘッドチューンやボアアップ等が代表的な作業になるかと思います。ヘッドチューンの場合ポート研摩から始まり燃焼室研磨や形状変更、バルブの突き出し調整等々、燃焼室をいじれば当然燃焼室容積が変わります。またボアアップの場合は圧縮比計算の元となる排気量の変更にともない、他の部分にいっさい手を付けなくても圧縮比がやはり変わります。

 上記のような事項が分からない方にも順を追って説明していきますので、ご安心を。

 さて少しだけ本題とずれた亊が書きたいのですが「なぜ圧縮比を正確に知る必要があるのか?」って亊です。燃焼室の容積測定って作業は、実は圧縮比を求めない場合でも燃焼室の形状を少しでもいじればやっておきたい作業です。例えば4気筒ならば4気筒全部の容積を綺麗に揃えたいですし、少しでもパワーアップを!と狙って作業したはずの燃焼室研摩が結果圧縮比を落とす結果になり、パワーダウンでは笑い話になりませんからね。燃焼室容積がノーマルと比較して、どれくらい増えたのか?これが以外と重要な訳なんですね。で、この時たいした変化が無く問題無さそうな雰囲気だったとしても、私を含め周りの友人は大抵圧縮比を割りだそうとします。何故でしょう?

 「俺のエンジン圧縮比○○なんだよねぇ」

 って言いたいから(笑)。だって素人がエンジンに手を出すなんて、そう滅多にある作業ではありません。もう大作業な訳ですよね。それが普通にエンジンあけて普通に組んで載せちゃったら、自慢できないじゃないっすか(笑)

 せっかくピカピカに燃焼室を仕上げ、ヘッド面研して「やり遂げた」って満足感には「圧縮○○だぜ!」って言うのは絶対必要だと思うんですよね。え?私だけ??(笑)

 かなり話がずれましたが、さてここからが実践です。

○圧縮比ってものを正確に理解しましょう。

 エンジン内部でピストンが上下して、吸入・圧縮・排気が行われているのは、なんとなく分かると思います。その中の圧縮行程で圧縮比を求める亊が可能です。

 上の図を参照しながら読んでみてください。圧縮比とは簡単に言うと、図左のピストン上死点時の燃焼室容積と図右のピストン下死点時の燃焼室容積との比率の亊です。この場合の燃焼室容積とは「ヘッド容積+ガスケット容積+行程容積(排気量)」の合計値です。(上死点時は排気量は関係ありません)

#ちなみにピストン上死点ってのは簡単に言うとピストンが往復運動をしている頂点の時の亊です。下死点がその逆ですね。

 全然複雑な亊はありません。ド・ノーマルの状態でメーカーのカタログデータの正確な物があれば、排気量からヘッド容積を逆算することも可能です。

 ちなみにこの場合の行程容積(排気量)は、4気筒ならば1/4、6気筒ならば1/6をして1気筒当たりの排気量を示します。

・例として4気筒1600cc、ヘッド容積+ガスケット容積が40ccの車があったとします。その場合下図。

 排気量+(ヘッド容積+ガスケット容積) ÷ (ヘッド容積+ガスケット容積) = 圧縮比

 ですので上記の例ですと… 440cc ÷ 40cc となり圧縮比は「11:1」となります。

#また上記の応用例なのですがガスケットも含めたヘッド容積が分かったら…

 「排気量 ÷ (ヘッド容積+ガスケット容積) +1」でも同じ結果になります。この方法は、良く専門書でも紹介されている方法です。どちらでやっても同じ値になります。お好きな方でどうぞ。

#ちなみに狙う圧縮比は、ガソリンエンジンでは大体8〜13くらいが普通だと思います。ノーマル状態に比べて高い圧縮比は、パワーアップの一つの要因となります。主にヘッド面研で圧縮比のアップをする亊になると思いますが、燃焼室が真円ならば楽なんですがスキッシュエリアがある燃焼室の場合、狙いたい圧縮比に対して何ミリの面研をすれば良いのか難しい所です。この辺のお話もしたいのですが、今回は長くなるので割愛させて頂きます。

●注意点として。

 上記の図を見て、ガスケット部分の容積も重要だと分かると思います。ただし注意して欲しいのは「ガスケットは組み付け時につぶれる」と言うのを忘れないで計算して欲しいのです。どういう亊かというと、測定工具で素の状態のガスケットを計測しても意味が無いのです。あくまでもヘッドボルトを規定トルクで締めつけて、それによってつぶれたガスケットの厚みが正確な厚みな訳です。

 特に純正のガスケットの厚みは数値の記載の無い物が多く、人気車種などはネット上にも広く公開されていて情報を入手しやすいのですが、ちょっとマイナーな車種になるとガスケットの厚みが分かりません。その場合は、上記の図の方法を理解して逆算するしか方法は有りません。大抵「排気量」と「圧縮比」は公開されてますので、ノーマル状態で燃焼室を測定し逆算してみてください。

 アフターパーツで供給されるガスケットには「t=0.8mm」とか厚さの記載があるので、それを参考にしてください。

#と、言うわけで圧縮比やそれにまつわる情報を正確に入手する方法として、アナログ的に燃焼室の容積を調べなくてはいけない亊が分かって戴けたかと思います。以下から燃焼室を測定の実践編に移りたいと思います。

○燃焼室容積の測定実践!

 と、いうわけで、ヘッド部の燃焼室の測定をしてみましょう。この部分は、もう実測しかありません。どういった測定方法でもかまいませんから、実際のエンジンが動く状態と同じようにプラグを締めつけ、バルブを刺した状態で測定を開始しましょう。

 今回はエイビットオリジナルの測定セットを使い、実践してみたいと思います。測定液は「硬過ぎず柔らか過ぎず」の物が良いです。暖かい時期はATFが粘度的にばっちりで、オススメいたします。寒い時期はそれでも硬いと思いますので、暖めてから使うか灯油等を混ぜて少し粘度を下げてあげましょう。通常のエンジンオイルと灯油の混合とかでも大丈夫ですので、いろいろ試してみてください。要は測定に際し、粘度が硬すぎるとなかなか流れてくれないので、各気筒ごとの精度が落ちます。柔らか過ぎるとバルブのすき間から流れ出てしまいます。ちょうどいい加減でやってみてください。

 このときプラグは問題無いのですが、バルブはばらした状態になっていた場合、状況によってはバルブのすき間から測定液が漏れる亊があります。加工前に測定するときなどに起こりえる亊ですね。この場合はバルブに少量のグリスを塗って、密着させてあげましょう。

 まずはなるべく水平な場所で作業しましょう。(大体で大丈夫ですけど)次にヘッドに矢印のような木っ端をかませて、少しヘッドを斜めにしてあげます(少しで良いです)。これは測定液が充填してきた際に、エアを効率良く逃がすためです。

 測定する気筒の燃焼室の周りに、すき間なく薄く伸ばしながらグリスを付けていきます。アクリルプレートを接着する為ですので、面倒がらずに綺麗にやりましょう。

 アクリルプレートを押し付けます。アクリルの穴が少し中心よりずれた所になるようにセットすると、エアが抜きやすいです。さきほど塗ったグリスで、完全に密着するまで押し付けます。

 測定液の準備です。このエンジンの燃焼室容積は大体40cc前後だと言うことは分かっておりますので、メスシリンダーに50ccの測定液を用意しました。よく注射器で測定する方もいるかと思いますが、あれは結構誤差が多く計りづらい為に、こういったメスシリンダーの利用を推奨します。

 メスピペットで吸い上げます。この時の吸い上げる量は、あまり気にしなくて大丈夫です。あくまでも最終的にメスシリンダーに残った量を見ますので、適量づつ2〜3回に分けて燃焼室に注入していきます。吸い上げは右のように専用のスポイトを後端部に取り付けて吸い上げても良いですし、後端部に口を付けてストローの要領で吸い上げても構いません。やりやすい方法でやってみてください。

 注入の際はこのように後端部を塞いで、ちょっとずつ入れていきます。スポイトで押し出すとエアが抜けないので、逆に面倒ですよ。

 注入していきます。この時最初に言った粘度が硬かったりすると面倒になりますので、1発目に「んー、なんか違うな」って思ったら、すぐに粘度の見直しをしてみましょう。とにかくこの時は量とかは気にしないで、エアを噛まないようにって亊だけに集中して作業してください。

 口切りイッパイ入ったら、そこでOK。作業しやすいように、注入穴は少し大きく開けてあります。途中でエアを噛んだりしたら、ここから逃がすようにしてみてください。また穴の大きさで表面張力により満タンの加減が分かりづらいカモしれませんが、とにかく全気筒の条件が合えばOKですので、同じように作業していきましょう。

 終わったら後はメスシリンダーの残量を見て、どれだけの量が入ったのかを確認すればOK。

 上記の方法を全気筒にやっていけばOKです。誤差も十分に考えられますので、心配な方は2〜3往復やってみましょう。実際何度かやっていると慣れてきて、平均的な作業が出来るようになってきます。

 ここまででとりあえず燃焼室の容積の測定は、完了しました。さてこれで圧縮比を!と思うのは、実はまだ早いのです。それは……ピストン形状の問題。昨今のエンジンのピストンは、バルブの逃げやターボ化によるローコンプ、NAエンジンでのパワーアップ目的のハイコンプなどの理由で上で書いた図のように実際は真っ平らではありません。

 つまりピストンが出っ張ったり引っ込んだりしている分を考慮してあげないと、ピストン上死点時の本当の燃焼室容積が分からないんですね。

○燃焼室容積の測定〜ピストン編〜

 このピストン側の容積測定が、実は一番面倒な作業でもあります。なんて言ってもデコボコしてますから、へこんでいるなら測定液を流し込んで上記の方法で測定すればいいのですが、ちょっとでも出っ張っている部分があればその個所は測定不可能ですからね。

 図で説明するとこんな感じです。NAエンジンのハイコンプピストンは、大抵こんな感じです。上記で測定したはずの燃焼室容積だと思っていた部分にかなり食い込んでますね。要はこのピストントップの盛り上がり部分を差し引いてあげないと、正確な燃焼時の燃焼室容積が出ないんですね。

#ちなみにターボ車などの場合は、ローコンプにするために逆にへこんでいる場合もあります。その場合は、上の説明とは逆に足して上げればOK。とにかくピストン上死点時に燃焼室容積がどれだけになるか、正確に分かれば良いだけの話です。

 で、実際はどのように測定するかと言うと……このように↓

 ピストントップ部が約3ミリ盛り上がっているピストンがあったとします。そのままでは測定液も流し込めませんので、上でやっていたような測定方法が出来ません。それならば、測定出来るようにピストンを上死点位置から少し下げて上げれば良いわけです。この測定も全気筒やらなければいけませんから、キチンと下げる数値を決めてやります。図のピストンでは3ミリのピストントップの盛り上がり部分をキチンと測定しなければいけない訳ですから、暫定で5ミリ下げて測定とします。この時の下げ幅は、測定液がキチンと全体に流れてくれれば何ミリでも構いません。

 後はピストンを5ミリ下げた分の円柱の容積を求め、実際に測定液が入った量を引いて上げればピストントップ分の容積が割り出せます。

 割り出せたピストントップ容積を最初に計測した燃焼室の容積から引いた数値が、実際のピストン上死点分の燃焼室容積となる訳です。

・円柱の容積は「半径×半径×3.14×高さ」で求める亊が出来ます。

 で、実際の作業ではまず正確に上死点を出し・・・・(ダイアルゲージを使いましょう)
エイビット推奨ダイアルゲージ&マグネットベースセット

 正確に必要とする深さ分、クランクを回してピストンを下げていきます。

 このようにピストントップが完全に沈んだ状態になるまで下げていき、先程言ったようにアクリルプレートをかぶせて測定液を入れても問題の無い深さを確認しましょう。あとは1個目で決めた深さで全気筒同じように行えばOKです。

 一度試しにアクリルプレートを載せてみて大丈夫なら、後はヘッドの測定をしたときと同じように測定するだけです。

○各数値から圧縮比を求める

 ヘッド燃焼室容積、ガスケット容積、ピストントップ部容積が分かったら、いよいよ圧縮比の計算です。電卓さえあれば怖くありません。下記の計算式通りに計算すれば、圧縮比が求められます。

△必要な各数値

・ヘッド燃焼室容積(実測)
・ガスケット容積(厚みと径から計算)
・ピストントップ容積(実測)
・排気量(カタログデータ参照の亊、1気筒当たりの正確な排気量)

△知らないとまずい計算式

・円柱の体積を求める公式 「半径×半径×3.14×高さ」 ←これだけ(笑)

1. ヘッド燃焼室容積 + ガスケット容積 - ピストントップ部容積 = ピストン上死点時燃焼室容積

2. 行程容積(排気量) ÷ ピストン上死点時燃焼室容積 + 1 =圧縮比


●今回使用した工具

燃焼室容積測定キット

ダイアルゲージ&マグネットベースセット


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