工具に関わる事

大型連休もなんとか終わり私も約半月ぶりにお休みをいただきました。
そんな久々のお休みは5月9日で「工具の日」だったようで、各SNSでもいろいろ盛り上がってましたね。

今は昔と違って眼の前の端末をポチポチすれば大抵の情報を引っ張る事が出来ます。
またそういったいろいろ溢れすぎてる情報過多な雰囲気も、さすがにみんな慣れてきているのか取捨選択もうまくやっているようで、ちょっと前に感じた明らかに頭でっかちな人ってのも少なくなってきた印象です。

PBドライバー各種

それでも。
私の見える範囲のSNS界隈でも他者の言動が気になり指摘してくる層がいます。

特に私が関わる工具ってお題目は誰もが語りやすいってのもあります。
かなり高級な工具メーカーを買ったとしても、それだって車やバイクを買うほどの価格帯ではありませんからね。
いろいろ試してみる事も出来るわけです。

基本的には私はそういった「工具を語る」人達を暖かい目で見ております。
自分の生業(なりわい)の事を熱く語ってくれる人ってつまり、自分のお客様でもあるわけですからね、そりゃ当たり前です。

でもそれが行き過ぎる時をたまに見掛けます。

「そんなの買うのはダメだよ」とか……そんな感じです。

でもね。
私に言わせれば工具なんて自分の気に入った物買えばいいんです。
性能云々とかそんなのすっ飛ばして「見た目がカッコイイ」とかだって充分に購入動機になると思ってます。

 

そしてここからが今日のお話の主題なんですけど。
「工具なんて好きなの買えばいいんです」と書きましたが、仕事としては逆でして「出来ればこれ買って欲しい」というスタンスでお客さんと接しております。
もちろん変な無理強いはしませんが、当店のWebサイトで発信させてもらっている情報も私個人のフィルタをかなりかけております。

最初に書きましたが、今の時代って調べる気になればいくらだって情報を掘り下げる事が出来ます。
それらを取捨選択する時にエイビットならこんな意見です。
ってのを明確にしておくのが専門店の義務なのかなって思ってます。

バァっと広げた風呂敷を見せて「さぁ選んでください」はあまりやりたくないってのが本音でして、出来れば自分の長年の工具販売の知識でお客様と繋がりたいと思ってます。

この連休では多くのお客様から「Webサイトの更新楽しみにしてます」と言っていただきました。
これからも当店はこんな感じのスタンスでやっていくと思いますので、みなさまどうぞよろしくお願いします。

── 工具の日に ── ヤマタク

ホイールナットのトルクレンチ

大型連休も終わり、1年でもっとも気持ちの良い季節の到来ですね。
雪の降る地域な人もそろそろ夏タイヤへの履き替え時期でしょうか、4月頃からホイール用のトルクレンチの問い合わせが増えております。

まぁスタッドレス絡みの話だけではなく、暖かくなってみなさんが能動的に動き始める季節ってのもおおいに関係あるのかもしれませんけどね。

そんなわけで今回はトルクレンチのお話。

このブログやお店のWebサイトでも何度か書いてますが、ホイールナットの締め付けトルクはだいたい100Nmちょっとでして、いわゆる一般的な整備向けに使用するトルクレンチの「5-25Nm」や「20-100Nm」ではちょっとだけ足りません。

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実際、お店でも「20-100Nm」のトルクレンチではダメですかね?
と、よく聞かれますがハッキリ言ってダメです。
トルクレンチは出来るだけ上限値・下限値付近で使わないようにするのが推奨されてますからね、100Nmギリギリになるトルクレンチはホイールナット用には合わないと断言出来ます。
(それプラス全長とかも厳しいってのもあります)

ちなみにホイールナットの締め付けトルクは103Nmとか108Nmとかいろいろ言われてますが、使われているスタッド径は一緒ですので個人的には『105Nm』とかで締め付けておけば大丈夫だと思ってます。
また一部の軽自動車ではスタッド径の細いモノがあるので、その時は85Nmを目安に締めてあげてください。
(他の締め付けトルク管理よりも「オーバートルク防止」の意味合いが強い箇所ですので、ここでの数Nmの違いはあまり気にしなくていいと思います)

ではホイールナット作業用にはどのトルクレンチがいいのか。
それは各メーカーが出している「40-200Nm」のトルクレンチがオススメです。

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SIGNET プリセット型トルクレンチ

さっき『一般的な整備で使うトルクレンチ…云々』と書いた事でわかるかもしれませんが、ホイールナットの締め付けトルクである105Nmというトルクは実は普段の整備ではほとんど出てこない締め付けトルクです。(大きいって事です)

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東日プリセット型トルクレンチ 標準モデル

ですのでホイールナット専用のトルクレンチとなってしまう場合には、そんなに気合をいれたトルクレンチを購入しなくても大丈夫かなぁ…とも個人的には思ってます。
もちろんこれで100Nm前後のトルク管理も出来るようになりますので、足回りとかで出てくる「50~80Nm」あたりでも使えるようになりますからね。
その辺の作業も視野に入れての購入ならば少し良いトルクレンチを買っておいた方がいいと思います。
特に80Nmあたりは3/8差し込みになる20-100Nmのトルクレンチよりも40-200Nmのトルクレンチの方が作業性が良いですからね。

そして逆にホイールナットだけにしか使わないって人にはこれがド定番のオススメ。

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KTC ホイールナット専用トルクレンチ

これ、パッと見では「少しお高いかな…」とか思うのですが、ケースが付いて、専用ソケットが付いて…と考えるとかなり安いんですね。
またトルクセットの手間もないわけですから「タイヤ交換くらいしかやらないよ」って人にはまさにズバビタのトルクレンチだと思います。

それとさっきも書きましたが整備用として考えると、他の用途が難しいレンジのトルクレンチですから、あえてタイヤ専用としてこれを買うのも賢い買い方だと思います。

トルクレンチって他の作業とかいろいろ漠然と考えてしまうと、すごく購入までが大変な工具のひとつだと思います。
ですのでこんな工具こそウチみたいな専門店にサクっと相談して、その人に合った買い方を模索してみてください。
テキトーに最初の1本を買ってしまうと後で後悔する率が高いですよ。

折れたネジの摘出

先日お店にオフ仲間のA君が駆け込んできて「大変っすー、プラグが折れちゃいました」と。

プラグってのはもちろんエンジンプラグ。

で、普通に考えるとプラグが折れちゃうなんて大事件なんだろうけど、工具の販売店をやっていると年に数回は聞く話でして、冷静にどこがどうなったのかを聞きます。

どうやらプラグ交換の際に新品プラグを締め込んでいき、最後にクイっと締めた時に「ポキ」っと折れたそうです。
ちなみにこのA君、整備的には初心者とかでは無くバリバリの職業整備士さん。
自分でもいろいろいじっていて、仕事を見る限りずさんな事はしないタイプです。

先程もプラグ破損は年に数回聞くと書きましたが、実際多いんですよね。
それも経年劣化で壊れるとかでは無く、新品の不良が原因なのがほとんどです。
今回はネジ部分だけが折れてしまいましたが、碍子部分が折れたり取れたり、またネジ山の不良で締め込み自体が出来なかったり。

整備をする中でも少ない、ハズした物を付け替える作業であるプラグ交換。

ですので初めての交換の方には注意深く「とにかく取り付け時は最初は手で締めてくれ」と言います。
これはHPにもわざわざ記載するくらいでして、みんな新品のプラグが不良率高いなんて思って無いんですよね。
いざやらかすとかなり面倒な部分ですので、気をつけすぎても損は無いと思います。

さて。

で、A君の折れてしまったプラグ。

ネジ部分だけエンジンヘッドに残っている状況でして、これ外さないと次のプラグも付けられない。
ネジ部分だけって事は真ん中に穴があいた状態のネジが残っているので、エキストラクター等がそのまま刺さります。

で、買っていってくれたのがこれ。

Ko-kenボルトツイスター

Ko-ken 3/8ボルトツイスターセット

普通の逆タップよりも焼きが若干柔らかめで2次被害の出にくい工具です。
またキャップボルトのHEXやTORXにも使えるので便利ですね。

その後、帰宅して作業したA君からメール。

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「無事に取れましたー」との事。よかったよかった。
こんな感じで「ネジが折れちゃって、それを外さないといけない」って事はいろんな場所で起こります。

作業としてはイレギュラーな作業なわけで「これで正解」っていう方法はありません。
※このブログを見て「何ミリのヤツを買えばいいですか?」って質問が来ますが、それも状況に応じて違うので出来ればセットで購入して欲しいと言っております。

みなさんも慌てたりして逆に遠回りな作業をしなくて済むように、頭を柔軟にして解決に向かうようにしましょうね。

#A君画像ありがとねー。

アルミの錆にスパールジェル

エイビットではいろんなケミカルを扱っておりますが、近年だと問い合わせナンバーワンなのがスパールジェル。
主にバイクショップ等のプロメカさんから高い支持を得ているスパールジェルですが、リピート率も高く実力もともなったケミカルとなっております。

 

ちなみにスパールジェルとはアルミの上に出てくる点錆や白錆の除去ケミカルです。古ぼけたアルミパーツを復活させてくれるのでありがたいですよね。
※メーカーサイトでは「白サビは落ちません」と書かれてしまいましたが・・・まぁ落ちますよね。

当店で10年以上人気が続いている光陽社のオフセットサイザルも、鏡面加工だけの話では無くこういった錆除去の問い合わせも多いんですね。

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もちろんサイザルも良い補助工具なのですが、何せ「鏡面加工補助工具」なので使えば光っちゃうわけです。
光っちゃって良い所や光らせたい人なら、これほど良い工具は無いのですがそうじゃない時は困るんですよね。

例えばバイクのフロントフォークのアウター。
もちろんビカビカに磨いちゃう人もいますが、純正の鋳肌だったり粗めのヘアーライン(引き目)のまま綺麗にしたい人だって多いんですね。
ただしアルミの錆ってのは基本的には一皮剥かないと落ちなかったわけでして・・・ここが悩みどころでした。

で、そんな悩みを解決してくれるケミカルがこれなわけです。

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ビプロス スーパージェル

商品名になっているとおり、緩めのジェルでして実際に使うと「トロー」ってくらいな感じ。
拾ってきた白サビがひどいキャリパーに使ってみましたが・・・。

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表面がもうボコボコするくらいひどい錆。ここにヌターっと塗って15分ほど注視。
しばらくするとシュワシュワと白濁してくるので、浸透させる為にブラシで少しだけゴシゴシ。

あらかた落ちたら後は水洗い。そう「水洗い」これも良いです、水で洗うだけで良いので車載状態のパーツにも使えます。流しちゃえば無害なので。

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するとこんな感じ。
ズルしないで1回だけしか施工してません。
それでここまで落ちてくれるなら良いですよね。
ちなみにもうちょいキッチリやりたいのならば、 何度かチャレンジすれば良いとの事。
アルミの錆はピンホールの奥とかに入り込んでいる場合があるので、そういうのは根気良く数回やるしか無いと思います。

しかし、ケミカルだけでここまで落ちてくれるなら良いでしょ。
アルミの錆を諦めていたアタナ。
これで愛車のピカピカ度が上げられますよ。