ボルトナットの基本

工具の専門店を長くやっていると様々な質問が寄せられてきます。

かなり突っ込んだ問い合わせ内容でこちらが焦る事もしばしばありますが、そういう深い質問はなんとかなります。(その場で即答出来なくても調べれば分かりますので)で、結構答えに悩むのが「何が分からないのか分からない」質問。

まぁこれは工具だけに限らずいろんな事に言える事だと思いますけどね。そういう場合かなり基礎的な質問である場合が多くてうまくお答えするのが難しい場合があるんです。

そんな基礎的な質問の中でも多いのが「サイズは何を買ったらいいのですか?」とか「私に必要なサイズはどれですか?」と言う質問。

いや、別にそういう質問が嫌とかでは無いのです。ちゃんと話をすれば解決しますし面倒とかでは無いのですが・・・ある時ふと思い立ったのですが、もしかして最初のこの段階で分からなくて挫折したり良く分からない物を買ってしまっている人って多いのかな?と疑問に思うようになったんですね。

ってなわけで今回はボルト&ナットの基本情報や使用サイズ(購入推奨サイズ)、そして呼び寸法とかを書いていきたいと思います。プロな方達には突っ込まれそうな言い回しもあるかも知れませんが、まずはさらっと理解する事が大事だと思いますので私なりにかみ砕いて書いていきますね。

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これから書いていくのは主に自動車やバイクの整備向けの事だと思って下さい。

工業向けや建築向けのボルトはちょっと違うサイズを使っていたりしますので今回は割愛させて頂きます。

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整備をしていると「10ミリのボルトを外す」とか出てきますがその場合はボルトの2面幅の事を言っています。

上の図の通りでして6角のボルトの頭の部分、面と面のサイズです。

ですので電話等での問い合わせの時で外したいボルトサイズを言うときはこの2面幅を言ってくれると助かります。工具もソケットやレンチはそのサイズが明記してありますので整備におけるボルトサイズとはこの事なんだと覚えておいてください。


自分に必要な工具(ソケット・レンチ等)を揃える時

例えば国産の自動車を買って初めて整備にチャレンジ!って方が工具を揃える場合、どんな工具を買えば良いのか分からないばかりか、ソケットの揃えるサイズさえ分からないと思います。

ちょっとかじった事のある人ならば「10,12,14,17mm・・って揃えていけばOK」とかすぐに分かると思いますが、初めての方はそれすら分からないわけです。

で、よく分からないって人は上の文章を読んでも意味が分からない訳でしてその辺をざっと説明したいと思います。

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工具的に言うと一番分かりやすいのでソケットで説明しますね。(レンチ類はソケットに合わせて購入すれば良いので)

上の写真のソケットセットは「8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19mm」の12個セットです。全部1ミリ単位で並んでいて8~19ミリまで網羅しております。

国産車(日本車)用の整備目的でソケットを購入する方はこのセットでは多すぎるのです。

国産車は一般的に使用するソケットサイズが大体決まっているので(使われているボルト&ナットが大体決まっている)決められたサイズだけど購入すればOKなのです。

ちなみに国産車での使用サイズは・・・

○8,10,12,13,14,17,19,21,22,24mm

って感じ。軽整備ならば19ミリ以上はあまり出てこないので「8,10,12,13,14,17mm」6個を購入すれば簡単な整備ならばほぼ大丈夫です。↓つまりこんな感じ。

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それではなんで1ミリ単位のフルセットがあるのかと言うとですね・・・。欧州や欧米の車やバイクは日本車と違うサイズを主に使うのです。(9,11,13,15mmとか)

これは世界統一規格であるミリ(メトリック)に各国の長さの単位を合わせたからだと言われております。

日本では10,12,14と飛んでいく基本サイズですが海外では主にインチから換算されたと思えるサイズが主流になっています。例えば13ミリとかはインチの1/2(12.7mm)をミリに換算ってな具合ですね。

では、欧州車とか欧米車ではどんなサイズを購入すれば良いのかと言うと・・・個人的にオススメは1ミリ単位で揃っているフルセットです。日本車と違いかなりいろんなサイズが入り乱れている外国車は、あまり決め打ち的な買い方をせずにフルセットで購入しておいた方が良い場合が多いと思います。

※上記に挙げたサイズは一般的なサイズです。その他にもその車種に応じた固有な特殊サイズが出る事がありますので、臨機応変に対応しましょう。

 


・ミリとインチって何?

来店されるお客様や電話での問い合わせ等で比較的良く聞く勘違いで多いのが「アメ車を買ったんだけどインチ工具を揃えたいと思って」ってヤツです。

勘違いしている人が多いので言っておくと近年のアメ車は基本はミリです。アメ車=インチと思い込んでいる人が結構いるので購入前には良く調べてみましょう。

ただし部品メーカーレベルではインチも多用されていて、例えばほとんどはミリ工具で大丈夫なのにブレーキだけインチとかって事もあります。この辺はかなり混沌としていますので下調べが必要となります。

誤解を恐れずに書いてしまうと現在インチを使用する車・バイクはほとんど残っておらず、アメリカのバイク「ハーレーとビューエル」くらいじゃないでしょうか。え?トライアンフは?とかミニは?とか思う方もいると思いますがが現在はミリサイズです。(もちろん例外はあります)

さてインチと簡単に言っていますが正確に理解している人は多くないと思います。

ミリを基本に考えてインチを説明すると・・。

 1インチ = 25.4mm

です。とにかく分からなくなったら上記の換算で電卓叩けばOK。ラチェットの差込み角等で有名な1/4・3/8・1/2は換算すると・・。

1/4 = 6.35mm
 3/8 = 9.52mm
 1/2 = 12.7mm

ってな感じです。だから3/8のラチェットを9.5のラチェットとか言う事もあるわけです。

整備向けに出てくる代表的なインチサイズの換算表を載せておきます。参考にしてみてください。

インチ
ミリ換算
1/4
6.35
5/16
7.93
11/32
8.73
3/8
9.52
7/16
11.11
1/2
12.70
9/16
14.28
19/32
15.08
5/8
15.87
11/16
17.46
3/4
19.05
13/16
20.63
7/8
22.22
15/16
23.81
1
25.4
1-1/16
26.98
1-1/8
28.57

あくまでも代表的なサイズです。本来は上記の他にもかなり細かくサイズがあります。

輸入車ではひょっこりインチサイズを使っている事があります。怪しいサイズが出てきたら上記の表と見比べてみてください。

○インチサイズ余談

・プラグサイズはインチ。

プラグレンチでよく見る「16・18・20.8」と言うラインナップ。これは元々インチサイズだったのです。ですのでインチの工具で回すことも出来ます。

上記の表で見ると分かると思いますが16mmは5/8インチ、18mmは11/16インチ、20.8mmは13/16インチです。これは元々プラグサイズありきで自動車業界が来てますので本来はインチなんだと言う事を理解しておけばOK。

・イギリスインチって何?

工業製品では今や希少種となってきたインチサイズ。そんなインチの中でも更に超希少種になってしまったのがイギリスインチ。

いわゆるみんながインチインチと言っているは通称USインチ(国際インチ)でしてイギリス独自のインチ規格も存在するのです。

これにはいろんな呼び方や表記法があり「ウイット・ワース」と言ったり「BSW」と表記されたりします。まぁ普段はイギリスインチと言っておけば問題無いと思います。

イギリスインチと言うくらいですから昔のイギリス車でたまに出てきて困らせてくれます。

代表的な車種ではミニ(BMWミニを除く)と逆ペダルのトライアンフ、そして年式によってはスーパーセブンにも出てきます。しかし、実際は普通の国際インチで作業可能です。(サイズがほとんど同じ為)

ですので例えば昔のミニを購入して「イギリスインチで揃えなきゃ」とか思う必要はほとんどありません。普通のインチ工具を買えばOK。

でも1サイズだけ問題のあるサイズがありましてそれがイギリスインチで言う所の「1/4イギリスインチ」。これはミリ換算で言うと13.3mm相当なのですが工具として存在する国際インチが無い為に、このサイズのみイギリスインチを購入する必要が出てきます。

※ただし、このサイズはあまり多く使われる事は無くミニだとエンジンを開けない限り出てきません。ってな訳で重作業を前提とした購入では無い限り普通の国際インチの工具を買っておけばほとんど問題は無いんです。まぁ13.5ミリくらいのネジが出てきたらイギリスインチだと思えばOK。それから騒いでも遅くは無いと思います。


 

・ボルトM径&ピッチの説明。

最初の方でボルトサイズは6角の2面幅のサイズで言ってくれればOKと書いてますが、工業的にはもうひとつの呼び方があります。

たまに聞いたことがあると思いますが「M8の1.25のボルト」とかそんなのです。

これは整備向けだとネジ修正の時とかに使う事になります。例えば舐めて崩れてしまったねじ山の修正時に6角の2面幅のサイズを言っていても意味が無いのでネジ山部分の径を言う事になります。

この時にM○○のピッチ○○という言い方が必要となってきます。

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今回はこの1本のボルトで説明したいと思います。ちなみに頭の六角の2面幅は14mm。いわゆる「14ミリのボルト」です。

これのM径とピッチはいくつでしょうか?

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まずネジ部分の最大直径を計ります。

目測だと測定が難しいのでノギスがあると便利。(ってかノギス推奨)

この時に「どこを測定すればいいの?」と聞かれる事がありますがネジの出っ張った一番外側で計りましょう。

測定の結果、8ミリだと分かりました。つまり・・。

 M8のボルト

だと言う事になります。

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そして次はピッチ。このようなピッチゲージを使用します。

このピッチゲージを見ると分かると思いますがピッチとはつまりネジ山が粗いか細かいかの違いです。

みんな同じように見えるネジですが実はネジ山の部分はサイズによってちょっとずつ違いまして上記のゲージ右側のように粗い目のネジ山もあれば左側のような細かなネジ山もあるのです。

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ピッチゲージ1枚づつにピッチ表記があり何枚か試していると写真のように「ピタ」っとくる物があります。

つまりそれがこのボルトのピッチと言う事になります。(写真は1.25でぴったりですね)ちなみにピッチはミリサイズで0.25刻みで存在すると覚えていればOK。

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ってな訳で上記の測定の結果。

M8 ピッチ1.25

のボルトだと言う事が分かりました。ネジの修正時にはこのサイズをもとにタップ等を立ててあげればOK。

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こんな風にボルトを見てみると単純そうなネジの世界が実は奥が深いのが分かると思います。

○基本使用サイズ

ん?待てよ。ボルトのM径とピッチ・・・。その組合わせは無限に近いんじゃ・・・って心配になるかも知れませんが、ネジ径とピッチの関係もソケットの使用サイズと同じように「ここをおさえておけばOK」と言う基本的なサイズが存在します。

以下のサイズが国産車をいじる場合に必要となる基本ネジサイズです。(旧JIS含む)

6角2面幅
ボルト径(M径)
ピッチ
8mm
M5
0.8
10mm
M6
1.0
12mm
M8
1.0/1.25
13mm
M8
1.0/1.25
14mm
M10
1.25/1.5
17mm
M12
1.25/1.5
19mm
M14
1.25/1.5
21mm
M14
1.25/1.5

※M10・12・14はピッチが2通り考えられます。

あくまでも目安ですが整備向けに出てくるサイズは上記の表で適合します。整備向けだとピッチ1.0付近ですのでピッチゲージで見るときもその付近を2~3回当ててあげればすぐに分かります。

ざっくりで良いので覚えておくと作業の時に便利ですよ。

○注意点&補足

・インチサイズ

インチサイズのネジももちろんありネジ径・ピッチもインチサイズになります。

ただしピッチの話とか結構難しくなりますので今回は割愛します。興味のある方は「ウィットネジ」とか「ネジ ユニファイ」とかでググってみてください。

・基本ネジ径・ピッチ以外のネジ

上記では国産車をいじる上での基本的なネジサイズを紹介しましたが国産車でもちょっと違うネジをわざと使っている場所があったりします。その場合修正用のタップやリコイルの入手が困難になりますのでご注意ください。

わざと違うサイズを使っているので有名なのがシートベルトアンカーのボルトとかですね。

ここを舐めたり違うピッチのネジを強引に差し込むんだリするとかなり面倒な事になりますので気を付けましょう。その他にもちょっと違うネジかな?と思ったら要確認です。

 

と、まぁここまで書きましたが大体で理解していればOK。

あんまり難しく考えなくても問題ありません。なんとなくで理解しているだけでも今後の整備の足しにはなると思います。

整備とは突き詰めればボルトナットを外して取り付ける作業な訳ですから仲良く付きあっていきたいですしね。