烏帽子(エボシ)なタガネ

ポンチとかタガネとか。
整備向けとしてそれらの工具を説明するときに、こういった脇役な工具の説明って難しいんですよね。

何が難しいって、そもそも「何に使うのか」の説明自体が難しいんです。

現在使っている人だってキチンとした王道の使い道の説明は難しいですよね、特に整備向けとして紹介しようと思うとなおさらなんですわ。
しかし持っていれば使うんです……持ってないから「たがねを使う」という発想自体が生まれにくいんだと思います。
だから持ってない人への説明はなおさら難しいんです。
(無限ループ)

プロメカさんの工具箱を覗いてみるとこういう地味系工具は必ず入っているのですが、サンメカさんの工具箱ではなかなかお見かけしない工具類であります。
まぁパッと思いつくのだと錆びた&折れたボルトナット外しとか、張り付いた部品の分解とかね。
持っていればそういった使い方というか、発想も生まれてくるんですね。

だからこの手の工具に関してあまり上手に説明出来ないのですが、メインのハンドツールあたりが揃ったなーなんて感じたらこういったサブ工具とも言えるたがねとかを検討して欲しいんですね。

でも最初は何買ったらいいのか分からない……って人も多いと思います。
で、そういう人にオススメなのがこれ。

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PB ポンチ&たがねセット

このセットを買えばポンチとたがねの使いたい所が入ってますので、あまり悩む事がなくて良いですね。
(ちょっと高価ですがやはりオススメです)

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セットに入っている内容もかなり良くてピンポンチはもちろん、平たがねやエボシたがねまで入ってます。
よくたがねは1本持っているんだけどあまり使わないなぁ……なんて人は一度PBを買ってみてください。
その切っ先の掛かり具合とか切れ味で驚くと思います。

そしてたがねの中でもさらに地味ながら活躍するのがこれ。

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PB エボシたがね

形が烏帽子に似てるのでエボシたがねと言われてます。
この変なたがね、別名『割りたがね』とかいろいろ呼ばれているのですが、見た目通り切っ先っが大きき開く形状していて分解時とかに便利です。
またタガネ部分の刃幅が狭いのでポンチのように使うことが出来て、固着した部分を叩いたりネジを緩めたりの作業にも活躍します。

さっきも書きましたが、そろそろ系統の違う工具が欲しいなーなんて思っている人はこういう脇役系の工具もぜひ検討してみてくださいませ。

キャッチャーボールHEXを作った工具メーカー

工具とひとことで言ってもいろんなメーカーが各社なりの特色を出して、同じ用途でもちょっとずつ違う工具を発売しております。

個人的には「あのメーカーはあれが強い」とか「あのメーカーはあんなの作らせたらうまい」とかあるのですが、なかなかそういうのってイメージなのでお客さんに伝えるのはちょっと気が引けるんです。
だってあくまでも自分の主観な話だし、そういう突っ込んだ話すると人それぞれちょっとずつ違ったりもするので、無理にイメージつけする必要も無いかな?ってのが本音ですね。
まして一応本業の私がヘタな事言うと変な先入観与えてしまう事もあるわけですからね。

でも確実にそのメーカーが「特色」として打ち出している物なんかもありまして、そういうのはバシバシお伝えするつもりです。

で、今回はそんな特色のひとつ。
国産メーカーアサヒを紹介。

アサヒと言えば知る人ぞ知る超軽量レンチシリーズのこれ。

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ライツール 軽量コンビネーションレンチ各種

ライツールと言う名前はアサヒの中のブランドネームでして「アサヒがこれ作ってたの?」と驚かれる人もいるのですが、OEMとかじゃ無くあくまでも自社ブランドの名前のひとつです。

で、このライツールが有名なのでこういう工具ばかりなのかと言うとそうじゃなくて、工場向けの実用的な工具が基本のラインナップとなっております。

その中でも特にHEXレンチはかなり定評があり、某超有名メーカーのOEM品の製作とかまでしている隠れた優良企業です。
そしてそのアサヒのHEXレンチの特色がキャッチャーボール。

アサヒキャッチャーHEX

アサヒ キャッチャーボールL型HEXレンチ

キャッチャーボールとは……↓

こんな感じでHEXの先端部分にロックボールが埋め込んであって、これでキャップボルトを落とさないで作業出来ます。

実際に付けてみるとこんな感じ。

パチっとハマりますのでちょっとくらいの振動では外れません。
このボール、レンチのロング側に付いてますので奥まった箇所へのアクセスも非常に楽に行えます。

またこの精密な仕上げはアサヒならではでして、かなり細い3ミリのレンチまでこのボールを入れる事が出来るメーカーは世界中でも数社しかなくて、ましてそれをこれだけ安価で提供してくれているのはユーザーとしてはかなり嬉しいと思います。

なかなかフォーカスが当たりにくい地味なメーカーではありますが、ホントに良い仕事するメーカーなんですよ。

現在セール中

アサヒキャッチャーボールHEX

アサヒ キャッチャーボール付 L型HEXレンチセット(7本組)

現在そんなキャッチャーボール付きのHEXセットがお試し特価のセール中です。
この機会にぜひ使ってみてください。

回転数の調整出来るディスクグラインダー

DIYの現場においてちょっとした部品の取り付けや加工で手詰まりになる事ってあるのですが、その中でも筆頭となるのが「穴あけ」と「切断」作業です。

ですのでこのブログでも素人作業であってもドリルとサンダーだけは持っておいて損じゃないですよーと何度か書いてきているのですが、その中でも性能に満足出来るモデルを購入しようと思うとちょっとお高いんですよね。

で、今回はそんな作業の中で「切断」と「研磨」に特化したディスクグラインダーのお話をちょっとだけします。

ボッシュディスクグラインダー

ボッシュ 回転数調整式ディスクグラインダー

プロの現場でももちろん重宝されているディスクグラインダー。
φ100mmの砥石アタッチメントは様々な種類が提供されていて、これを一台持っていればいろんな作業(切断とか研磨とか)が可能です。

SK11ディスクグラインダー

安いものならホームセンターで数千円で購入出来るのもメリットのひとつですよね。

そして当店ではさらにオススメしているのが「回転数調整機能」が付いたモデル。
サンダーって基本的に切断を目的に作られているので速い回転数に固定でセットされているんです。
で、これが研磨作業の時に「早すぎてイマイチ」な結果になる事があるんですね。
(自動車の塗装面研磨のポリッシャーとか半分以下の回転数です)

特に鏡面加工とか錆落としとかの場合だと顕著でして……

オフセットサイザル

オフセットサイザル

例えば鏡面加工のお助け工具として人気のこのオフセットサイザルも出来れば低回転で回してあげたい工具のひとつです。
主な理由は「バフ焼け」と呼ばれる回転系工具の弱点でして、回転による摩擦熱で相手の鉄板が熱くなりすぎて焼け色がついてしまうんです。
この焼け色って結局もう一度研磨しないと落ちないので鏡面研磨作業の場合だとバフ焼けって大敵なんです。

SK11ディスクグラインダー

SK11 6段階変速機構付 ディスクグラインダー

そこで登場するのが変速機能のついたディスクグラインダーってわけでして、この変速機能があればバフ焼けしないくらいの低回転で回してあげて使うことが可能です。

それなら「全部のディスクグラインダーに変速機能付ければいいのに」と思うかもしれませんが、実は回転系の工具って高回転でトルクが出るようなセッティングになっておりますのでモーターの出力はあまり高くないのです。
モーター出力を抑えれば本体価格も抑える事が出来るので低価格帯で販売出来るのですが…
これが変速機能をつけて低回転でも使う仕様にするとモーター出力の高いものを装備する必要が出てしまい安価なモデルではなかなか実現出来ませんでした。

SK11ディスクグラインダー
赤いダイアルみたいなのが変速設定です。

それが近年最初に紹介したボッシュのモデルや次のSK11のモデルのように安価な価格帯でついに出始めました。
(他のメーカーだと4万円を超えるモデルがザラにあります)

ってなわけで「たかがサンダーに回転数調整がついただけ」と思うなかれ、これがあるだけで作業の幅はグググーンっと広がるオススメ工具なわけです。
ぜひご検討くださいませ。

KTCのデジラチェについて

普段からトルクレンチに関する問い合わせって多いのですが、その中でも固有名詞として質問の中に登場する事が多いのが「デジラチェ」です。

名前から連想するに「デジタル」な「トルクレンチ」なわけでして、デジタル式というだけで精度のものすごく高いトルクレンチと思われる事も多いのですが、実際の現場レベルだと現行のプリセット型トルクレンチとそれほど精度的には変わりなく、質問があった場合にもまずはその辺からの説明となる事が多いです。

実際現在販売されているトルクレンチの精度はほぼ±4%以内に収まっております。
このデジラチェもまさにその±4%なわけで、これを見ても「デジタルだから」という事で高精度ではないと分かって頂けると思います。

デジラチェを語る上で欠かせないお話がトルクレンチの種別です。
トルクレンチとはざっくりと種類を分けるとカチンと鳴って設定トルクを知らせてくれる「プリセット型」と、実際にトルクの変動値を目視で確認しながらトルク管理を行う「直読式」に分ける事が出来ます。

東日トルクレンチ
東日プリセット型トルクレンチ

私が工具販売をはじめた30年ほど前はプリセット型トルクレンチってめっちゃ高価だったんですね。
また今ほどトルクレンチの重要性も認知されてませんでした(されてはいたけど高価すぎて現実的じゃなかった)
※でも今ではかなり価格も安くなって気軽に使えるようになりました。

ですのでその当時だとビーム式と呼ばれる弓式がよく売れてましたね。
(針が付いててそれが左右に振れてトルク値を見るヤツです)

で、このビーム式(弓式)と呼ばれるトルクレンチこそ「直読式」なわけです。
現在ビーム式はトルク校正出来ないことを理由にあまり扱われる事がなくなってきており、今はダイアル式が一般的になりました。

東日ダイアル式トルクレンチ

ググっとトルクをかけるとダイアルの中の針が回って現在のトルク値を示すトルクレンチですね。
ちなみにデジラチェとかのデジタル式トルクレンチはこのダイアル式とかの直読式の表示画面をデジタルにしたものだと理解してください。

この直読式。
読んで字のごとく実際に目視で推移するトルク値を確認するのが一般的な使い方です。(置き針してトルク値になると知らせてくれるようにも出来るものもあります)
なので一般の人が気楽に使うトルクレンチとしてはちょっとイマイチ…なんです。

プリセット型トルクレンチなら設定したトルクでカチンって知らせてくれますからね。
似たようなボルトナットを複数箇所カチカチしていくような作業に直読式はあまり合わないんです。

もちろん直読式のメリットもありまして。

それは正逆転どちらも測定可能な事。

これはプリセット型の弱点でもあるのですが、プリセット型は一般的に締め付け方向のみの測定となってます。
(これは精度を保つための条件なんです)
今は逆ネジとか減ったので逆回転での使用ってあまりないように思われがちですが、実験や開発の現場では現在の締め付けトルクを測定する事もあり、逆回転で回して緩むトルク値を測定する事があるので必須のトルクレンチです。
また内燃機とかの精密組み付けが必要な現場では、ボルトの伸び(締結力)を手応えと目視とトルク値で確認しながら作業したりするので、リアルタイムでのトルク変動を知りたいという現場もあります。

…っとまぁここまで読めばプリセットと直読で、かなり方向性の違うトルクレンチなんだという事が分かってもらえたと思います。
それはでは直読式の派生モデルであるデジラチェって使いにくいのか?と言われると半分YESで半分NOです。


KTC デジラチェ

初代のKTCデジラチェはグリップ部分がカタカタと動くモデルで、測定エラーを連発しかなり使いにくいモデルでしたが、現在のデジラチェは2世代目にあたるモデルでして誰が使っても正確にトルクを示してくれるモデルになっております。

KTCデジラチェ説明

また先ほど言った直読式の使いにくさのひとつである「目視確認」が出来ない場所でも事前設定のトルク値で電子音を鳴らして知らせてくれますので、この辺の使いにくさもほぼ解決しております。

ま、それでも直読式には変わりありませんので購入する時にはまず「プリセット型」を買うのか「直読式の最新モデルであるデジタル」にするのかってのを考えてみてください。
気楽な使い勝手はプリセット型がオススメです。
使用頻度はあまり高くなく、いろいろな高機能を使いたいならデジラチェはかなりオススメです。

KTCトルクル
スマホ連携型のデジタル式トルクアダプターも人気です

KTC スマホ連動型デジタルトルクレンチ TORQULE(トルクル)

こんな感じで購入前に理解しておけば自分にあった良いトルクレンチを選ぶ事が出来ると思います。
まぁ参考までに。

乗りたい車に乗ればいい

私が個人的に趣味で続けているオフロードバイク。
ナンバー取得が出来ないレース専用車なのでトランポに乗っけてコースに行っては楽しんでおります。
一時期に比べればガチなレース志向というのはなくなりまして、今では「スポーツライディング」として楽しんでのる方向になってはいますが、それでも走りにいけば割と真面目に練習してますし、そういうのもコミコミで楽しんでおります。

この趣味を始めるにあたって最初に入手したのが中古のKX125でした。
当時確か10万円くらいで譲って頂き、ちょいちょいマイナートラブルこそあれど楽しく乗っていました。
その後お仲間が新車のモトクロッサーを手に入れた事に触発され、私も最新モデルのKX250Fに乗り換え。

これまたあちこちにいって楽しんでおりましたが、転換期となったのが2010年に参加した三宅島エンデューロレース。
東京都が主催した初めての離島でのレースという事もあり、レース内容はそっちのけでとにかく即エントリー。
レースが始まってみれば自然の地形をそのまま生かしたクロスカントリー形式のレースでして、ここで見事に玉砕しました。
(モトクロッサーのままで出たからかなりきつかったんです)

そこでエンデューロ専用のレーサーという存在を知りまして、自然の地形をそのまま走るというエンデューロ競技自体にも興味を持ちました。

そして仲間内でも徐々にエンデューロレーサーに乗り換える人が出てきたあたりで私も買い替え。

KTM350F

モトクロッサーが当時60~70万円で新車が買えましたから、100万円超えのエンデューロレーサー購入にはちょっとビビっていたのですが……
実際に手に入れて乗ってみるとめっちゃ楽しい乗り物でした。

トランポも軽トラからハイエースに乗り換え。
日本全国のイベントやレースに行きまくりましたね。
実際レースにもわりとガチ目に参加していたのもこの頃です。

そこから4年後くらいかな。
両親が倒れてしまい介護の必要が出てバイクを一旦降りました。
それでも安い車両を何か一台だけ持っておこうと数台のバイクを経て

成田MXパークと新外装

今のハスクバーナのエンデューロレーサーに至っております。
これは運良くというか2019年の年末に入手してまして、数ヶ月遅かったらコロナの影響で車両の品薄に巻き込まれていましたから、本当にタイミングが良かったと思います。

っとまぁ、オフロードバイクに乗り始めて10年ちょっと。
この期間に6台のバイクを乗り継いできました。
新車で買ったのが半分の3台。
どれも楽しかったのですが自分に合わなくて半年で放出した車両もありました。

 

工具のお店をやっているといろんなバイクや車を趣味にしている人達とお話する機会があります。
ハチロクやロードスターだけをいじり続けて30年とか、Z2を維持して40年とかそういう人達がたくさんいます。
そしてそういう人達に対してものすごい憧れというか尊敬というか、うまく言えないのですが「かっこいいなー」と思ってしまうんですね。

私は性格的に「浅く広く」な考え方になってしまいがちです。
短い人生で死ぬまでになるべくいろんな事象に触れておきたいと思ってしまうんですね。
振り返ってみると何かをトコトンまで突き詰めた事がないようにも思えて寂しい気持ちになったりします。
さっきの人達みたいにひとつの車種や車両を長年大事に乗り続けている人にかなわないような気になってしまう事があるんです。

 

そんな折に。
私の一番下の子供が「車を買い替えたい」と言ってきました。
2年前にこれを入手した娘です。
>>当時のブログ

ロードスター

手に入れてからはちょこちょこと各部を直したり、車高下げたりしつつ楽しんできましたが、昨年末に相談があると言われ話を聞くと

免許証を取得する頃からずっと憧れてたそうで

「フェアレディZに乗りたい」

と相談されました。
つい先日最新のZが発表されましたが、欲しいのはひとつ前のモデルとなるZ34との事で、ランニングコストや保険料の金額とかを詳しく伝えて最初は「やめておけ」と言ったんです。
(V6の3.7リッターですからね税金や燃費もそりゃ…)

そりゃ社会人になったとはいえ子供にはかわりないですからね、苦労するのが分かっていてそんな大きい車に乗り換えるのは厳しいんじゃないか?と伝えました。
しかし「お金をこれだけ貯めた」とか「Zに乗りたくてMT免許をとった」とか言われると私も悩んじゃったんですよね。
そして最後にこう言われまして。

「ロードスターを紹介してくれてありがとうと思ってる、めっちゃ楽しい車だった。もしかしたらZに買い替えてすぐに後悔するかもしれないけど、やはり一度乗っておきたい」と。

ああ、こいつ俺の子供なんだなーとしみじみ思ってしまったんですわ。
それからはお金の援助とかこそしてませんが、いろんな所に話を回して良さそうな車両を探すのを手伝いました。

そして昨日。

Z34

フェアレディZが無事に届きました。
コロナの影響で相場が爆上がりしてましたが3ヶ月探してやっと納得のいく車両をゲット出来たみたいです。
世の中が脱炭素化していくご時世ではもしかしたら娘が乗ることの出来る最後の内燃機を積んだFRスポーツかもしれません。
そう思うとこのタイミングで買って良かったね、と思いました。

多分ですけど10年以内にこういったスポーツカーって乗るのがとても難しくなると思います。
まだトヨタの86・BRZとかはありますけど選択肢は確実になくなっていきます。
確かに今の自動車やバイクの相場っておかしいなって思いますが、逆にいえばもう価格ではないところでイス取りゲームが始まっているとも感じます。

私もそろそろ残りの人生で乗ることの出来る車両数のカウントダウンが始まっている気がしますからね。
乗りたい車やバイクがあるなら乗っておかないと、思ったお話でした。

※あ、そういえば「工具」だけは飽きずに30年以上付き合ってました。