工具と言えば…
一般的にはパッと思い浮かべるのはハンドツールだと思います。
ラチェットやレンチ、ラジペンとかそんな基本工具と呼ばれるものですね。
当店もそのへんのハンドツールをメインとしたお店ですので、問い合わせの中心もそんな感じなのですが、実際対応していると「あー意外と知らないんだな」と思うような事がいくつかあります。
今回はそんな知ってそうで意外と知らないハンドツール系のお話として題名通りなんですけど、ソケットのショートとかディープの話をしてみたいと思います。
まずあまり知られてなくてびっくりされるのが工具メーカーごとに、ショートソケットとディープソケットの全長設定が違うという事です。
これはちょっと考えてみれば「なるほど」とすぐに分かってもらえる話なのですが、普段はそこまで気にしてないって人の方が多いんじゃないですかね。
例えば現在最も昔ながらの作り方…いや違うな、昔ながらのソケットの全長設定の仕方をしているのがKo-kenです。
なぜKo-kenが昔ながらの全長設定なのかというと…。
もともとKo-kenには上記の画像のように「ショートソケット」と「ディープソケット」がラインナップにありました。
セミディープは後から追加で発売になったのですが、そもそもセミディープって後から出来た設定の工具なんですね。
ですので語弊を恐れずに分かりやすく言うと『ショートとディープの間をとった全長設定』になっております。
ちなみにKo-kenの整備向け特化シリーズのZ-EALはすでにセミディープというカテゴリーがある前提の中で新発売になった工具ですので、初期の設計段階からセミディープをランナップする前提で設計されていたと推測されます。
しかし、結局Ko-kenのスタンダードラインナップに追従するカタチで全長設定が行われている事を考えるとKo-kenというメーカーは「この全長で良し」としたという事なんでしょう。
で。
このKo-kenの設定の仕方とは全く違うアプローチになっているのがKTCです。
こちらがKTCのセミディープソケット。
サイズごとに長さがちょっと違うってのはありますが、それでも他のメーカーよりも「少しだけ全長が長い」のです。
これ実はディープソケットはもっと長くて、他のメーカーと全長を比較するとかなりの差になります。
で、これってどういう事かというとKTCってハンドツールのラインナップを約10年ちょっと前にフルモデルチェンジしたんですね。
10年前といえばすでに「セミディープソケット」という概念があったわけでして、それまでの「ショートとディープの中間」であったセミディープではなく、順番にショート・セミディープ・ディープと設計する事が可能だったわけです。
これによるメリットは各ソケットの使い分けのメリハリ感ですね。
登場当時こそ珍しさから人気は出ましたが、やはりセミディープソケットって使い分けが難しい存在でもありました。
それがキッチリと設定段階から作り分けされているのですからね、作業者としては望ましい工具となったわけです。
ちなみに「KTCがそうならネプロスは?」と考えると思いますが…残念ですがネプロスはKo-kenと同じで後設定のセミディープとなっております。
まぁここまでお話してきましたけど、それではセミディープ設定以前のモデルはダメなのか?って事になるとNOだとも思います。
KTCは確かに各ラインナップの住み分けをハッキリさせてくれました。
だけどハッキリさせたってだけで「その全長加減」がそのユーザーに適したモノなのかどうかはまた別の話でもあります。
先述しましたが最も後発のZ-EALシリーズはディープを少し長めに作った以外はあまり変えてきませんでした。(ショートはある意味超ショートですけどね)
メーカーもこれでOKと判断したんだと思います。
そしてここまで読んでもらって何を分かって欲しいのか。
それは『メーカーによってソケットの全長設定が違いますよ』って事です。
そしてその背景にはいろいろあるんですよってお話。
工具を購入する時になんとなくいつも買ってるメーカーで揃えて…ってのも間違いではありませんが、こんな風に設計の思想がちょっとずつ違う各メーカーのソケット事情があります。
せっかくなのでご自分の作業にあった工具を選んで欲しいと思います。