1/2(12.7sq)工具を揃える必要性

ハンドツールの花形であるラチェットやソケット。
それらの差し込み角とソケットの関係性に関しては「工具実践」のページで少し触れておりますが。
やはり今でも整備向け差し込み角のメインとなるのは3/8(9.5sq)だと思います。

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各差し込み角ごとの対応最大サイズ

しかし3/8があらかた揃い整備スキルが少しだけ上がってくると悩みの種になってくるのがもうちょっと大きなサイズのネジの対応。
例えば車の足回りに出てくる17とか19と22ミリとか、バイクのアクスルシャフトとかね。
この辺になってくると対応サイズの問題もあって3/8だけじゃ対応出来なかったりするんです。
また対応サイズ的には3/8でも問題無いサイズでも人間のパワー的な問題で使い勝手が悪い…とかも出てきてしまいます。
特に悔しいのが17とか19ミリ。

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この辺は3/8でもキッチリ持っている人がほとんどで、普通の17ミリボルトとかなら問題無く3/8で作業出来るのに、足回りとかの少し錆とかカジリとか出ているネジだとパワーが足りなくて回せない場合が多いんですね。
いや正確に言えばかなり頑張れば回せるんだけど「毎回これやるの?」って少し嫌になっちゃいますよね。

で、そんな感じで悩むようになったらそろそろステップアップ。
1/2(12.7sq)の工具を揃える準備に入りましょう。

こんなふうに言うと「え?また揃え直しなの?」とか「予算厳しいんだけど」と言う人がいます。
確かにせっかくバッチリ揃えた3/8と重複するサイズなんて買うのは嫌なのは分かりますが……思い切って購入すると一気に整備事情が向上するんです。

まず、ひとつ言えるのは整備用工具に限って言えば、3/8工具をそこそこ持っていて「買い足し」での1/2工具はそんなにいろんな物を買わなくてOKって事。
実際私がお店でお客さんに対応する時に言う事はこんな感じです。

  • すでに通常整備する分の工具は持っているのだから1/2はピンポイントで買えば良い。
  • トルク不足を感じての購入もあるのだから「小回り」出来る工具はいらない。
  • 「ガキッ!」っと一発緩めば良いのだから、回す工具は別にラチェットじゃなくても良い。
  • それでも気合い入れて揃えたとしてソケットサイズは17・19・21・22・24・27・30・32ミリの中から、その人に合ったサイズの4~5個あれば十分なので意外と金額は掛からない。

大体こんな事を言います。実際お店で私にこんなふうに説明されたって人は数百人はいると思います。

整備用に出てくる少し大きいボルトってのは、上にも書いてある通り17~36ミリくらいです。
もちろん41ミリとか54ミリとか特殊なサイズもありますが、普通にはMAX36ミリくらいで大丈夫なハズです。

KTC1/2ソケット

KTC 1/2ショートソケット単品

で、あとはその人の整備環境ってか車両ですよね。
もっと言えばその人自身がどこまで整備をやるかも関係してきます。
車の整備で使うけどハブまではやらないって人なら17・19・22・24の4個だけを買えばOKだったりもします。上で紹介しているKTCのソケットならば一個で約1000円くらいですから4千円あれば1/2ソケットは揃ってしまうわけです。

そしてそのソケットを回す工具。

KTC1/2ロングラチェット

KTC 1/2ラチェット 各種

1/2工具を使いたい場面って基本的には「大トルクが欲しい」時です。ですので、駆動側の工具にコンパクトさとかあまり必要ありません。とにかく人間が楽して緩める事が出来ればいいわけです。

KTC1/2スピンナーハンドル

KTC 1/2(12.7)スピンナーハンドル 2モデル

ですので上記2工具が良く売れてます。
中でも「……と言いつつもそんなに使用頻度はないんだよね」って人はスピンナーハンドルだけ買っていっている人も多いですね。
実際大きなサイズのボルトになると「カキ」っと緩んでしまえばあとはなんとかなる場合も多いので、ラチェットでカリカリ回す事すら必要性を感じない作業も多いです。

となると、1/2スピンナーハンドルのを買ったとして、ソケットと合わせて1万円以内で間に合ってしまう場合が多いです。
つまり必要なソケットサイズの違いこそあれど予算1万円もあればワンランク上の整備環境が手に入るわけです。

なんとなく3/8の工具を苦労して揃えた人は、もう一度他の差込角で揃え直しって事に敷居の高さを感じている人もいると思いますが、こんな風に考えてみると意外とご自分の整備スキルに合わせた工具購入ってのは敷居が低いんだって事を理解して頂けると嬉しいですね。

薄いプライヤー

関東も梅雨入り宣言きちゃいましてジメジメした日が続いております。
しかし梅雨って事は暑い夏が目の前って事でもありまして。

愛車の整備もそろそろ熱対策を意識し始める時期ですよね。
エンジンオイルだってすこーしだけ硬いのにしてみたり、それこそエアコンが今年もちゃんと動くか確認しておくのも重要です。

で、そんな中でこの時期に問い合わせが増えるのがラジエターのフィン修正工具。
代表的なのだとこれ。

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KEIBA ラジエターフィン修正プライヤー

それこそラジエターフィンの修正専用に作られた工具ですので、先端の薄さとか曲げ加減とか使い勝手よくつくられてますね。
でもでも、実はその他にもお店で売れている「薄いプライヤー」ってあるんですよ。

それがこれ。

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KNIPEX アジャスティングプライヤー

これはフィン修正専用のプライヤーってわけではないのですが、やはり先端部分はフィンをつまめるようにうすく平らになってまして十分にソレ目的で使う事が出来ます。

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また曲がりの角度も他社にはない縦方向のベントノーズがあり、狭い箇所で結構活躍するんです。

もともとは精密部品用のプライヤーですのでリレーとかの隙間なく押しこんであるようなモノの抜き取りにも便利でして「ピンセットでは力不足だけど……」なんて箇所で活躍するオススメプライヤーのひとつです。

意外にもこんな感じのプライヤーっていうか掴みモノ工具が欲しかったなんて人は多くてお店でも人気の1本です。
ぜひ頭の片隅に覚えておいてくださいませ。

暑くなる季節に向けて

なんだか最近夏場の暑さや突然のスコール、そして昨年大きな被害を出した大型台風とか昔とはなんだか違うな…なんて事が増えてきましたよね。

自宅で使っている15年落ちのエアコンも昨年の暑さでバグってしまい故障したのですが、なんでも今と昔では耐外気温の設定自体が違うらしく、確かに言われてみれば昔は40度超えなんてあまりなかったもんなーって妙に納得してしまいました。
(結局リビングと寝室の2台も買い換えるはめに…)

で、これからまだまだ暑くなるわけで工具の業界も暑さ対策の機器をいろいろ出しております。

そんな中で近年再注目されているのが空気を循環させるサーキュレーター。

CAT35センチフィン

CAT サーキュレーター(密閉式モーター採用モデル)

いわゆる「扇風機」とはちょっとだけ違いまして人間に当てて冷やす道具というよりは、直進性が高く遠くまで風を送る事が出来る室内の空気循環用送風機なわけです。

サーキュレーター

これの下の図でも分かる通り空調を効かせた部屋の中の空気を動かす事によって効率的に部屋の温度を調整出来るようになります。
また内蔵しているモーターが密閉型のDCモーターという高級機でして、送風音は仕方ないとしてもとにかく静か、そして廉価版の機器では難しいとされている超微風も送る事が出来ます。

これからの季節ではあるとないとではかなりの差が出ると思いますので、まだ未導入の方はぜひ検討してみてください。
エアコンが聞いている室内でものすごい威力を発揮(同じ温度でも体感で2~3°下がる感じです)しますが、エアコンのないガレージとかでも空気が動いてくれるので涼しく感じます。

あ、ちなみに。

CAT フロア型工場扇35cmフィン(密閉式モーター採用モデル)

「室内の空気循環ではなくやっぱり人間に風を当てたい」って人には普通の工場扇もラインナップされております。
35cmフィン採用でかなりコンパクトなモデルですので置型ではありますが、場所を選ばず使えて便利です。
さらにこのモデルもサーキュレーターと同じ密閉型DCモーター採用機ですので、とにかく静かで微風もOKな上位モデルです。

CAT35センチフィン

知っている人は知ってると思いますが、こういう「夏場用の機器」ってのは今の時期に売って暑さが本格的になる真夏には売り切れになる事がとても多いです。

いまなら即納で在庫ありますので購入を検討している人は今のうちのどうぞ。

終わったり始まったり

新型コロナによる緊急事態宣言のちょっと前や少し小康状態になった頃に、週に一回いくいわゆる行きつけの個人でやっている居酒屋さんってのがありまして。
こんなご時世で潰れてほしくないという思いからランチに行ったり、夜はわざわざテイクアウトを買いにいってあげたりしてました。
別に聖人ぶるわけでもなんでもなく単純に「自分の居場所を守りたい」という気持ちだけの行為です。

で、その居酒屋さんで都内の大手出版社にお勤めの方とよく一緒になりまして、いろんなお話をしたのですが。
興味深かったのが「出版業界は数年ぶりの大盛況」だというお話。

個人的には「え?紙媒体さんってコロナ関係無しに厳しいのでは?」と思っていたのでちょっとビックリしたのですが──

種明かしはと言うと、現在は書籍のデジタル化が大きく進み小説や漫画が過去にないくらい売れているとの事でした。
そう言われてみれば自分でも結構気楽に小説とかをポチっとしているので、昔みたいに本屋さんに行ってジャケ買いみたいな事こそ減りましたが、気になるタイトルとかは逆にホイホイと買っているかもしれません。

こういう事を書くと「いや本ってのは紙こそ至高」とか言い出す人がいるのですが、そりゃ私だって高校生の頃から本ばかり買ってきた人間ですので言いたい事は分かりますけど……

個人的には紙の本にそこまで思い入れはないんですよね。
お店の裏の倉庫に高く積まれた数千冊の紙の本を断捨離したのが確か3年前かな。
古本で売ったりしないで全部捨てました。
それくらい紙の本を書い続けてきた私でも今や本はデジタル依存しているわけです。

スマホやタブレットに収まっている数百冊の本があれば、いつでもどこでも読むことが出来ますからね。
自然と紙の本を読み返す事が少なくなってました。(もともとそんなに読み返したりしなかったけど)

で2ヶ月前。
自分でコラムを執筆させてもらっていたrider誌のコラムを無理言って辞めさせて頂きました。
自分でも読まなくなった紙の本にコラムを書いている事がなんかおかしく感じてしまったんです。

そしたらなんと。
コラムを辞めた次号で雑誌自体が休刊に…。

rider最終号

かなり急に決まった休刊だったらしく執筆陣にも連絡がなかったようで、編集長の挨拶以外は最終号的な花道な感じは全くありませんでした。
まぁ確かに昨年秋頃から昔の記事を焼き直ししたりもしてて、当店で定期購入してくれてたお客さんも離れ始めていましたから仕方ないのかもしれません。

で、これが皮肉にも最終号だけあちこちで売り切れが続出。
各SNSでも「残念だ」とか「もっと続けてくれ」とかそんな書き込みで埋まりました。

いやーもうお約束の騒ぎですよね。
人気だったお店や雑誌がなくなる、そりゃみんなが買わなければ無くなるんですよ。
いや別に買ってない人を責めるとかそんな気持ちは毛頭ありません。
けど「残念だー、いつか行って(買って)みたいと思ってたのに」という意見はどうしても冷めた目でみてしまいます。

今新型コロナで世の中の経済の仕組みが少しだけ変わったと販売の先頭に立っていて感じます。
従来なら許されていたニッチなものが終わってしまったり、従来ならまるで相手にされなかったニッチなものが始まったりしている気がします。

実際出版業界は大盛況らしいですが毎年老舗の雑誌が休刊になっているのも事実です。

当店も工具業界の中ではかなり端っこの方でやらせてもらっている「街の小さな工具店」です。
今の自分のやり方が正解なのかどうかは分かりませんが、いつか時代に追い越されて、知らない間に不正解ルートを進んでしまうかもしれません。
それでもその時が来るまでは精一杯自分のやりたい工具のお店を続けたいと思いますので今後も応援よろしくお願いします。

1/4工具を揃える時に

今でもハンドツールの主役であるラチェット系工具では、3/8(9.5sq)差し込みはメインの差し込み角ではありますが。
工具の専門店をやっていると相談というか問い合わせの数だったら1/4(6.35sq)差し込みの工具も負けてない感じです。

それだけ多くの人の関心が高いのだと思いますし、あとはメインの3/8を揃えた後に気になり始める事の多い1/4ではいわゆる全くの初心者って人は少なくて、ある程度の情報を持って悩む事になるので相談になりやすいのかなー?とも推測します。

で、基本的には「工具は自分の好きなの、気に入ったの買えばOKOK」論者な私なんですが。
1/4の工具に関してはちょっとだけ注意しながら相談にのることが多いのでその辺の事を書いてみますね。

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1/4工具を初めて購入する時の最大の注意点というと

1/4工具は精密工具

と言う事です。

3/8や1/2のような大きめの工具の場合、ぶっちゃけ少しくらいテキトーなモノを購入しても「全く使えない」という事はありません。
しかし1/4くらい小さい工具になるといわゆる「精度」とかが如実にでてしまい、あまりにもテキトーなモノを最初に購入してしまうと「ああ、1/4ってあまり使えない工具なんだな」と思ってしまう人が結構いるんです。

ちゃんとしたメーカーのちゃんとしたラインナップで揃えて貰えばこれほど便利に使える工具はないのですが、最初に購入したのが格安のイマイチなシブイチだと「1/4工具全体がダメ」と思っちゃうんですね。
これは寂しい。

なので1/4工具の相談を受けた時は少しだけ慎重に「3/8工具と同じ感覚で購入しないでください」とアドバイスするようにしています。

ちなみに1/4工具でテキトーなモノを購入してしまうのにも理由がありまして。

3/8工具をキッチリ買い揃えてきた人にとって、未知の1/4工具にいきなりコストを掛けて揃え直すのがちとハードルが高い(お財布が厳しい)んですね。
ですので「とりあえずお試しで……」みたいな感じで使用感を確かめようとして格安のセット等を購入して失敗ってパターンが多いんだと思います。(気持ちは分かります)

なのでお店に来たことがある人なら分かると思いますが、その手の相談を受けると基本的に私は「バラで揃えたらどうですか?」とおすすめしております。
さっきの精密な工具の話でわかると思いますが、とりあえずラチェットだけでもマトモなモノを購入しておけばなんとかなったりもします。
予算的に厳しいならラチェットだけ一点豪華にしておいてエクステンションやソケットはとりあえず間に合わせと考えてもらってもOKです。(あまりオススメはしませんが)

それでも1/4工具をひとつも持ってない人にはセットはかなり魅力的に見えると思いますので今日はざっくりと当店取扱の1/4セットを高い順に紹介してみます。

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nepros 1/4ラチェット&ソケットセット[22点組]

今当店で購入出来る1/4工具セットではぶっちぎりにオススメであり高価なのがこのネプロスの最新90ギアラチェット入りセットです。
ラチェットがとにかく良いのはもちろんソケットや備品系も隙がなく、とにかく予算があるならこれを買っておけば間違いないというセットです。
食わず嫌いで「ネプロス自体あまり好きじゃない」なんて人もいると思いますが1/4ラインナップは別格の造りで本当に良いです。

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Z-EAL 1/4ラチェット&ソケットセット[17点組]メタルケース

そしてこのZ-EALもオススメ。
価格と性能・精度のバランスが最もとれたセットだと思います。
予算が許すなら上のネプロスがやはり素晴らしいのですが、限られた予算の中でちゃんとしたモノをキッチリ揃えたいというならば迷うことなくこれをオススメします。

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Ko-ken 1/4ラチェットソケットセット18pc

こちらはKo-kenのスタンダードバージョン。上記のZ-EALよりは少し野暮ったい感じですが基本を抑えたセットとなります。
ただしこのセットで良いのならばバラで気に入ったメーカーを単品購入していくほうが良かったりもしますのでその辺は相談してくれればいくらでもその人にあった工具やメーカーを紹介出来ると思います。

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SIGNET 1/4ラチェット&ソケットセット38pc

こちらのセットくらいリーズナブルになると上で話した「安いセットを買って失敗」な事例になりそうですが、逆にこれをササっと購入して気に入らないモノを買い直していくという手もあります。
実は個人的には出先用にこのセットをラチェットだけ変えて使っておりまして、コスパに優れたそこそこ使えるセットとしてはかなり優秀なセットだとも思っております。

Z-EAL1/4ラチェットセット

Z-EAL 1/4ラチェットソケットエントリーセット

いわゆる「フルセット」ではありませんがこちらもオススメ。
Ko-kenがエントリーセットとして販売しているZ-EALのラチェットと使用頻度の高いソケットのみのセットです。
かなり良いセットで店舗でもかなり評判がいいですね。
このセットに少しだけ足してあげれば自分仕様の1/4工具セットが出来上がると思います。

こんな感じで1/4のラチェット&ソケットセットはピンキリあります。
あとはその人の使用条件等でちょっと変わると思いますので、この辺で悩んだら遠慮無くご相談くださいませ。