工具箱内の整理整頓に

ネットを回遊していると工具関係でよく見かけるズラッと並んだカッコいい工具の数々。
いわゆる整備上級者さんほど工具の並びには理由があって、各自が使いやすいように整理されております。

そういった工具の整理整頓には絶対的な「正解」というのはなくて、とにもかくにもその人が使いやすければOKだし、また一発で綺麗に並ぶかといえばそんな事なくて今でこそ綺麗に並んでいる工具達だって紆余曲折があっての結果だし、もっと言えば他の人から綺麗に並んでいると思われるような工具もその人にとっては「まだ改善の余地あり」だったりもします。

ってなわけで今回はそんな工具の整理整頓なお話。
ぶっちゃけ工具にまつわる物を無理に使う必要はなくて、百均に売っているような仕分けトレーだっていいし、台所用の鍋掛けとかだって工夫次第で立派な工具置きになったりもします。

SK11ステントレー

SK11 浅型ステンレスパーツトレイ

※こんなトレー類も便利です。

それでもまぁ工具作っているメーカーが工具の為の工具置きを作ってくれたりしますので今回はその辺を紹介。

PBホルダー

PB ドライバーホルダー

もはや定番品ともなったクリップ式のドライバーホルダー。
壁に取り付けてドライバーやプライヤー差しに使ってもいいし、ロールキャブに平置きして転がり防止に使ってもOK。
PBのは少し高いけどコイルスプリング内蔵で造りがかなり良いのでおすすめです。

SK11レンチホルダー

SK11 レンチレールラック(2本組)

こちらも私が工具に関わった30年前からある定番品。
のこぎり状の樹脂ラックの2本組でして、各自は独立しており自分に好きな長さ、そして好きな間隔に設置して使えるスグレモノ。
別に2本使って画像のように置く必要もなく、1本だけ使ってレンチやドライバーが転がらないようにするだけでもかなり効果的です。

SIGNETツールクッション

SIGNET カスタムツールクッション(ソフトスポンジ)

SIGNETクッション

SIGNET カスタムツールクッション(ハードウレタン)

ある意味究極の整理整頓になる自分でカスタム出来るツールクッションです。
賽の目状に切れ目が入っている2層のスポンジを自分の工具に合わせて抜いていくだけなので、誰でも画像のような収納が可能になります。
しかし工具を詰めて置くのが難しいので全部これでって事ではなく、要所で使う感じになると思います。

そんなわけで整理整頓と言ってもいろいろやり方はありますので、各自工夫して試してみてくださいませ。

分解して収納出来るT型レンチ

工具の中でも古典的でシンプルなT型レンチ。
その使い勝手で今でもバイクユーザーには大人気の工具です。

ネプロスTレンチ

nepros T型レンチ

こういうシンプルな工具というのは現場ではとにかく使いやすく慣れてしまうとラチェットの使用頻度が落ちるくらい便利です。


でもでも。
この工具ってその形状がゆえにとにかく収納で困るんですよね、まぁかさばる。
特に出先に持っていくような場合だとTレンチを数本持つだけでかなりの場所をとります。
そこで今回は持ち出し用工具としても使いやすい「分解収納出来るT型レンチ」を一気に紹介。

Ko-ken3/8Tレンチ

Ko-ken 3/8T型スライディングスピンハンドル

これの前にもいくつかはありましたが「分解収納出来る」というメリットを大きく打ち出してきた元祖がこのKo-kenの3/8T型レンチです。
造りはさすがのKo-kenで質実剛健な感じ。

アサヒT型HEX

アサヒ 早回しT型HEXレンチ(分解収納式)

そしてこちらはアサヒのT型ですが「HEX仕様」となっております。
最初でも書きましたがTレンチってオープンスペースのあるバイクユーザーに人気の工具ですのでHEXの需要も高いんですね。
また画像のように1本形態にして収納出来ますので持ち出し用として使いにはかなりいいですね。
※個人的にもお気に入りでガレージ使用しております。
これの必要サイズだけ携行しておくってのもアリだと思います。

SK11T型

SK11 T型スライドソケットハンドル(1/4・3/8)

最後はSK11のT型レンチ。
造りとしては最もシンプルで価格も安く一番人気となっております。
そして実はこれには1/4差し込みモデルもあるので8mmとか10mmならこれの1/4モデルが超おすすめです。

こんな感じで今では分解収納出来るT型レンチもいろいろあります。
気になったTレンチがありましたらぜひ試してみてください。

サイズの確認と推奨工具

工具を販売する仕事をしているととにかくサイズの確認が重要になってきます。

プロメカさんならあまり問題にならないのですが、DIYを楽しむようなユーザーさんに多いのが「多分これくらいの大きさのボルトだったと思うのですが……」なんて感じで話をはじめる人が結構います。

私が分かる車種とかやった事・見た事ある作業ならば分かったりする場合もあるのですが、もちろんそんなのたかが知れているわけでして大抵は正確なサイズなんて覚えていません。
だけどそんなアバウトな話の上でこちらに推測してくれってな相談が本当に多いんです。

例えばバイクのリアアクスル。
「カワサキに乗っててリアがHEXだったんですよ」と言われます。
多分これくらいの大きさだと思う、とお客さんは17ミリのHEXソケットをレジまで持って来てくれます。
でも私の薄い記憶の中には確か14ミリじゃなかったかな?と。

で「14ミリじゃ無いっすか?」と聞き14ミリHEXの現物を見せる。

でも「いや、そんなに小さくないです」と言われ17ミリを販売する……
で、当日中に電話が来て「やっぱり14ミリでした」と。

これ別にそのお客さんを非難しているわけじゃないんです。
ぶっちゃけ店舗だとかなり良くある話です。
特にキャップボルトと言われる差し込んで使う工具のサイズ選定は人間が錯覚(錯視)しがちでしてHEXやTORXでは本当に良くある話なんです。

ウチは上記の話くらいなら交換に応じますが、これがかなり後日になると交換自体難しくなりますし、遠方の方なら交換に来るのも大変だと思います。

ですので私は日頃から「車両整備の現場でもサイズを測定する工具が必要」と繰り返して言っております。
どうしてもラチェットやレンチ等と違い、作業に直接関わらない工具なので、優先度が下がるのはわかるのですが、逆にいえば作業に慣れていない人ほどサイズをキチンと人に伝える事が出来るように準備しちゃったほうが良いと思うわけです。

ノギス総合ページ

ノギス等の測定関連はこちら

これが上の例の話くらいのサイズ違いならばそんなに間違いはないのかも知れませんが、1ミリの違いでも使用出来ないのが工具です。
その辺をキッチリ測定してくれるだけで話がかなり早く済みます。

ちなみにそういったノギスとかの使い方は下記のページを見て下さいませ。

>>工具実践→測定機器の使用方法

サイズ計測の基本中の基本であるノギスはいろんな測定方法で物を計れますので、そういった工具の選定だけじゃなく作業にも活用出来ると思います。

例えばこういった内径測定とか普通の物差しではうまく測定出来ないですよね。
こんな場合でもノギスがあれば大まかなサイズ測定が可能になるわけです。

整備に慣れてない人ほど購入率が低い測定系の工具ですが、実はそういう人にこそ持っていて欲しい工具のひとつでもあります。

インチサイズへの対応

ここ数年、またインチ関係の問い合わせが来るようになってます。
ってか、もうちょっとちゃんと言うと「サイズがなんだか分からないボルトが出てきたので調べて」っていうのが正解かな。

最近は世界的に徐々にですがインチサイズの使用率って減少しているのですが、工場とかでは輸入の機器が台頭してきたせいかウチみたいな専門店への問い合わせ件数自体は増えているんだと思います。
まぁ普段ミリサイズしかさわらない人が急にインチとか出てくると確かに混乱しますよね

で、そんな時はとにかく慌てずにボルト・ナットのサイズを一度測ってみましょう。

極小サイズ(2ミリ以下とかね)を除いて通常の大きさのボルト・ナットで「○○.○mm」とか出てきたらほぼインチだと思って頂いてOKです。(12.7mmとかね)
よく誤解されるのですが、例えば15ミリとかはインチではなく「15ミリ」と言うミリサイズです。

で、とにかくインチかな?と思ったらボルト・ナットのサイズをノギス等で出来るだけ正確に測定してみてください。
その計測したサイズをそのまま当店に伝えてもらってもいいですし、お近くの工具店で探すときはインチに換算すれば購入しやすいと思います。

インチへの換算は簡単。
とにかく。

1インチ = 25.4mm

とおぼえておけばOK。
そしてインチサイズは3/8とか7/16とか、基本的に分母が8か16になりますのでそれを目安に換算します。(1/2とか1/4もあるけどね)
※まれに分母が32の場合もあるので注意。

例えば実測サイズが22.3ミリくらいだった場合。
25.4を8で割ってみると3.17ミリ。
で、22.3を3.17で割るとおよそ7ですから、7/8のインチだと言う事が分かります。
(実際は7/8は22.22ミリ)
測定誤差を考えればほぼ間違いなく7/8インチですね。

>>こちらのページでもミリ・インチの事を書いてます。

まぁ今どきインチネジに遭遇する確率は低いのですが、その分遭遇した時に分けわからなくなるのでこれくらいは頭の隅に覚えておいて損じゃないと思います。

Ko-ken_sok_all1

Ko-ken 3/8ソケットインチサイズ

実際に工業向けに使用されているネジには代表的なサイズがありますので、それも分かっておけばさらに分かりやすいですね。上のKo-kenのソケットではずらっとインチソケットも表記してますので雰囲気だけでも掴んでおいてください。

そしてインチだけじゃなく急に変なサイズのネジに対応出来る工具も持っていると捗ります。

KNIPEXプライヤーレンチ

KNIPEX プライヤーレンチ(新型ブラック仕様)

普通のモンキーでも対応出来たりしますが、やはりKNIPEXのプライヤーレンチは掴んで回せる分別格ですね。

基本的に国産の車両にはインチネジは出てこないと思ってOKです。
輸入車もまず無いのですがひょっこり出てきたりする事がありますので、なんとなく出てきそうな雰囲気あるなら事前に調べておくことをオススメします。

そして各部のサイズをちゃんと測定出来る工具も揃えておきましょう。

ネプロスのneXTシリーズラチェット

新発売された直後に初回限定とかを打ち出していきなり超品薄になってしまったネプロスのneXTシリーズの新型ラチェット「NBR390X」

ネプロスneXT3/8ラチェット

出るのは知っていたので3ヶ月以上前からバックオーダーに入れておいたおかげで初回入荷分も含め結構な数が当店に入荷しておりましたが、店舗での予約分で全て埋まってしまいなかなかフリー在庫になることがありませんでした。

しかしやっと落ち着いてきたようで現在フリー在庫もボチボチ確保出来るようになりましたのでこのラチェットの雑感でも書いてみようかと思います。

まずこのラチェット。
出自というかスタートがわりとユニークな感じでして、そもそもネプロスとしては10年に一度のビッグマイナーチェンジを行ったばかりだったラチェットのはずが、アナザーストーリー的にパラレル開発されていたものが登場したってのがかなりワケアリなわけです。

ネプロスneXT3/8ラチェット

nepros neXT 3/8ラチェットハンドル

分かりやすくいうと

─ 工具としてのラチェットという概念を一度リセットして工業製品としてのハンドルをイチから設計してみよう ─

ってな感じですかね。(違うかな)
なのでこのラチェットはneprosでありながら全く違うシリーズのneXTの新ラチェットといった方が正解な気がします。

まぁ最終的には民生用の「商品」ですので無限にコストを掛けるわけにもいかないし、みんなが思い描くラチェットから大きく逸脱してしまってもいけないわけです、はい。
なのでもともとあったギアの仕掛けとか工具としての長い歴史からくる全長とか、そんな縛りはあったのだと思います。(矛盾しますけどね)

実際アプローチとしてもカタログやWebサイトにも表記されてますが
(KTCWebから引用)

●トポロジー最適化

設計者の経験に頼らずに、力学的・数学的根拠に基づいて、
構造物の最適な形態・形状を自動的に求め、
剛性を落とさずに軽量化が可能な構造最適化手法のひとつ。
今後、製品の開発においてトポロジー最適化の考え方は、ますます広がっていくと考えられます。
京都大学大学院工学研究科 西脇 眞二教授

とこんな京大のセンセイが難しいテーマを掲げてのチームで作り上げた新ラチェットなわけです。

とまぁ、ここまでが前置き。
ぶっちゃけ「実際に使ってみてどうなのよ?」ってのが私の唯一の興味であって、絵に描いた餅な商品はノーサンキューなわけです、はい。

最初に書きましたがこのラチェットが発売されてから結構な本数を売りましてすでに半年くらいが経過しております。
そしてこのラチェットを購入してくれたユーザーさんはかなりの確立で「現場でガシガシ使って」くれております。

ネプロスneXT3/8ラチェット

まずギアを含めたヘッド周りも評価。
ネプロスの1世代前のギアに近い軽快さがあり、また「面取り」のおかげかかなりヘッド自体がかなりコンパクトに感じます。
実寸だけだと現行ネプロスとあまり差異はないのですが、すごく小さくそして薄く感じるんですよね。
あえて苦言をいうとケースを閉じているネジ、ここをプラスじゃないのにしてくれたら最高でした。どうしても分解時に破損する恐れがありますからね。
とにかく使い勝手はかなりよくて100点中なら95点くらいのハイスコアです。

ネプロスneXT3/8ラチェット

そしてトポロジーな項目のひとつである軽量化。
これもかなりうまく作られているなと思いますし、実際現場で使っているユーザーさんからも見た目以上の使い勝手と軽さを感じると評価を頂いております。
あとパッと見では「なんだか手が痛そう」とか思うのですが、この辺も絶妙に作られているのかなんだかタッチも含め良いんですよね。
細かな仕様とか数値とかは他でも触れられると思いますのでかなり主観的になりますが現場での使い勝手は「総じて良い」と言い切れます。

もうちょっと雑感めいたことをコメントすると。
工具を仕事で使うプロメカさんなら分かると思いますが、いわゆるスタンダードなラチェットって実はあまり出番がなかったりしませんか?
ショートだったりロングだったり、また首振りだったりスイベルヘッドだったり──現場に合わせて工具を揃えていくと、スタンダード過ぎるラチェットって出番が減っていく傾向があります。
そんな作業に応じた工具を使うことに慣れてしまっているメカさんもこのラチェットは手元において使う機会が多かったと言ってくれております。
使うほどに手に馴染むといったメカさんもいましたね。

ってなわけで奇抜なデザインとかそういう面が取り上げられがちな本ラチェットですが、実は道具としてかなり優秀な出来になっています。
店舗でもやっと触ってもらえる実機が用意出来ましたのでぜひ一度お試しくださいませ。