パーツクリーナーではない洗浄剤

整備をやっているとなくてはならないケミカル類っていくつかあります。
代表的なのは防錆潤滑剤とパーツクリーナーですかね。

整備の状況に応じてどちらが重要になるのかは違いますが、上記2種類のケミカルは大抵みなさんも持っていると思います。

で、今回はそんな整備ケミカル代表格であるパーツクリーナーに関するお話。

ヴィプロスパーツクリーナー

ビプロス 遅乾性チェーン&パーツクリーナー840ml

当店取り扱いのパークリの中でも最も高性能で洗浄力の高いのがこのヴィプロスのチェーン&パーツクリーナー。
パークリって価格差が激しいのですがやはりお高いのはかなり効きまして、近年は安価なパークリを使って落ちない汚れと格闘するくらいなら、ちゃんと洗浄出来る高価なパークリに──という回帰が起こっております。
実際840mlと一般的にいうジャンボ缶ですが、中身がぎっしり詰まっているので新品を手に持った瞬間から違いが分かるくらいにはオススメのパークリです。
(同じ見た目のサイズでも重さが倍くらい違います、まじで)

で。
パーツクリーナーっていわゆる「石油系」なんですね。
チョー簡単に説明すると「油分を揮発性の油で流している」感じです。
(正確には違いますが)

まぁ「油は油で落とすのが正道」と言われてますので何も間違ってないし実際よく落ちてくれて便利なのですが…
このパークリで落とせないものがいくつか存在します。

そのひとつが整備だと結構重要になってくる燃料系の汚れ。
ん?燃料系っていわゆる石油系なんじゃないの?と思うかもしれませんが、ガソリン等の燃料の固着汚れは石油系では溶かす事が出来ないんですね。
よくキャブのOHや洗浄時にパークリが効かないあの現象です。
それに絡んでやはり燃料系の汚れがあると落ちにくい(落ちない)わけです。
他にはブレーキダストが固着したやつとか、カルキを主成分とするボディの水垢汚れなんかもパークリではうまく落とせません。

ここで裏技的なお話をするとキャブクリではなくエンジンコンディショナーみたいなケミカルがこの手には効きます。
パークリでは溶かせない成分を溶かすことが出来るわけです。
でもこの裏技にもデメリットがあってこの手のケミカルは攻撃性が強いのです。
塗装面はもちろんゴムシールとかにも悪影響を与える可能性があるので使用時には注意が必要です。

そこで近年登場したこのケミカルがプロメカさんの間でも注目されております。

ヴィプロスソルブ

ヴィプロス ソルブ(THE SOLVE)強力水性洗浄剤

それがこのアルカリ性の強力洗浄剤である「ソルブ」
使い方はシュッシュっと吹きかけてパークリみたいに使ってもらえばOK
成分とか細かな話はありますがパークリの万能型上位互換くらいな認識でも大丈夫です。

ヴィプロスソルブ

一応ちゃんとしたメーカーの解説もここに載せておきます。
この表をみるとさっきまで私がアレコレ書いていた意味がなんとなくわかるんじゃないでしょうか。

ヴィプロスソルブ

例えば内燃機のスラッジ除去とか。(矢印が逆なのは御愛嬌)

ヴィプロスソルブ

先述したひどい水垢の除去とかにも使えます。

そしてこのソルブの取り扱いをかなり楽にしてくれているのが「水性」という点です。
洗浄やお掃除が終わったら水でササっと流すだけ。(パークリ洗浄でもOK)
基本的にはアルカリ性なので金属への攻撃性は少しあるのですが、作業後に水でバシャバシャっと洗えばいいので表内でも攻撃性☆4となっております。
(逆にいうと長期の漬け置き等はやばいのでNG)

パークリの上位互換といっても全てパークリに置き換える必要はなくコストとかも考えつつ、石油系とアルカリのこの2つのケミカルを使い分けてもらえばいいと思います。

ヴィプロスソルブ

このソルブ。
すごく高性能なのですがなかなか説明が難しいので店舗では売れているのですが、遠方の方にはいまいち分かってもらえないんですよね。
そんなにお高いものでもないので何かのついでにぜひお試しくださいませ。

オートサービスショー2025

久しぶりに東京ビッグサイトで開催された車両整備向け工具展示会『オートサービスショー』に行ってきました。
実は前回行ったのが8年前…
(ネプロスが90ギアになったりZ-EALのラインナップが広がった頃)
なかなか一人親方の店主はイベントあっても行けないんですよね。
それでも今回行った理由はいくつかありまして。

まずは店休日だった事。
月に一回の木曜日休みとばっちり重なりまして「あ、こりゃ行けるぞ」と。
あとは最近楽しくなってきたYouTubeのネタ探しにもいけるよなーとかね。

そして最大の動機でもあり目玉工具を撮影したかったってのもありまして─

オートサービスショー2025

機材一式担いでビックサイトまで行ってきましたよ。

まずはザザザっと場内を見回り。
んー……輸入工具メーカーいないけど?
まぁ事前に分かってはいたのですが近年は工具イベントが多くなり、輸入工具のメーカーは分散傾向なんですよね。
でも個人的には工具展示会での本丸であるこの展示会に出てこないのはさみしいなーと思っちゃいました。
昔はスナップオンとかまで出てたのにね。

で、いろいろ見て回ったのですが動画のカメラを回しながらだと限界ありますね。
1件に時間掛け気味になるので全ブースを詳しくって感じにはいかなかったです。

それでも

オートサービスショー2025

Ko-kenのブースに行って参考出品見せてもらったり。
久しぶりに首脳陣にもあった深い工具の話したりして楽しかったすね。
今後の動画への協力もしてくれるみたいだし、いろいろ期待したいと思います。

オートサービスショー2025

そしてお目当てのKTCの新製品。
コードレスラチェット(電動)を確認。
実は初見ではないのですがこの展示会発表の日からはオープンにしていいと言われてたので、速攻撮影しました。
あ、あとネプロスの30周年記念限定品の展示もあったので撮影しておきました。(これは後日紹介します)

昼飯も食わずに朝からずっと歩き回って14時頃には撤収。
そうそう入れ替わりでファクトリーギアさんの社長とかも撮影で来てました。
久しぶりに会ったので挨拶だけしておきましたが覚えてくれてて嬉しかったです。

結局同行してくれた工場長には昼飯すら食べさせてあげられなかったので、羽生まで戻ってからカミさんが働いている蕎麦屋で遅い昼飯(16時)

オートサービスショー2025

ネギ大好き星人の工場長も喜んでくれて良かったす。

そんなわけでその日のうちに撮りたて動画をアップしました。
店舗でのみ予約注文を受けますので欲しい人は今のうちにぜひどうぞ。

KNIPEXコブラの新型解説

プライヤーメーカーのKNIPEXから久々に人気ラインナップの追加新商品が登場しました。

KNIPEXエクストラスリム180

KNIPEX エクストラスリム コブラ180サイズ

今年のはじめ頃に発注だけ済ませてあったのですが確か納期はお盆の頃だったような気が…
それがいきなり6月に入荷したもんだから「緊急入荷」扱いになりましたw

またこのエクストラスリムのコブラ。
もともとは250サイズでは結構前に出ていたのであくまでも「サイズラインナップの拡充」くらいな印象だったんですね。
ところがいざ入荷した商品をジロジロと見てみると…「ん?」ってとこが多数。

KNIPEXエクストラスリム180

まず気になったのが下アゴの横ピン溝。
これって歴代のシリーズにはなかった歯の形状だったので、ここで慌てて資料を再確認。

KNIPEXエクストラスリム180

そしたら発注時点では明かされてなかった歯の形状説明もあって。
あれ?これは?

KNIPEXエクストラスリム180

と思い、上アゴを見たらコレですよ。
縦溝追加。

ここで考えます。
前回大型新商品で人気となったツイングリップ。

KNIPEXツイングリップ

KNIPEX ツイングリップ 新サイズ(150・250)

これはいわゆる上位版ネジザウルスとしてユーザーの支持を得たプライヤーとなりました。
「あぁ、ツイングリップが人気だったからなのかな?」
と思いながらもう一度よくよくコブラを見てみると。

KNIPEXエクストラスリム180

ちょっと形状違うというか、意図するところが違う感じなんですよね。
もちろん縦溝なのでネジザウルス的な使い方も出来るとは思いますが、もうちょっと他の作業に向けた縦溝に思えます(あくまでも個人的主観)

気になってネジザウルスのスタンダードとロングノーズを比べるとこんな感じ。

KNIPEXエクストラスリム180
・左からネジザウルスSTD・ロングノーズ・KNIPEXコブラ

ネジザウルスがあくまでも「なめた」「丸まった」ネジを掴む形状をしているのに対して、KNIPEXのは違う印象を持ちます。

KNIPEXエクストラスリム180

こういったトラスネジ(背の低い両端が肩の落ちた形状)だとネジザウルスの方が確実だと思いますしね。

KNIPEXエクストラスリム180

逆に言えば縦溝を他の作業に有効に使えるようにした万能小型プライヤーとしてすんごく活躍しそうなコブラだと思います。
先端もそこそこ細くさまざまなシチュエーションで使えると思いますよ。

>>動画では速攻レビューも上げてありますのでぜひ御覧ください。

プラグソケットの話

数ある整備項目の中でもいわゆる基本と言われる整備ってのがありまして。
昔から「オイル交換」と「タイヤ交換」

そして「プラグ交換」が有名ですよね。

少し前なら自動車のプラグ交換と言ったら16mmサイズ対応のプラグソケットがあれば、なんとかなったのですが現在は14mmプラグとかも登場してサイズ確認が必須となりつつあります。

そこで今回は久しぶりにプラグソケットの話でも。

Z-EALプラグソケット

Z-EAL 3/8プラグソケット(クリップ式)

現在当店で最もよく売れているのがこのジールのクリップ式プラグソケット。
薄く作られていてプラグホールの狭い設計のエンジンにも対応します。
サイズ設定も豊富なので多種類のサイズが混在するバイク向けにも一押しの工具ですね。

ちなみにZ-EALのプラグラインナップにはこんな風な12角モデルも存在します。

Z-EALプラグソケット

Z-EAL 3/8薄肉プラグソケット(12角)

これは一般的なソケットの6P・12Pみたいな関係性で存在するソケットではなくて。
初期のBMWミニとか欧州車で採用されている「12角のスパークプラグ」に対応するための工具です。
現在そこそこの年月が経過して整備屋さんに多く入庫するようななったのか、お店にも「12角のプラグ出てきたんだけど」と問い合わせを受ける機会が増えてきました。

そんな時はこのソケットを購入するしかないので覚えておいてください。

なお。

Ko-kenプラグソケット

Ko-ken 3/8プラグソケット12mm(12角)ドカティV4用

V4エンジン搭載のドカティでは12ミリの12角プラグが採用されておりまして、それのための専用工具も存在します。

こんな感じでスパークプラグの世界も年々進化(?)してますので、よく分からないサイズが出てきたらご相談くださいませ。

>>YouTubeでプラグの話をしてみました。

筑波サーキットでタイヤゲージチェック

先月のゴールデンウィーク過ぎ。
5月10日に筑波サーキットで開催されたバイクレース「テイスト・オブ・ツクバ」に行ってきました。
もちろんレースしにいったわけではなくタイヤ用エアゲージの旭産業さんと合同で

レース会場で使われているエアゲージは狂ってないの?

という興味だけで行ったわけです。

筑波サーキットエアゲージチェック

当日は私のお友達である松田選手に協力して頂き、筑波サーキットの許可ももらいピットでエアゲージの無料チェックを開催しました。

持っていったのもマスターゲージとかではなく校正に使う本格的な基準器を持ち込んでのチェックです。

筑波サーキットエアゲージチェック

ぶっちゃけ──ちょっと舐めてました。
「結構みんな狂ってるんじゃないの?」

ってね。
でももうビックリですわ。
みんなすっごく大事に使っていて修理が必要な人はほぼ皆無でした。
もちろん「ただ大事に使っている」だけじゃなくて、定期的に校正にも出しているみたいで、ゲージ裏面を見ると校正証明シールが貼られ小まめに気にかけている感じでしたね。

こちらの様子とゲージメーカー社長との直接対談を収めた動画も出しておきましたのでぜひ御覧ください(ページ下部にリンクを置いておきます)

筑波サーキットエアゲージチェック

あとね。
メーカーの技術職の方と多くお話させて頂きまして、ぼんやりと理解していたエアゲージのいろいろなことの解像度がかなり上がりました。
いやーこういうのって貴重な機会ですね。
ほんとに私も勉強になりました。

※よく「ブルドン管ってなに?」と聞かれますが、この画像の矢印部分「?マーク」をしているのがブルドン管でして、構造はしぼんだ風船のような作りになっております。
このしぼんだ風船にエア圧が送られることによって「?」が少しだけ真っ直ぐに伸びようとするちからをギアを介して表示しているのが「ブルドン管式圧力計」の正体です。

筑波サーキットエアゲージチェック

当日はレース現場にはそぐわない異物だという認識はありましたが。
みなさんに好意的に対応して頂きありがとうございました。
また何かの機会に現地チェックやってみたいと思いますのでよろしくお願いします。

>>当日の様子をまとめた動画はこちら