工具の専門店として営業しておりますと各種工具の修理依頼やメンテナンスの方法などの問い合わせが入る事があります。
コンプレッサーやジャッキとかの大物はもちろんなんですが、小物系だとラチェットの修理依頼が多いですね。
先日も1本お願いされまして、ついでなのでそのやり方と日々のメンテ方法でも書いてみようかと思います。
今回の修理の相手はKTCの36ギア小判型ラチェット。
個人的にはかなり好きな部類のラチェットでして、小判型としては教科書通りの作り方がされてますので他メーカーのラチェット修理にも参考になると思います。
まずこういう小判型のラチェットが壊れてしまう(調子悪くなってしまう)原因の多くが「汚れ」や「ホコリ」の混入です。
小判型ラチェットってかなりギチギチに作られていて、そのおかげで大トルクを受け止める事が出来るのですが、金属同士の接触面にゴミや埃がはさまるとギアの歯が半掛かりになったりしてギア欠けの原因になるんですね。
で、このラチェットも中身はかなりゴミや埃がイッパイでして・・・。
全バラするとこんな感じ。メインギアは作動不良によるギア欠けが見て取れます。
ここまで摩耗してしまうと「交換」しか手が無く、今回はフルO/Hになりました。
(メインギアに損傷があるくらいまで疲弊していた場合、他の部品交換を怠ると結局同じ事になりますので出来るだけフルで交換してあげてください)
ちなみに。
ここまで開けた時点でギアに欠損等が無ければパーツクリーナー等で綺麗にしてあげて油を差して上げればOK。それだけでギアの動きは復活します。
このとき注意したいのが
- CRCやラスペネ等の潤滑剤を使わない事。
- グリスのような粘度の高い物も使わない事。
この2点を厳守ですね。
このふたつの潤滑剤はどちらもゴミや埃を巻き込みやすく後日作動不良の原因になりやすいです。(高粘度のグリスは熱が掛からないラチェットの場合、ギアの掛かりを悪くします)
なのでミシン油やコンプレッサーオイルのような緩いオイルをチョイチョイっとかけてあげればOK。
前兆としては不意にギア飛びしたり反転時にカチンと音がしなくなったら油分切れかゴミ混入なのでやってあげてください。
それも面倒な人は使用後にたまにでいいのでエンジンオイル等にどぶ漬けしちゃってもいいです。
(新油だと粘度が高いので廃油とかでOKです)
で、せっかく全バラなので隅々までお掃除。
パーツクリーナー等で丁寧に磨いていきます。
と、ここまで書きましたが小判型の場合、ここまでバラすと一般の方は組み込めない可能性があります。
パウル(小ギア)を留めているボールとスプリングが治具がないと組み込みがすごく難しいんです。
そういう場合には当店でも良いしプロの工具店を頼ってみてください。
(出来ればバラバラにする前にお願いします)
フルO/Hなので気持ちよく部品も全交換。
古いギアと新しいギアの角のとんがり具合が違うのが分かると思います。
KTCの場合2000円ほどでO/Hキットが手に入りますので、ひどい場合にはサクっとやってしまうのが良いと思います。
フタをしめる前に仮組みの状態にしてから作動油をさしてあげてカリカリ馴染ませれば終了。
今回は部品全交換でしたのでオイルを多めに入れてあげて染み出すくらいで仕上げました。
小判型は壊れる前にちょいと洗浄して注油してあげればなかなか壊れる事は無いんですね。
たまにでいいのでメンテしてあげてくださいませ。
そしてこういう事こそ工具の専門店を頼ってみてください。(ウチじゃなくてもいいので)
いろいろな情報やコツを教えてくれると思いますよ。