店舗では様々な工具の質問を受けますが、中でも多いのがトルクレンチとか溶接機とかエアー環境関係の相談。
この辺の工具に関しては販売している側もよくわかっていない人も多いですし、プロメカさんでも分からないので相談きましたって人は多いです。
特にわかっているつもりでよく分からないってのが空圧系のお話。
ってなわけで今回はエアーコンプレッサーの話でも書いてみようかと。
(ちょっと文章多めですがご勘弁を)
まず、理解してほしいのが家庭用の100V電源で使用する前提の機器ってどこかで妥協点を見つけるしかないという事実です。
現在の家庭用コンセントの電源は60A契約くらいが基本だと思いますが、これを大まかに機器の定格出力のワット数に換算すると6Kwとなります。
さらにこの6Kwを家庭内で分岐して各分岐主線に2Kwずつくらい配電しているってのが一般家庭のスタンダードかと思います。
この各配線の上限を2Kwと仮定すると2馬力のコンプレッサーが1.5Kw出力ですのでほぼ上限を使い切るかたちとなりますので限界の出力なのが分かるかと思います。
またこういったモーター機器は「起電力」ってのがありまして、モーターが動き出す瞬間(または止まる瞬間)に1.5倍から約2倍の電力を消費します。
なので少し前までは0.75Kw出力の1馬力コンプレッサーが上限と言われておりました。
(0.75Kw × 2 = 1.5Kwが瞬間にかかる可能性があるので、それ以上の機器だとブレーカーが落ちる)
しかし現在は省電力型のモーターを積んだエアーコンプレッサーが登場し、2馬力までは使えるようになったというわけです。
でも。
逆に言えば2馬力までなんですよね。
自動車屋さんや鈑金塗装屋さんに入っている業務用のコンプレッサーは「最低で3馬力」でして、これは動力(三相200V)を使う前提の機器です。
業務用では3馬力でも数人で同時にエアーを使うと足りないと言われてますので、スタンダードな大きさは5馬力くらいの大きさになります。
ここまで大きなコンプレッサーを使ってやっと安定的なエアーを供給出来る現場という事になります。
でも三相200Vなんて一般家庭ではまず契約してませんし、そもそも業務用の機器だって10万円以上が基本となってきますから気軽に検討出来る設備ではありません。
ですので。
逆に「100Vのエアーコンプレッサーで出来る事」をちゃんと把握してから購入すれば無駄にハードル上げなくても済むし、十分に活用出来る機器として使えると思います。
・PUMA 縦型静音100Vエアーコンプレッサー
それでは家庭用100Vのエアーコンプレッサーでどこまで使えるのかというと。
・タイヤの空気入れ ○
・エアーインパクトレンチ ○
・エアーラチェット ○
・エアーブロー ○
・塗装全般 ○
・エアーソーやエアーサンダー △
・サンドブラスト △
ってな感じです。
エアーインパクトレンチがなぜOKなのかというとエアー機器を駆動するためのエアーモーターが大きめなものがついているおかげです。
エアーモーターが付いている機器には大きく分けて「高回転型」と「低回転型」があります。
語感でわかるかもしれませんが低回転型のエアーツールはエアー消費量があまり多くなく小型のエアーコンプレッサーでも使用可能です。
(インパクトレンチは大きいモーターって事です)
それに比べて小型の高回転トルク型のエアー機器、エアーソーやエアーサンダーはエアーの消費量が多く、小さいコンプレッサーではエアーの供給が間に合わずにイマイチ使えません。(サンドブラストも同じ)
まぁ数秒から数十秒は使えますので、それをもって「使える」という人もいますのであえて△にしました。
・PUMA 静音タイプ コンパクト卓上100Vエアーコンプレッサー 1馬力
このままだと「え、イマイチやん」って事になるかもしれませんが、逆に言えば
タイヤの空気圧とエアーインパクトとエアーブローが使えればOK
って人には問題ないわけです。
特にエアーブロー(エアーガンでブシューってやるやつね)は他の機器と違ってほぼ替えが効かない大きな利点ですので、これを使うためだけにエアーコンプレッサーを購入するってのもアリだと思います。
・PUMA 静音タイプ100Vエアーコンプレッサー 2馬力
そんな家庭用コンプレッサーにも先程書いたようについに2馬力で普通に使えるモデルが登場しております。
この2馬力ならば業務用には敵いませんがある程度の機器ならほぼ普通に使えるようになりました。
それでも業務用に比べたら快適ってレベルではありませんので、その辺はご理解くださいませ。
そしてここでまた疑問が浮かぶわけです。
1馬力と2馬力、また業務用の3馬力や5馬力ってのは吐き出すパワーが違うの?
これはもっともな疑問だと思いますがエアーコンプレッサーにおいての馬力の違いはずばり吐出量の違いです。
もっと簡単に言えばコンプレッサーが作り出せる圧縮空気の量が違います。
これは業務用コンプレッサーメーカー、アネスト岩田のカタログ抜粋です。
左から型式、そして定格出力と並んでますね。
定格出力は最初に書いた通り0.75Kwが(1)となっていて1馬力という事です。
そしてもうひとつ右隣りの欄には制御圧力ってのがあります。
これはMpa表記なので分かりやすくキロでいうと10キロ圧力上限って事です。
この表を見るとよく分かるのですが「圧力」は馬力数が変わっても全部同じなのがわかると思います。
(表下側の最大1.4Mpaってのはトラック整備とかで使う高圧対応モデルです)
じゃあ馬力(パワー)で何が違うのかというと表の「吐き出し空気量」(毎分の吐出量)が違いますね。
エアーコンプレッサーはモーターとタンクで構成される機器です。
アウトプットされる圧縮空気はモーターから直で出るわけではなく、一度タンクに貯蔵されます。
タンクに貯められたエアーはモーターが何馬力だろうと上限10キロ付近の圧力で停止します。
この10キロで貯められたエアーを出口部分で絞ってあげて6.5キロくらいで使用するのが今の一般的なエアー機器の使用条件となっております。
(エアーインパクトとか一般的な機器は6.5キロあたりが推奨エアー圧です)
レギュレーターによって6.5キロを絞られたエアーを使って機器を動かせば、タンク内のエアーは減り、つまり圧力が低下していきます。
コンプレッサーは10キロから8キロくらいまでエアー圧が減ると自動で運転を再開し8キロ以下にならないように頑張ってエアーを作ります。
ここで馬力の大きなモデルほど一度に作り出す空気量が多いので余裕をもってエアーを補充し続けますが、馬力の小さいコンプレッサーはエアー機器の消費するエアー量に供給が追いつかず、ついにはエアー機器の推奨圧力である6.5キロを下回りはじめます。
そうなるとエアー機器は満足に動く事が出来なくなってしまうわけです。
これがエアーコンプレッサーにおける馬力数の違いにおける現場での使用限度の違いです。
逆にいえば一瞬だけエアーが使えればいいような状況(タイヤの空気入れとか)ならば馬力の違いによる弊害はほぼ無いと言い切れます。
・馬力による瞬間的なエアーのパワーに差はない。
・馬力によってエアーの持久力に差がある。
※補足:よく予備タンクをつけると馬力の小さなコンプレッサーでも使えるようになるって話を聞きますが、ぶっちゃけあまり変わりません(誤差レベルです)
・PUMA 静音タイプ コンパクト卓上100Vエアーコンプレッサー 0.5馬力
ってなわけでまだ説明したい事もあるのですがこれくらいでなんとなくエアーコンプレッサーを選ぶ時の参考になると思います。
そりゃーハイスペックな方が良いに越したことはありませんが、自身の作業用途に合わせて購入すればいいだけなので無理に大きなモデルを買う必要もないのも分かって頂けましたでしょうか。
実際エアーコンプレッサーを購入予定という方は店舗まで来て貰えればもうちょい詳しく説明しますのでお気軽にどうぞ。