車両整備に長く関わっていると少しずつだけど時代とともに変わっていく事っていくつかあります。
最近では当たり前になった内燃機の制御でもキャブからインジェクションに変わっていく時は現場のメカニックさんも結構苦労した記憶があります。
そして生産現場の変化や設計思想の変化とかでも変わっていく事ってありまして、個人的には気になっていたのがネジの変化。
例えば最近の新車についているボルトナット。
ワッシャーがなくなったと思いませんか?
昔ならワッシャーをかまわせて取り付ける…とか当たり前だったのですが、近年まったく見なくなりました。
まぁその分傘付きボルトやナットに変わっているだけなのですが、少し前なら当たり前だった事がいつの間にか変わってたりするんですよね。
そしてボルト関係ではもうひとつ。
「ネジの弛み止め」の存在。
確かに昔からありました、でもそんなに多くの箇所に使われていなかった印象なんですよね。
でも近年のサービスマニュアルみるとかなりの箇所に緩み止めの指定が書かれております。
まぁこの辺は設計にも関わる話なのであまり言及はしませんが、とにかく確実に昔よりは使用頻度は高くなっていると思います。
そしてネジの弛み止めのケミカルで有名なのがロックタイト。
もはや代名詞的に有名なケミカルでありますが、詳しく知っているか?と聞かれたら結構曖昧な人も多いと思います。
ちなみによく使われている中強度の243は少し前まで「242中強度」という型番でした。
それが環境対策とかその辺の事情でモデルチェンジしまして242から243に変わっております。
性能や効能はほぼ同じですので、古い指示書等で242と書かれていた場合には243でも大丈夫だと思ってください。
そして「中強度」と「高強度」
これも間違って買ってしまう人が多いので要注意です。
よく分からないままネジの緩み止め剤を初購入する人に多いのですが、なんとなく高強度の方が強そうなので高強度使おうと安易に考えている人がいます。
ですが高強度はほぼ永久接合に近い強度を持っていますので「二度と外さないネジ」ならともかく、また分解時に緩ませるボルトナットには使わない方がいいです。
ですので普通の車両整備での使用は基本的に中強度を買っておけば間違いありません。
それでも高強度を使わざるを得ない箇所ってのもありまして、例えば密閉された中の部品で緩んだらかなり困る部品等では高強度の指定もあったりします。
そんなネジを外すときには「とにかく熱してみる」事が基本となります。
これはロックタイトの242とか263の使用を前提とした話になりますが、この手のネジロック剤は大抵の場合、使用温度範囲ってのが決まっております。
そして上限が大体どのメーカーも150~200度くらいです。(高温対応モデルもありますので要確認)
ですので、それ以上かその温度に近い高温にしてあげればケミカルが融解し、ネジを傷めずに緩める事が出来ます。
この熱を入れるってのも意外と知られてなかったりしますので、まぁ豆知識くらいに覚えておいて損じゃないと思います。
あとついでにもうひとつ。
ネジロック剤は「嫌気性」だという事。
嫌気性とはかなり大雑把にいうとその辺に垂らしておいても固まらず、ネジを密着させて空気を遮断した状態になってはじめて固まる性質だと思ってください。
すでにネジロック剤をお持ちの人ならわかると思いますが、ネジロック剤のキャップ部分や先端部分って、よくある接着剤のように固まって出てこないって事が無いと思います。
ネジに塗ってギュっと締め込んで空気に触れない状態になってはじめて硬化するわけです。
でもこれが工具箱の中でこぼれたりタレたりした時がちょいと面倒でして、いつまでもベタベタしてわけですからね。
そんな人に出先用工具箱向けに人気なのが固形のスティックタイプ。
・ロックタイト スティックタイプ ネジロック剤248[中強度]
スティック糊のようになっていて半固形のネジロック剤です。
固形だって事以外は243の中強度と効能がほぼ同じですので屋外とかでも便利に使う事が出来ます。
こんな感じで近年需要が増えてきたネジロック剤。
まだ持ってないって人は出番が来てからでは遅いですので、自分にあったモノを揃えておきましょう。