整備現場におけるサイズ確認及び測定の話

工具の専門店をやっていると避けて通れないのがいろんな物のサイズの話。

特に手持ちのソケットやレンチでは回せないボルトナットが出てきた時とか
「14ミリじゃ入らないんだけど17ミリじゃ大きい」
と、相談を受けるのですがこんな時にそんな大体のサイズの話じゃなくてキッチリとサイズを測って頂けると話が早くて助かります。
(そもそもなんとなくの話では解決できない事がほとんどです)

実際、14と17の間にはミリで「15と16」インチで「9/16と5/8」があります。
そんな中でインチネジの可能性が捨てきれないような場合には結局実測しかないって場合が多いのです。

あ、そうそうそういった場合に私は「そのネジはなんのネジですか?」とか車両だったら「なんの車種ですか?」と聞く場合があります。
すると「いや、今車種とか関係無いし」と言われる人がいるのですが、上記の話通り少しでも数ある可能性の中から消去法で推測したいが為ですのでどうぞご理解ください。
例えば車種が国産車だと分かればそれだけでインチネジの可能性を捨てる事が出来るってわけですね。

ちなみにネジの実測方法ですが意外と分かっていない人も多いんですね。

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ボルトナットでの工具を話す場合には図のココサイズを教えてもらえればOKです。
たまに尖った部分の対辺を測ってきてくれる人もいるのですが……正直分からない事が多いです。
またTORXネジのような「どこを測定すればいいのか分からないネジ形状」の場合だと実物を持ってきてもらうのが最も確実で早かったりもします。

そしてネジの呼び寸法の場合(M10とかそんなの)はネジ山のギザギザした中で一番尖っている所を測定してください。
(これがナットや雌ねじだと違ってきます)

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特に呼び寸法では頭が12ミリのネジだったとしてもM径が同じとは限らないので注意が必要です。(整備系のネジはそういうのが多いです)
こういう整備にまつわる各寸法の話は工具実践でも書いてありますので読んでみてください。

>>工具実践~ボルトナットの基本~

そしてこれを読むとわかると思いますが車両整備でもそういった各サイズの測定って結構重要ですのでせめて簡単なモノでいいのでノギスくらいは用意しておきましょう。

シンワノギス

ノギス等の測定工具関連ページ

この手の測定工具は1本持っているといろいろ便利ですよ…ってか出来れば持っていてくださいませ。

工具の展示即売会のお知らせ

年末の12月に当店も関係したツールショウ。
工具の展示即売会を開催することになりました。
場所は宇都宮のコンベンションセンターである「マロニエプラザ」

マロニエプラザ

>>マロニエプラザ公式Webサイト

北関東ではかなり大規模なビックサイトとか幕張メッセみたいな会場です。

ここで当店の取引先である喜一工具主催の工具の大展示会が開催されまして、そのブースの一角に当店が並ぶ事になりました。
メーカーや問屋さんってのは基本的にユーザーに直売しないので、展示場内で欲しい工具があったらエイビットのブースまで来てもらって当店経由で購入出来るという仕掛けです。

今回はブログでの告知ですが後日メインのホームページでも告知する予定です。

【重要】会場に来られる予定の方は「事前登録」が必要になります。

先ほど書いた通りエイビットを通して購入は出来るのですが「エイビットのお客さんですよ」ということを把握する必要があります。
そこで下記のリンクから販売店の欄を「エイビット」にしてもらい事前登録してから来場するようにしてください。
(Googleフォームが開きます、無料です)
住所等は別送になる場合に使いますので出来るだけ正確に記載をお願いします。

>>Googleフォームのアドレスはこちら

●詳細
・会場:宇都宮 マロニエプラザ
・初日:2024年12月6日(金)13時~20時
・2日目:2024年12月7日(土)10時~16時
・参加工具企業:現在36メーカー(予定)
・特別企画:箱崩れや小キズ品の特売・トルクチャレンジ等々

2日間、両日ともに私も会場入りしておりますのでお気軽に参加してください。

ツールショウ北関東

詳しくは上記の画像をクリックしてください(PDFが開きます)

フリップ式ライトの進化系 ─作業灯─

季節柄なのか日が落ちるのも早く、なんとなく曇天も多くなるこの時期。
工具関連ではライトの問い合わせが増える時期でもあります。

手元を照らすハンドライトが主流ではありますが、大きく照らして作業を補助してくれる作業灯も需要が高まりますね。

近年はLEDの高性能化によって様々な形状のライトが登場しておりますが、最も恩恵を受けたひとつがフリップ式のLEDライトだと思います。

TAKENOWフリップライト

TAKENOW 充電式フリップLEDライト

このライトは画像のようにLED部分が折り畳み形状になっていて自由に照らす角度を変更出来ます。

TAKENOWフリップライト

それによってこのようにマグネットを使い壁面に貼り付けた際に自在に光の角度を調整出来るわけです。
これによってハンドライト的に使いながら作業灯としても活躍出来るマルチなライトという性格が受けて人気となっておりますが…。

そのもうちょい進化系というか特化型のライトが近年人気です。

SK11リーフライト

SK11 充電式LEDリーフライト(作業灯)

それがこのSK11から登場したリーフライト。
フリップ式の利点である「角度が自在にコントロール出来て作業灯にもなる」という点だけを活用し超便利な作業灯として作られたLEDライトです。

SK11リーフライト

リーフ型と呼ばれる理由がこれ。
3枚羽とも言えるリーフを自在に動かし対象物を照らしたり、または大きく作業範囲を照らしたりして使えるまさに作業灯です。

SK11リーフライトSK11リーフライト

点灯のモード切替によって白色と昼光色にも出来ますので鈑金作業の現場でも人気ですね。

SK11リーフライト

マグネットによる壁面への貼り付けはもちろん、内蔵のS字フックや付属の大型クリップもありますので、使う現場を選ばないオススメライトです。

ぜひ一度お試しくださいませ。

専門メーカーKUKKOの内抜きプーラー

特殊工具とひとことでいっても多種多様なものが存在しますが、中でも注目度が高く少し難解なのが「プーラー」各種。
そんなプーラーでさえ種類はたくさんありまして一般的なクレーンゲームの爪みたいなモノからギロチンみたいなギアプーラー等々、とにかく選ぶのがなかなか大変です。

で、そんなプーラーの中にあって特に替えの効かないプーラーと言われているのが「内抜きタイプ」です。
ベアリングのインナーレース(内側)に引っ掛けて抜く工具でして、反対側から叩いて抜く事が出来ない場所では必須の特殊工具となります。

で、この内抜きプーラー。
大きく分けると2種類あって、爪で内側に引っ掛けて抜くタイプとコッターのように円形の治具を差し込んでそれを広げてあげてセットしてから抜くタイプに分ける事が出来ます。
でまぁ気をつけて欲しいのですが「爪のタイプ」の内抜きプーラーって実はあまり使えません、ですので出来るだけコッタータイプのやつを購入するようにしてください。(割とマジで後悔すると思います)

で、当店で扱っている内抜きの中でも「自分用」に購入するのに適しているのがドイツのプーラー専門メーカーKUKKOの内抜きモデル。

KUKKO内抜きプーラー

KUKKO 内抜きベアリングプーラー 薄肉単品

対象のベアリングが壁際にピッタリ付いているようなやつでも使用出来る「薄爪モデル」となっております。

KUKKO内抜きプーラー

こんな感じで「先割れ」になっていてベアリングにセットしてから広げて固定して使います。
このKUKKOの内抜きは1本でそこそこ受け持ち範囲があるので個人向けなら1~2本買えばOK。

KUKKO内抜きプーラー

後は共用になっているヤグラのプーラーをサイズに合わせて選んでもらえばこんな感じで使えます。

KUKKO内抜きプーラー

KUKKO スライディングハンマー(内抜きプーラー用)

ヤグラ状のプーラーが使えない箇所やそもそもスラハンの方が好きって人には専用のスライディングハンマーも別売りで用意されてます。

プーラーの中でも結構使用頻度も高いしダメなの買うと使えない事が多い内抜きのベアリングプーラー。
購入で迷ったらぜひ検討してみてください。

ダイヤモンド粒子のドライバー

プラスのネジに対する工具、いわゆるプラスドライバーは工具の歴史の中でもメーカーの創意工夫が多く見て取れる良い素材工具のひとつだと思います。

ネジの構造上「カムアウト」と呼ばれる上に滑りながらネジを舐めてしまう現象をいかにして防ぐのかが命題となっているので改善へのベクトルがわかりやすいのというのも比較対象としては面白いかな、と。

プラスのネジに対しては「押し7、回し3」という言葉があるくらいカムアウトに対する自己防衛が大事だというのは分かると思いますが。
工具のメーカーとしては「どうにかしてカムアウト自体」を防ぐ方法がないのか──というところが工具作りに重要になってくるわけです。

過去にもACRビットと呼ばれる工具側に滑り止めのような溝を掘ったり、今回紹介するダイヤモンドの粒子を付着させカムアウトの原因になる滑り自体を防ぐ方向に進化を続けてきました。
実際Weraのダイヤモンドドライバーは一定に評価がありますしね。

もちろん滑りを防止するというだけでなくPBのように下手なギミックを付けずに精密な公差で対応しているメーカーも多いです。

PBドライバー

PB スイスグリップクラシックドライバー

このメーカーのプラスドライバーの先端は画像のように黒く仕上げられておりますが、これは先端部分に何かしらの加工がされているのではなく。

なにもされてない

なのです、実はこの黒い部分はメッキ加工で起こるメッキの厚みでの公差のズレも嫌ってほぼ無加工(黒染)に仕上げる事を徹底しております。
この精密な公差を誇るPBは無加工先端ではあるもののネジにがっつり食いついてくれて、なめにくいドライバーを実現しているわけです。

このように各工具メーカーによって先端の加工や考え方に違いがあるのが面白いですよね。

で。
今回のお話の主題に戻りますが。
ダイヤモンド粒子を付着させたドライバーも「ある一定」の効果があると書きましたが、そのある一定とは経年劣化による著しい性能劣化です。
これはACRにも言えるのですがギミック自体が落ちる・薄くなる事によって初期性能が出せないだけでなく、ただの作りの甘いドライバーになってしまうのです。
実際にガンガン使っているプロメカさんなら大体1年とかでダメになるのではないでしょうか。

それではなぜ今回このダイヤモンド粒子のドライバーを取り上げたかというと。(ふぅやっと本題)

ANEXダイヤモンドビット

ANEX ダイヤモンド龍靭ビットタフ プラス#2

このアネックスのビットがなかなかすごいって事をお話したかったわけです。
あくまでも電動用の両頭ビットなのでハンドツールメインの車両整備の人には響かないかもしれませんが「プラスドライバーとしての実力」をみれば試しに買ってみても損はしないと思います。

ダイヤモンドドライバーのメリットは「ネジに食いついて滑らない」事です。
それによってカムアウト自体を防ぎネジを舐めずに回せるのですが…
表面に付いたダイヤモンドが落ちたりすると一気に性能が劣化するのが弱点だと思われてきました。

しかし。
ANEXの開発担当に聞いた話は少し違っていまして──

ANEXダイヤモンドビット

実は食いつき自体がすごくプラスドライバーの先端部分の応力に逃げ場がなく、徐々にですが先端がねじれてしまうらしいです。
目視で分かるくらい捻れれば使用限界がわかりやすいのですが、パッと見ではわからないくらいのねじれでもプラスネジとのフィッティングは悪くなり、結果なめてしまう現象がおこるとの事。

そこで取った策が「ねじれないように硬いビットにする」という方法です。
一般的に工具鋼の硬さはHRCで57~59くらい。
これが電動用のビットとかになると60くらいとの事。

ところがこのビットはHRC62.5というカチカチ仕様にして本体のねじれを防ぐ事に成功しました。
でもここで心配がひとつ増えますよね。
そう硬くつくった事によるビットの破損です。
金属というのは簡単にいうと硬くしすぎると割れやすくなります。
なので工具鋼として58くらいが採用されている理由も「割れにくく粘る」硬度がこれくらいなのだと思います。

それではこのビットはすぐにわれてしまいダメなビットなのかというと……
そうではありません。

ANEXダイヤモンドビット

その秘密が「電動用ビット」だという点。
近年の電動用ビットというのは電動工具の発達によって「いかに割れないように作るのか」というのも課題のひとつでした。
あんな細いビットに40V仕様の電動工具とかがドガガン!と大トルクで回すのですからそうりゃそうですよね。

そしてそこで各メーカーがアイデアで対応したのが「トーションビット」という構造です。
上の画像でもビットの真ん中あたりに黄色いカバーのようなものが見て取れると思いますが、この中側は細くわざと少しねじれるようになってます。
このねじれをわざと作る技術によってビットが割れずにすむようになったわけです。

ここまで聞いてなんとなく分かったかと思いますが。
・すべらないダイヤモンド粒子
・ねじれない最高硬度(62.5)の硬い素材
・割れない工夫のトーションバー構造

このみっつの相性がお互いのデメリットを消し合っているおかげでこのダイヤモンドビットの真価が発揮されております。

ってなわけでも今店舗ではこのビットの実物見た方からかなりの絶賛をいただいております。
地味な工具ではありますが「プラスネジをなめにくい」というのは誰もが欲する工具のひとつだとも思います。
ぜひ一度お試しくださいませ。

動画も撮ってみました。