工具のニーズと実情

今月の5月9日は語呂合わせで「工具(5/9)の日」とか言われてて、そんな日に合わせてなんとなーく私感を書いてみたりしたことが過去には何度かあるのですが。
正直この手のポストって書くのに時間や熱量が必要なこともあって、今年はもう書かなくていいかな…とか思ってました。
しかしお店に来るお客さんから「今年は何か書かないの?楽しみにしてたんだけど」とか言われてしまったので、遅ればせながら普段思っていることを書いてみようかと思います。

あまりにも広義なことは書きにくいのでちょうどタイムリーに身近で起こっていることでも書いてみますね。

近年私のもとには工具のメーカーさんから「こんな感じの工具を開発中なんですがアドバイス的なものはありますか?」等のお話が結構きます。
これは自慢話とかではなくメーカーの開発の人とかはエンドユーザーさんとなかなか接触する機会がないので、店舗で工具を売っていて直にお客さんと接している人からの情報を欲しがるわけです。
だからエイビットだけに聞くとかではなく、店舗をやってて意思の疎通が出来る人に聞いているってのが正しいかな。

ちなみに余談ですがこのときに工具のプロトタイプとか見せてもらうことがあったりしますが、何を勘違いしたのか「試作品を誰よりも早くSNSにアップだぜ」とかやる販売店さんがいます。
アホかと。
まだベータ品なのにSNSとかにアップして自己顕示欲マシマシなのとかを見るとホントにゲンナリしますね。
ちゃうねん、その試作品は結構な人数見てるねん、あなたが特別ではないのよ。(なんなら後日のネタとして使うかもだからみんな画像くらいは撮ってる)
でもみんな暗黙の了解で普通は表に出したりはしません。
もちろんメーカーから「どんどん出して宣伝してください」とか言われたら別っすよ。
ホントに勘弁して欲しいす。

─閑話休題─

でまぁメーカーの試作品とかアイデアにはいろんな情報が集まってきて徐々に形になってきたり、改良等が施されてきて製品になっていくわけです。
でも最近はSNSがあるじゃないですか。
メーカーの開発さんとかと別に広報の人間がこの手の情報とかをネット上で行うのを目にするようになってきました。

これがねぇ…
あまり良い結果になってないよなぁと思うわけです。
まず最も問題だと思うのがネットって結局「声のでかい人がイニシアチブを取りがち」ってことです。
特に工具という分野は「誰でもある程度語れてしまう」分野でして、例えばフォーミラーカーの制作している人と庭先で原付きをいじってる人が対等に論議出来てしまいます。
もちろんどちらが上とかはないのですが整備状況には大きな違いがあります。
工具に対する要望も違って当然なのですが、両者ともにネットに登場するとは限りません。
そもそもイチ個人が「僕の考えた最強の工具」って結局その人が良いと思ったことが詰め込まれているだけなので、いざ発売となったらあまり売れない場合が多く、もっと言えばその立案者さえも「あとここがこうなら…」とか「価格が高すぎるよ」とか言い訳ばかりで購入には至らないことが多い印象です。
(これは工具に限った話ではないかもですけどね)

あと店舗でもネットでも「この工具がこうなったら買うのに」とか言われることも多いのですが。
これも上記と同じ理由で限定条件下での工具の利便性ってあまり意味がないんですよね。
ただ誤解して欲しくないのですがユーザーの要望としては「こんな工具があったらいいのに」というのはどんどん言った方がいいとも思ってます。
例えば車両整備の現場でも日進月歩でいろんなことが進化していて、整備の事情も変わっていってますからね。それに伴う要望とかは貴重な意見でもあるわけです。
そしてそういった声をみなさんの想像の遥か上で実現するのが開発の仕事なんじゃないかなと思うわけです。

昭和から平成に掛けて一時は一斉を風靡したリサーチ式の商品開発ですが、分野を超えたお客様の多様化やネットによる距離感の違いによって現在は完全に崩壊したと思ってます。
ネットが普及して声を上げやすくはなりましたが、メーカーさんにはそれを上回る商品開発をお願いしたいですね。

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