終わったり始まったり

新型コロナによる緊急事態宣言のちょっと前や少し小康状態になった頃に、週に一回いくいわゆる行きつけの個人でやっている居酒屋さんってのがありまして。
こんなご時世で潰れてほしくないという思いからランチに行ったり、夜はわざわざテイクアウトを買いにいってあげたりしてました。
別に聖人ぶるわけでもなんでもなく単純に「自分の居場所を守りたい」という気持ちだけの行為です。

で、その居酒屋さんで都内の大手出版社にお勤めの方とよく一緒になりまして、いろんなお話をしたのですが。
興味深かったのが「出版業界は数年ぶりの大盛況」だというお話。

個人的には「え?紙媒体さんってコロナ関係無しに厳しいのでは?」と思っていたのでちょっとビックリしたのですが──

種明かしはと言うと、現在は書籍のデジタル化が大きく進み小説や漫画が過去にないくらい売れているとの事でした。
そう言われてみれば自分でも結構気楽に小説とかをポチっとしているので、昔みたいに本屋さんに行ってジャケ買いみたいな事こそ減りましたが、気になるタイトルとかは逆にホイホイと買っているかもしれません。

こういう事を書くと「いや本ってのは紙こそ至高」とか言い出す人がいるのですが、そりゃ私だって高校生の頃から本ばかり買ってきた人間ですので言いたい事は分かりますけど……

個人的には紙の本にそこまで思い入れはないんですよね。
お店の裏の倉庫に高く積まれた数千冊の紙の本を断捨離したのが確か3年前かな。
古本で売ったりしないで全部捨てました。
それくらい紙の本を書い続けてきた私でも今や本はデジタル依存しているわけです。

スマホやタブレットに収まっている数百冊の本があれば、いつでもどこでも読むことが出来ますからね。
自然と紙の本を読み返す事が少なくなってました。(もともとそんなに読み返したりしなかったけど)

で2ヶ月前。
自分でコラムを執筆させてもらっていたrider誌のコラムを無理言って辞めさせて頂きました。
自分でも読まなくなった紙の本にコラムを書いている事がなんかおかしく感じてしまったんです。

そしたらなんと。
コラムを辞めた次号で雑誌自体が休刊に…。

rider最終号

かなり急に決まった休刊だったらしく執筆陣にも連絡がなかったようで、編集長の挨拶以外は最終号的な花道な感じは全くありませんでした。
まぁ確かに昨年秋頃から昔の記事を焼き直ししたりもしてて、当店で定期購入してくれてたお客さんも離れ始めていましたから仕方ないのかもしれません。

で、これが皮肉にも最終号だけあちこちで売り切れが続出。
各SNSでも「残念だ」とか「もっと続けてくれ」とかそんな書き込みで埋まりました。

いやーもうお約束の騒ぎですよね。
人気だったお店や雑誌がなくなる、そりゃみんなが買わなければ無くなるんですよ。
いや別に買ってない人を責めるとかそんな気持ちは毛頭ありません。
けど「残念だー、いつか行って(買って)みたいと思ってたのに」という意見はどうしても冷めた目でみてしまいます。

今新型コロナで世の中の経済の仕組みが少しだけ変わったと販売の先頭に立っていて感じます。
従来なら許されていたニッチなものが終わってしまったり、従来ならまるで相手にされなかったニッチなものが始まったりしている気がします。

実際出版業界は大盛況らしいですが毎年老舗の雑誌が休刊になっているのも事実です。

当店も工具業界の中ではかなり端っこの方でやらせてもらっている「街の小さな工具店」です。
今の自分のやり方が正解なのかどうかは分かりませんが、いつか時代に追い越されて、知らない間に不正解ルートを進んでしまうかもしれません。
それでもその時が来るまでは精一杯自分のやりたい工具のお店を続けたいと思いますので今後も応援よろしくお願いします。