ダートバイクにおけるプライヤーレンチの活用術

以前他の媒体向けに書いた記事を再掲載します。
ダートバイク向けに書きましたのでそれっぽい内容になっていると思いますが、プライヤーレンチの説明としては分かりやすいと思いますので、バイク乗り以外の人も読んでみてください。


基本的にダートバイクって普段の整備に使う工具ってあまり多くないんですよね。
なんといってもほとんどの場所が8mmと10mmで済んでしまうわけだし、これがレースユース前提のコンペモデルともなればなおさらです。

もちろんそれは通常整備でのお話であって、パンクしたとか、転倒してレバー曲がったとかね。
不慮の事態に備えようと思えばやはり持っていたい工具もそこそこの数になります。
ましてそれが携行工具ともなれば厳選の仕方が難しいですよね。

そういう時って『1台で○○役です』みたいな便利そうなマルチツールとかも気になるのですが……やっぱり使ってみるとイマイチなモノが多いんですよね。
工具の世界では『何にでも使える工具は、結果何にも使えない』という言葉がありますが、まさにその通りな結果な事が多いんです。

しかーし!

今回紹介するのはまさにそのマルチツールに近い『1本○○役』な工具なんです。
もっというとダートバイクに特化した万能工具ともいえる存在でして、一日のレース時間ではかなり長丁場になり工具を持って走る事の多い全日本エンデューロ選手権ではかなりのライダーに愛用してもらっている実績もあります。(もちろん私も愛用してます)

プライヤーレンチの活用

それがこのドイツのKNIPEX社から出ている『プライヤーレンチ』

これだけ見ると「え?プライヤー?ペンチ?」と思うかもしれませんが……これモンキーなんです。

ご自分の工具箱の中を思い浮かべてもらうとモンキーって1本くらい入ってますよね。
入ってるよって人はその使用頻度を考えてみてください…どうです?実はあまり出番のない工具じゃないですか?

そうなんです、現代の整備事情ではモンキーってあまりアクティブに使う工具ではなく、どちらかといえば工具箱の肥やしになっている事も多いんですね。
それでは何故このモンキーでありマルチツールでもあるプライヤーレンチがそんなに優秀なのか。
ダートバイクユーザー目線で説明したいと思います。

さきほどこの工具はモンキーです、と書きましたがパッと見ではプライヤーなこの工具のどこがモンキーなのかを説明したいと思います。

プライヤーレンチの活用

一番分かりやすいのがここかな。
いわゆる口の内側の普通だとギザギザの歯がある場所がこんな感じでまっ平らなんです。
工具メーカーもちゃんとモンキーとして使うように作っているんですね。

これがどういう感じでモンキーなのかは言葉で説明するより見ちゃった方が早いと思うので、こちらの動画を見てみてください。

── ってな感じの工具なわけです。

で、ここまで読んでもまだ何故ダートバイク向けなのかが分からないと思いますので、この工具の諸元を見てみてください。

●KNIPEX プライヤーレンチ
・180サイズ 全長180mm 最大開口幅:35mm
・250サイズ 全長250mm 最大開口幅:46mm

ここで注目するのが180サイズの最大開口幅です。
ちなみに180サイズというとプライヤーでいえばそこそこミニサイズ。

プライヤーレンチの活用

実物も片手に収まりウエストポーチとかにも楽に入るコンパクトなサイズです。
この小さなプライヤーが……

プライヤーレンチの活用

ガバっと開くとこんなに大きいサイズにまで対応出来るのです。
写真右の250サイズで開口幅は最大46mm。
写真左のオススメサイズである180サイズでも開口は35mmなんですね。

さて、小さい方のでも35mmまで開くということは。
つまり…

プライヤーレンチの活用

こんなコンパクトな工具でモトクロッサーのアクスルナット最大サイズである32mmが楽勝で回せるんですね。
これが普通のモンキーレンチの場合32mm以上の開口幅があるモデルを探すと全長が300mm以上の少し大きめなモンキーレンチになってしまいます。
そうなると持ち出し用工具としてはNGですよね。

そして自由にサイズを変更出来て、なおかつ『つかんで回せる」メリットがありますので。

プライヤーレンチの活用

2ストロークのダートバイクのプラグ回しとしても使えます。

そうそう!このプライヤーレンチは『つかんで回せる』のですが、これが普通のモンキーレンチとの大きな違いでもあります。
さらにこのプライヤーには秘密がありまして。

プライヤーレンチの活用

赤い矢印の部分をよく見ると『テコの原理』ようになっておりまして、握った力の約10倍の力を先端のつかみ部分に掛ける事が出来ます。

これによって。

プライヤーレンチの活用

出先で不意に破損してしまった金属部品の修正等にも活躍するんです。
実際この工具は自動車の鈑金屋さんにも人気の工具でして、握る力が強いわりに刃先がフラットなので相手を傷付けないで鉄板の修正が可能なんですね。

ってなわけでこの工具、KNIPEX(クニペックス)のプライヤーレンチ。
特にコンパクトな180サイズ。

1本持っていると。

  • 最大35mmまでのネジ回しとして使える。
  • 普通のプライヤーの替わりとして活躍する。
  • 破損部品の修正に使える。

と、良いことずくめ。
他にも突然出てきたインチネジに対応したり、四角ネジ等の異型ネジにも対応可能。
他のメーカーからは一切出ていない唯一無二の工具ですので、持っていて絶対に損じゃないと思います。

最初は「え、ちょっと価格が高いかなー」とか悩むとは思いますが、購入後のユーザーさんの満足度は非常に高いですよ。