プラスのネジのお話

今回はみなさんが一番気になるプラスネジの話でも。

まぁあまり詳しすぎる話とか歴史の事言っても仕方がないので、昔から良く話題に上る「輸入工具と国産工具の合う合わない」のお話。
これ、私が工具というものに仕事として正式に携わった25年前よりも、もっとずっと前から言われている事でして「輸入工具メーカーのプラスは国産車に合わない」って話題について。

ちなみにプラスのネジにはちゃんと世界統一規格があってその名は「フィリップス」
ネジの国際規格の「phillips screwdriver」は世界中のどの生産国でも同じネジとして扱えるようにしたアメリカ発祥の規格でして、よく工具のカタログでプラスドライバーの表記が「P2」とかになっているのは「プラスの2番」ではなく「フィリップスの2番」ってな意味なんです。
(別にプラスの2番でも困らないけど)

ただし。
そんな国際的な統一規格があるはずのプラスネジですが…やはりなんか合わないというか、なめやすい場合があるのも事実でして。

プラスネジのお話

で、その話には続きがあって例えば国産メーカーのベッセルとか使っていると、どんなネジでも合うとの事。
逆にSNAP-ONとかPB等のいわゆる「輸入工具メーカー」のドライバーを使っていると合わないプラスがあると。
つまり輸入工具のプラスは海外ネジには合うけど国産ネジには合わない。
国産工具のプラスは海外&国産ネジのどちらにも合う。

プラスネジのお話

こんな都合の良い話があるもんか!って不思議に思いました。
しかしこの謎、都市伝説みたいなこの話の決着は結構簡単な話でして、私も15年前くらいに工具メーカーの開発さんに聞いて納得しました。

いまでは結構有名な話になりつつありますが、それでもお店で似たような質問をされる事がまだまだありますので簡単に説明を。

プラスネジのお話

まずはそもそも世界規格があるのにドライバーの形状に違いがあるのか?
で、よぉーく注意深く見てみるとちょっとだけ違うんです。

国産と海外メーカーのプラスには上記の絵のような違いがあります。
これは注意してみていないと分からないくらいの違い。
絵なので大げさに書いてます。

これ見て分かるのは海外メーカーのは尖っているんですね。
でも国産メーカーは尖ってない。
ちょっとだけ寸足らずな先端であとの寸法等は全て同じ、先端の尖りがあるかないかだけの違い。

で、なんでこんな事になっているのかというと日本独自の「JIS規格」のネジに秘密がありました。

プラスネジのお話

適当に書いた絵で分かりにくくてすみません。
こんな感じでドライバー形状で推察出来る通り、ネジ側も寸足らずなんです。

この寸足らずなJISネジに尖った海外ドライバーを差し込むと奥まで入りませんからナメ気味になります。
逆に国産ドライバーは寸足らずなネジに合わせて作られているので、JISネジはもちろん国際規格のフィリップスネジにもなめる事なく食いついてくれます。

ってなわけで「プラスネジにドライバーが合わない問題」は全て日本独自のJIS規格が原因で引き起こっていた先端の数ミリの長さ違いが元凶でした。

そんなわけで過去から現在まで海外メーカーのドライバーはダメだ説が流布されていたわけです。
決してユーザーの気のせいじゃなかったんですね。
で、そうなると「じゃやっぱり輸入工具のドライバーはダメなんじゃない?」って事になってしまいますが、もちろん工具メーカーだって対策しないわけありません。

実はPBのプラスドライバーは「日本仕様」と言うのが存在しまして、現在正規で輸入されているPBは全て国産ネジにピッタリ合います。
(先端がJISネジにも対応する形状になってます)
エイビットでは数ある海外のドライバーメーカーの中でPBをイチオシで販売してきましたが、こういった対応の良さも考慮してのオススメなわけです。

あとあれですね、ネジの制作がアジア圏に外注されるようになり日本独自のネジの流通自体が減っていると思いますので、昔ほどこの問題は表面化しなくなりました。
ぶっちゃけ今では知らなくても良いような話ではありますが、今でも当時の輸入ドライバーはNG説を信じ切っているいる人もいますので、そんな時はこっそり教えてあげてくださいませ。