先日SNSでちょっとした話題になった
トルクレンチの持ち手部分を短く持ったり長く持ったりすると設定トルクから狂ってしまうので注意しましょう
ってやつ。
元ネタはこのKTCの公式さんがつぶやいたこのツイートが発端になりました。
たくさんの反響ありがとうございます! なぜ?という声が多かったので、少し補足します!
「ねじにかかる力」と「カチッとなる力」は、正しい位置に力を掛けることを前提に設定されているため、グリップ位置が変わると誤差が生じ、力の強さや機種によっては作業精度に大きく影響してしまうのです!! pic.twitter.com/3Kr1k6NO6Z— 【公式】KTC 🔧 京都機械工具株式会社 (@kyototool) May 29, 2019
このツイートに関して分かっている人は「そうそう、これ」と言い、生理的に受けつけない人が「なんだよ、意味わからないないよ」とかの意見で喧々諤々に。
しかし工具の中でも特にトルクレンチ関連の話ってやたらと荒れるので私はリツイートだけして静観しておりました。
そしたら私の友人であるショウジ氏がなんかやはりおかしいと検証し始めたので無視出来なくなったんですね。
ちなみにこのKTC公式の図では支点と作用点が何箇所かに書かれていて工業系の人が見ると生理的に嫌な感じなので、この図から理解出来ないって人の意見も私はなんとなくわかるんです。
で、ショウジ氏の出した結論は握り部分の持ち手距離を変えても変化なんかしないよ!KTCは間違ってるかもよって事でした。

そうなると無視出来ないのはトルクレンチを販売している私でして、これに待ったをかける事に。
でもショウジ氏が検証してくれた話は私にとってもすごく良いこともありまして、それは「わからないと言っている人が誤解している点が理解出来たという事」です。
まず上でリンクしたKTCの公式さんの図がわかりにくいので、とにかくわかりやすくを重視しての説明にするためにちょっと改竄させていただきました。
こんな感じ。
多くの人が誤解しているのはプリセット型トルクレンチは「A」部分のトルクをA部分で測定していると思っている点です。
(ここで支点とか力点とか言い出すとわかりにくくなるので省きます)
でも実際の設定したトルクの感知は「B」部分で行われているのです。
A部分で測定及び感知しているならばグリップ部分の持ち手なんて関係ないですし、実際A部分で測定しているトルクレンチも存在するので余計にややこしくなっているのです。
しかし多くのプリセット型トルクレンチはB部分で感知して作動します。
これをすっごくわかりやすく説明しようとすると「テコの原理」な感じの図を書くと理解しやすいです。
こんな感じ。
上のトルクレンチの図のA・B・Cと相関して見てもらえると嬉しいです。
先程も書いた通りプリセット型のトルクレンチの実際の作動箇所はB部分になります。
テコの原理でAの物体を持ち上げようとした時に正規のC部分に掛かる力が正常なトルク値だと考えてください。
それよりも短い部分で持ち上げようとするとより大きなトルクが必要に、そして長い部分で持ち上げようとすると少ないトルクで十分になる事はわかりますよね。
つまりこれと同じ事がプリセット型トルクレンチに起こっているわけです。
(ショウジ氏が検証してくれた実験でも短めに持つとオーバートルクが掛かる事が証明されております)
ここまで説明するととんでもなく簡単な話なのですが、トルクレンチの内部構造や作動原理がわからないとなかなか腑に落ちない話になってしまうのは仕方ないと思います。
小難しく作用点とか言い出すからわかりにくくなるわけで、実際はこんな簡単な話だと思って理解してしまっていいと思います。
その他にもトルクレンチを使う側、つまり作業者のヒューマンエラーの話とかもあるのですが、あまり面倒な事いっても仕方ないので今回はとりあえず
トルクレンチはメーカー指定のグリップ部分を持って作業しましょう。
って事だけ覚えておいてくださいませ。
※文中でちょっとおかしな箇所もありますが、とにかくわかりやすく説明したい為の表現ですのでご容赦ください。
追記:分かりやすくを念頭に書いたブログでしたが理系の方から総ツッコミをいただきました。
そうしたらこの件を元に詳しい内部構造と力学的な証明をしてくれたフォロワーさんがいましたのでそちらをリンクいたします。
詳しく知りたい人&納得したい人は下記リンクをご一読ください。
https://md-study.com/torque-wrench-structure/