トルク管理の方法(締め付け角度による管理)

トルクレンチの扱いや購入方法って意外とプロメカさんでも分からないって人もいて、お店に来てもらえればある程度その場でお話して解決するのですが遠方の方はこういう書物とかを読んで購入する事になるのでトルクレンチの話題ってのはいつでも人気エントリーになりやすいです。

で、そんなトルクレンチの紹介をしたSNSで「角度締め」の事も少し書いてというリクエストを頂きましたので私が理解している範囲でかなり大雑把に書いてみたいと思います。

そもそも角度締めとはなんじゃらほい?って人もいると思いますが、読んで字のごとくトルク管理をボルトの締め付け角度でする方法です。
正式には「塑性回転角法」とか呼ばれてますので詳しく知りたい人はこのワードでググって貰えればOK。

アングルトルクゲージ

KTC 1/2アングルトルクゲージ

超簡単に言ってしまえば「規定のトルクを掛けて、そこから更に角度で60度締め込む」とかそういった使い方がされているトルク管理法です。

アングルトルクゲージ

実際に現場で使われてるのだとこんな感じですね。
この工具はそんな60度とか120度とかのサービスマニュアル通りの角度に締め込むためのアングルアダプターです。(別に分度器とかでもOKですよ)

この角度締め(塑性締め込み)ってかなり特殊に思われるかもしれませんが、普通の人でも意識せずにやった事があったりします。
それはスパークプラグの締め付け。
スパークプラグのメーカー公式でも座面についてから新品時で1/2回転とか書いてあるのも塑性締め込みの親戚みたいな方法です。

で、この締付け方法。
せっかく高価なトルクレンチがあるのになぜわざわざ角度で締め込まなければいけないのか?って疑問になると思いますが……
個人的な意見として言わせてもらうとコスト削減ですかね。(悪い意味ではなく)
一般的に自動車整備に使われているプリセット型のトルクレンチでは下は5Nmから上は200Nmあたりまでを揃えて持っているってのが普通だと思います。
(ちょっと大きいものでも400Nmとかですよね)

しかし、たまーにですけどこのトルクを超える大トルクで締め込まないといけない部品ってのが存在するわけです。(それも結構重要な部品で)

そういう部品で有名なのはクランクのコンロッド締結ボルトとかです。
トヨタの6気筒エンジン1JZとかではかなり有名な話だと思いますが、このコンロッドボルトの締め付けではまさにこの角度締めが整備書に記載されておりまして、実際私も現場に居合わせた事がありますが……
まぁボルトがぶっちぎれるんじゃないか?と思うくらいのトルクをかける事になります。
そんなでかいトルクをかけるためだけに各ディーラーや各整備屋さんに大きなトルクレンチの購入を強いる、またそのトルクレンチの精度を維持させるのはコストがかかり過ぎるんじゃないかと思うわけです。
その点塑性締付けで行えば最悪分度器だけあればなんとかなるし、角度次第では90度を2回とかにすると誰にでもわかりやすいので下手すりゃ分度器すらいらないですからね。

他の業種や業態の事まではよく知りませんが車両整備に出てくる角度締め指定ってのは大抵「大きなトルクの管理」に用いられる方法です。
また塑性締め付けでは高張力ボルトの伸びを前提とした大トルクをかけるので、一度使ったボルトの再利用が出来ないって事くらいを覚えておけば大丈夫だと思います。

ちなみに角度締めでも起点となる角度締め開始時のトルクの設定がない場合があります。
そんな時は「ネジの伸びを感じる直前」──ネジをキュっと締め込んでここから本格的に締め込むってところを起点にしてみてください。

角度締め未経験な方が初めて行う場合「え?こんなに強く締めて平気なの?」って思うかもしれませんが、もともとそんな締め付け方法だと思ってチャレンジしてみてください。

※本当に個人的な理解で書いてますので間違った事がありましたらこっそり教えてくださいませ。