一年くらい前から噂だけはあって出るぞ出るぞと言われていたKo-kenのZ-EALシリーズの新型3/8ラチェット。
フローティングギアという新発想で軽快な動きはそのままに72ギアを採用した期待のラチェットです。
コンパクトラチェット(1/4ボディ)を除く合計6モデル全てが新しくフルモデルチェンジしましたので、ちょっくら個人的な雑感と問い合わせの多い事をFAQっぽく書いてみようかと思います。
すでに入手したり現物を見た人なら分かると思いますが、パッと見た目は従来の36ギアとなにも変わりません。(型番すら同じ)
外観というか見た目の筐体は旧36ギアモデルと見分けがつきません。
そんな感じなので新型の72ギアには商品タグが付けられていて販売時に混同しないようになっているくらいです。
種類は先述した通り6種類。
・Z-EAL 3/8スタンダードラチェット(ストレート・首振り)
ドノーマルのスタンダード長のストレートと首振り。
・Z-EAL 3/8ショートラチェット(ストレート・首振り)
手の平すっぽりサイズのショートのストレートと首振り。
・Z-EAL 3/8ロングラチェット(ストレート・首振り)
全長280mm(スタンダードの倍くらい)な長さをもつロングのストレートと首振り。
この6種類がフルモデルチェンジしました。
どれがオススメとかはないので自分で気に入ったラチェットを買ってくれればOKだと思います。
さてこのラチェット。
昨今の多段ギアの流行りにのっての72ギア化だと思うとちょっと物足りない感じもしますよね。
実際他のメーカーは100ギア近くまでいってるし「今さら72ギア?」と思った人も多いハズ。
でもKo-kenはあえて72ギアを採用しました。
ここに何があったのかをちょっとだけ推理してみたいと思います。
(完全無欠の独断と偏見です)
旧ラチェットとなった36ギアラチェットは世の中が多段ギアに進む最中に発売された、いわばラチェット技術革新中に作られた過渡期のモデルであったと推測出来ます。
Ko-kenの中でもZ-EALという新ブランドを立ち上げるにあたって「売り」にしたいひとつであったと思うし、完全に新規の金型でつくられるラチェットがゆえにその時に組み込める最新の技術を用いたと思います。
それでも多段ギアを採用するのは製造コストも掛かるし…って感じで、その時の落とし所が「36ギアラチェット」だったのだと思います。
で。
ここからは本当に身勝手な個人的推論なのですが、よくコーケンってラチェッティングのトルクが軽いよねって話があると思いますが。
これは多分…多分ですよ、完全なメーカーの後付け設定かなと。
別に批判とかではないんです、作ってみたら「それも売りになるよね」なんてのは物作りの現場ではよくある事だと思うし、まして悪い事でもないですからね。
実際それ以前からノーマルKo-kenのラチェットが軽いのは2つ爪モデルが多く残っていたり、20ギアくらいが多かったりで作動が軽くて当たり前の状況でした。
これくらいのモデルが軽いのはKTCだってTONEだって同じくらい軽かったですからね。
そして一応新型ギア機構を採用した36ギアモデルを完成させてみたら、なんだか軽いのが出来ちゃってまわりから「さすがKo-ken、カリカリと軽快でいいよね」なんて言われていつの間にかそんなのなかったはずなのに「空転時のラチェットが軽いのはKo-kenの伝統」とか言われるようになってしまったんだと思います。
※実際昔のKo-kenはそこまで売りにしてなかったような気がします。
で、今回の72ギア。
この伝統の…ってのが作動上限になって72ギアってのが選択されたのでは?と思えてしまうわけです。
つまりギア数のスペックよりも作動の軽さをとったという感じですかね。
もちろん製造コストとかそっちがメインだったとは思いますが、こういった邪推も面白いかなーと。
まぁこれには多くの反論があると思いますが推理して楽しんでいるだけと思ってご勘弁ください。
そして今回のラチェットにはちょっと興味深い新機構が採用されております。
それがこの内部ギアにある「フローティングギア」の存在。
多段ギアを作るのにあたって問題になるのが各部品の精度です。
単純にギア数が増えれば増えるほどメインギアのひと山の物理的大きさが小さくなりますからね。
各部品の「遊び」をなくしていく方向に作っていく事になるわけです。
ちなみに旧世代のラチェットって36ギアがマックスと言われてました。
スナップオンでもKTCでもみんな小判型のラチェットって最高のギア数が36ギアだった時代がありまして、当時の作り方だとそれ以上のギア数にすると公差(遊び)がなくなりすぎてめっちゃ重いラチェットにしかなりませんでした。
ですので仕方なく36ギアを採用していたのですが、その後の技術的なブレイクスルーがあって現在の多段ギア時代になっているわけです。
で、今回のZ-EALに採用されたフローティングギアはそんな「遊びをなくす」のと「ギアを軽くする」といった相反する事象をクリアする秘策的技術だと思います。
図のフローティングギアは左右に少しだけカタカタと動きトルクが掛かった時だけメインギアにしっかりと噛み込んでくれるようになってます。
このギアの仕掛け。
考えれば考えるほど「よく思いついたなー」と関心してしまうのですが「ん?」と違和感というか思いついた事がありました。
このフローティングギアというか非固定のギアってどこかで見たことあるな、と。
あ!これだ と。
ギアの作りこそ違えど丸形の72ギアラチェットには半月状の非固定(半固定?)のギアが使われております。
この非固定のギアがトルクが掛かる瞬間にメインギア部分に噛み込むわけでして…なるほどつまり形こそ違えどこの機構をうまく小判型ラチェットに転用したのかな?と考えついたわけです。
これも別に非難したいわけじゃなく「よく思いついたなー」と関心してます。
(違ってるかもしれませんが、こういうの楽しいですよねw)
ってなわけで今回フルモデルチェンジしたKo-kenのZ-EAL新型72ギアラチェット。
言うのは簡単だけど実際に作るのはかなり大変だったと思います。
個人的にもオススメのラチェットですので興味ある人はぜひお試しください。
追伸:SNSで一度書きましたが問い合わせが多いので簡単なFAQをここにも記しておきます。
Q:旧36ギアのラチェットに新72ギアのリペアキットを組み込めば動きますか?
A:動きますが壊れます。
内部ケースの公差が違うため一見すると問題なさそうに見えますが耐久性はメーカー保証の1/5以下まで落ちます。
(Ko-ken社内での耐久試験を行っていて実証済みとの事)
Q:3/8が出たから次は1/4が出るんだよね?
A:1/4の開発は難航しているというかほぼ断念している状態で、2021年中に出てくる可能性はほぼないとの事。
1/4に関してはギア数をもう少し落としたバージョンで開発しているみたいです。
あまりにもよく聞かれるのでここに書いておきます。
これらは間接的に聞いたとかではなくKo-kenの開発に直接聞いた話です。
●追記
後日Z-EALラチェットの分解修理の記事を書きました。
そこで新型72ギアの内部構造画像もアップしてますので合わせて読んでみてください。
Z-EALラチェットの修理&新型の検証