工具メーカーKTCの変化

もう随分昔の話になってしまいましたが、私が独立して工具販売を始めた時にちょうど新規発売になったのがKTCのネプロスでした。
当時のKTCの営業担当さんがアタッシュケースに入れて試作品を見せてくれたのは今でも鮮明に覚えております。

そんな感じで個人的にはちょっとした縁を感じるメーカーのKTCがカタログを一新しました。

KTCカタログ

KTC 総合カタログ 2022

今月発売の最新カタログとなりますので最近出た新商品も網羅されております。

KTCプライヤー

KTC コンビネーションプライヤー

これとか。

KTCマグネットホルダー

KTC マグネットソケットホルダー 角度可変タイプ

これとかもちゃんと載ってますね。

そしてKTCは今年2022年にかなり変革を迎えそうな感じです。
いろいろ噂話程度ですが話が来ているのですが、まだこの場で発表出来るような事ではないので徐々に明らかになるでしょう。

KTCスイベルラチェット

KTC 3/8スイベルラチェットハンドル

ヒントというか私の推測ですが昨年末に登場したこの3/8スイベルラチェットが後から考えるとキッカケになったのかな?と思えるような変化が水面下で進んでいると考えております。

KTCカタログ

そうそう、今回カタログが新しくなったのでいつものように古いカタログを本棚に差し込みました。
さすがに古いカタログが邪魔になってきたのでそのうちまとめて断捨離しようかと思っているのですが、いざ捨てようと思うとためらっちゃう自分がいたりしますね。

今年は様々な分野で値上げの波がきておりますが、それだけじゃなく生き残りをかけた変革も同時進行しているように思えます。
当店も負けないようにがんばりたいですね。

固着したボルトナットに

外を走り回る自動車やバイクはもちろん、屋内固定の設備機器でも困ってしまうのが固着して緩まないボルトナット。
主な原因は経年劣化にともなう錆だと思いますが、車両の場合だと風雨とかいろいろ複雑な原因も考えられます。

まぁ原因はなんだとしても、緩んでくれないと困るわけでして。

整備の現場では緩まないボルトに対しての様々な方法論が確立してまして、その中でももっとも古典的で確実なのが『熱を入れる事』と言われてます。
そのカラクリはなるほど納得な感じでして、別に熱のせいで緩むわけではなく、熱を入れる事による膨張を利用した理にかなった方法です。

で、それではどうやって熱を入れるの?って事になるわけですが。
最も簡単なのが。

ハッコー ヒートガン(温度風量可変モデル)

ドライヤーで温める方法です。
紹介してるのは工業用ドライヤーでめっちゃ熱くなるヤツですが、サンメカさんならとりあえず家庭用ドライヤーを局所で当てっぱなしにして温めても少しは効果があります。

 

そしてプロの現場での定番がこれ。

SK11 ガストーチ(ワンアクション式)

SK11 ガストーチ(ワンアクション式)

バーナーで熱する。
火を使うので使用箇所はある程度限られますが、やはり直火の効果はなかなかすごくて錆で固着したボルトナットにはかなりの効果があります。

 

そしてそんな固着系な困った作業が多い現場にちょこちょこと売れていて評判いいのがこれ。

SMT ミニダクター2

上で紹介したような火を使った器具を使えないような場所や、ピンポイントで熱したい箇所があるような作業ではものすごい威力を発揮する工具です。

こんな感じで電熱線ではなく磁力線によって対象物をピンポイントで熱する事が出来ます。
イメージはガスコンロの代用になっているIHコンロみたいな感じですね。
価格はかなりお高いのですが、それでもこういう作業が多い現場からの評価は高いオススメ工具のひとつです。

作業前に錆びたボルトを見て「あ、こりゃやばいかな」なんて感じたら、いきなりレンチを掛けるのではなく、事前にいろいろ準備してみましょう。

3月の年度末を迎えて

コロナ禍になってからすでに3年目に突入しました。
当店のある埼玉県ではいまだに準緊急事態宣言下にあり夜も9時を過ぎると街は一気に静かになってしまいます。

工具の業界もこの2~3年で大きく変化しており、特に関連の大きい基幹産業である自動車部門では半導体不足や材料不足による関連工場の鈍化等がかなり深刻な事態になりつつあります。
そして工具の製造や流通自体にもかなり影響が出ておりまして、昨年の夏ころから顕著な品不足、メーカーや問屋での欠品も多くなってきました。

そしてついに原材料の高騰の余波を受け工具業界にも値上げの波がやってきました。

昨年末頃から当店取り扱いの主要メーカーの価格改定(値上げ)が相次いでおります。
1社2社ならがっつり告知をいれて対応するのですが、10社20社となってくると自分の所の価格変更に追われてしまい、年末年始はそういった自社のデータベース変更やら店頭ポップ変更等々、とにかく雑務に追われてしまいました。

そして今月は3月。
いわゆる年度末という事で業界内にある意味ひと区切りがつくタイミングです。
まだ値上げを敢行していなかったメーカーが4月1日から一斉に値上げをする案内が毎日のように送られてきております。
そんなわけで出来れば値上げ前の今月に購入しておいた方が良さそうなものを少しだけ紹介します。

エンジン式洗浄機

蔵王産業 エンジン式高圧洗浄機『ヴィットリオZE』[ショートノズル付]

まずはこのエンジン式洗浄機「ヴィットリオZE」
メーカーさんと組んで当店も開発に携わった本機ですが製造元の値上げや運賃の増加で4/1から値上げとなります。
また昨年から「おまけ」としてお付けしているショートノズルも値上がってしまい、現在の在庫をもっておまけとしてつける事が難しくなりそうです。

少し交渉もしましてなんとか一気に値上げってわけではなく、段階的に値上がるようにしてもらいましたので、出来れば今月中に購入しておいて欲しいと思います。

それと値上げをなんとか踏みとどまっていた輸入工具のPBとKNIPEXも4/1から値上げが確定しております。
PBはそれほど上がらないのですがKNIPEXは結構上がる予定なので、こちらも合わせてご検討ください。

エイビット店内

品薄と値上げ。
なかなか厳しいご時世ですが何かありましたらお気軽にご相談くださいませ。

システムTOOLBOX「T-STAK」

長年工具の専門店をやっているとかなり斬新な新製品の工具とかでも冷静な目で見ることが出来たりするのですが。
(まぁいうても仕事ですからね)

たまに「おぉ!これは」と思える商品にも出会ったりします。

今回はカタログではそれほどではなかったのですが、現品を見てかなり好きになってしまい、店舗でお客さんと話をしているうちにかなりのお気に入りになってしまったものを紹介。

DeWALT TSTAK

それがこのデウォルトから登場したシステムツールボックスの「T STAK」シリーズ。

DeWALT TSTAK

DeWALT T_STAK特集ページはこちら

もともと電動工具で有名なDeWALTは樹脂製工具箱も多く作っていて、やはりシステムで使えるタフシリーズとかではそこそこ人気だったのですが、今回のT_STAKシリーズは従来品よりも「ちょっと小さい」んですね。
この小さい感じが日本のユーザーにバッチリ合うと思いまして、取り組んでみる事に決めたのですが実物みたら大きさとかよりもその機能性に驚かされました。

DeWALT TSTAK

DeWALT [T-STAK] 2段引き出しチェスト

特に驚いたのがこの「引き出しチェストタイプ」
こういう引き出しのついた樹脂製工具箱は以前からいくつかありましたが、これとにかく造りがすごい。

DeWALT TSTAK

引き出しひとつずつにちゃんとベアリングレールが採用されていて、開閉がとにかくスムーズ。
またロック機構も良く出来ていて持ち運ぶ時のストレスもない仕掛けになっております。
ぶっちゃけT_STAKシリーズで全部揃える必要はあまりないと思っていて、この引き出しタイプだけ購入するのも全然アリかと。
実際売り出してから引き出しタイプだけを数個購入してガレージの棚にセットして使いますってユーザーさんが結構多いです。

DeWALT TSTAK

そしてシステムツールボックスというくらいなので上下連結ももちろん可能。

DeWALT TSTAK

車輪付きのベースユニットと組み合わせればこんな風にゴロゴロと移動も可能。

DeWALT TSTAK

ちなみに車輪付きのベースユニットは3種類出ていて、上で紹介したラージボックス付きのモデルが耐荷重30kg(ハンドル部)なのに対して、このモビリティユニットは耐荷重100kgなので重量物を運ぶ前提ならこちらをオススメします。

そして私の個人的にお気に入りの組み合わせがこちら。

DeWALT TSTAK

上はオーガナイザーのラージボックス、下は引き出し1段のチェストモデル

これを出先用の工具箱として使いたいと思ってます。

DeWALT TSTAK

ラージボックスにはケミカルやウエス等備品系を詰め込んで、下の引き出しにはネジとか部品を詰めておけば完璧。
オーガナイザーモデルは上部に大型ハンドル付いているので持ち運びも便利っす。

あと全種類にってわけではありませんが対象の工具箱を買ってくれると

DeWALT TSTAK

このクリップボードがおまけで付きます。(今だけ限定です)
あとで買うと9000円くらいするLEDライト付きのクリップボードですのでかなりお買い得かと。

DeWALT TSTAK

店舗にも全種類とはいきませんが在庫を置いてあります。
興味がある人はぜひご来店くださいませ。
アメリカ製品なのでバリが出てたり仕上げが適当だったりする箇所もあるのですが、まぁ使う分には問題ないので気にしてません。
基本的な造りはかなり良いと思います。

あと現物を見る事が出来ない遠方の方は私のお気に入りって事で安心して購入くださいませ。

ネジロック剤ロックタイト

車両整備に長く関わっていると少しずつだけど時代とともに変わっていく事っていくつかあります。
最近では当たり前になった内燃機の制御でもキャブからインジェクションに変わっていく時は現場のメカニックさんも結構苦労した記憶があります。

そして生産現場の変化や設計思想の変化とかでも変わっていく事ってありまして、個人的には気になっていたのがネジの変化。
例えば最近の新車についているボルトナット。
ワッシャーがなくなったと思いませんか?

昔ならワッシャーをかまわせて取り付ける…とか当たり前だったのですが、近年まったく見なくなりました。
まぁその分傘付きボルトやナットに変わっているだけなのですが、少し前なら当たり前だった事がいつの間にか変わってたりするんですよね。

そしてボルト関係ではもうひとつ。
「ネジの弛み止め」の存在。
確かに昔からありました、でもそんなに多くの箇所に使われていなかった印象なんですよね。
でも近年のサービスマニュアルみるとかなりの箇所に緩み止めの指定が書かれております。
まぁこの辺は設計にも関わる話なのであまり言及はしませんが、とにかく確実に昔よりは使用頻度は高くなっていると思います。

そしてネジの弛み止めのケミカルで有名なのがロックタイト。

ロックタイト

ロックタイト ネジロック剤243[中強度]

ロックタイト ネジロック剤263[高強度]

もはや代名詞的に有名なケミカルでありますが、詳しく知っているか?と聞かれたら結構曖昧な人も多いと思います。

ちなみによく使われている中強度の243は少し前まで「242中強度」という型番でした。
それが環境対策とかその辺の事情でモデルチェンジしまして242から243に変わっております。
性能や効能はほぼ同じですので、古い指示書等で242と書かれていた場合には243でも大丈夫だと思ってください。

そして「中強度」と「高強度」
これも間違って買ってしまう人が多いので要注意です。
よく分からないままネジの緩み止め剤を初購入する人に多いのですが、なんとなく高強度の方が強そうなので高強度使おうと安易に考えている人がいます。
ですが高強度はほぼ永久接合に近い強度を持っていますので「二度と外さないネジ」ならともかく、また分解時に緩ませるボルトナットには使わない方がいいです。
ですので普通の車両整備での使用は基本的に中強度を買っておけば間違いありません。

それでも高強度を使わざるを得ない箇所ってのもありまして、例えば密閉された中の部品で緩んだらかなり困る部品等では高強度の指定もあったりします。
そんなネジを外すときには「とにかく熱してみる」事が基本となります。

これはロックタイトの242とか263の使用を前提とした話になりますが、この手のネジロック剤は大抵の場合、使用温度範囲ってのが決まっております。
そして上限が大体どのメーカーも150~200度くらいです。(高温対応モデルもありますので要確認)
ですので、それ以上かその温度に近い高温にしてあげればケミカルが融解し、ネジを傷めずに緩める事が出来ます。
この熱を入れるってのも意外と知られてなかったりしますので、まぁ豆知識くらいに覚えておいて損じゃないと思います。

あとついでにもうひとつ。
ネジロック剤は「嫌気性」だという事。
嫌気性とはかなり大雑把にいうとその辺に垂らしておいても固まらず、ネジを密着させて空気を遮断した状態になってはじめて固まる性質だと思ってください。
すでにネジロック剤をお持ちの人ならわかると思いますが、ネジロック剤のキャップ部分や先端部分って、よくある接着剤のように固まって出てこないって事が無いと思います。
ネジに塗ってギュっと締め込んで空気に触れない状態になってはじめて硬化するわけです。

でもこれが工具箱の中でこぼれたりタレたりした時がちょいと面倒でして、いつまでもベタベタしてわけですからね。
そんな人に出先用工具箱向けに人気なのが固形のスティックタイプ。

ロックタイト248

ロックタイト スティックタイプ ネジロック剤248[中強度]

スティック糊のようになっていて半固形のネジロック剤です。
固形だって事以外は243の中強度と効能がほぼ同じですので屋外とかでも便利に使う事が出来ます。

こんな感じで近年需要が増えてきたネジロック剤。
まだ持ってないって人は出番が来てからでは遅いですので、自分にあったモノを揃えておきましょう。