電装のロックコネクターの脱着

もう何度も同じ事書いている気もしますが、整備の中で突然出てくる金属なネジでは無い接続物。
自動車内装のホックとかをいじると、とりあえず回せば緩んだり締まったりする普通のネジって楽でいいなぁって思わせてくれます。

で、そんな面倒な作業の中でもコツとかも多少ありながら基本はハンドパワー頼りでプロ・アマ問わずに大変なのが各種電装系のコネクターの脱着。

現在のセンサー盛りだくさんな車両では、自動車やバイクにかかわらずちょっとした作業でも出てくるので面倒ですよね。
私なんて外さなくて済むなら多少取り回しで苦労してもコネクターはずさないで作業しちゃう事もあったりします(ホントはダメw)

で、さすがに大勢の人が「面倒だなぁ」なんて思っていると専用の工具とかが出てきまして。
今日はズバリ使える専用工具を紹介。

ktc_capADX7

KTC コネクターハウジングプライヤー

他のメーカーからもすでに似たのが何種類か出ているのですが、現在だとこれが最強ですかね。
このクワガタみたいな工具でカプラー部分のロックボタンをグイっと押せるので、人間は引っ張る事だけに専念出来ます。

ktc_capADX1

またこのKTCのモデルはご覧のように先端のクロー(替え爪)が3種類ついているので、いろんな種類のコネクターに対応する事が出来ます。

なおかつこの爪の素材(多分ステンレス)がすごく良くて若干ですけどしなるんですね。そのしなりのお陰で押す力を持続する事が出来てすごく作業しやすいです。

ktc_capADX5

ちなみに付いているクローはこんな感じ。

HPでも説明してますが基本はやはりA型ですね。
これを常時さしていいれば困ることはあまり無いはず。
あとC型は待ってましたの形状ですね、このカタチがいままで取れなかったので嬉しいラインナップだと思います。

一般の方だとちょっと高価に感じる工具だと思いますが、自分の車両でたまに使うなら慣れてない人ほど買っておいて損じゃない工具だと思いいます。

使い捨てグローブのおすすめ

作業用に手袋をはめる事が是か非かな論争ってのはありますが、オイルや塗料でベタベタになりそうな時に「使い捨て出来るグローブ」ってのはかなり便利です。

よくある青い薄手にビニール手袋でもいいのですが、車両整備の現場では破けやすくちょっと心許無いなぁ……なんて人も多いはず。
そこでエイビットの店舗で人気なのがちょっと厚手のニトリルグローブのこれ。

エンジニアグローブ

ミタニ エンジニアグローブ(ニトリルグローブ)50枚入

このちょっと厚手のエンジニアグローブが大人気です。
ちょっとやそっとでは破けにくい手袋でして、重作業を伴うような場面でも安心して使うことが出来ます。

またよく見るとこんな感じで鱗状にクロス加工がされていて下手すると素手よりも作業感覚が良かったりします。

またコロナの影響でか様々な現場からの引き合いも多く、現在ちょいと品薄になりつつありますが国内のミタニからの供給ですので多分大丈夫だと思います(希望的なあれ)

こういった使い捨てグローブってすでにいろいろ使った事がある人も多いと思いますが、このエンジニアグローブはワンランク上な感じですのでぜひお試しくださいませ。

精密ギボシ端子の圧着

くっそ暑かった夏でしたが「暑さ寒さも彼岸まで」とのことわざ通りに、ここ数日で一気に秋めいてきましたね。
私も今年はリビングにあるものを一新するのでソファー買ったりテレビを買い直したりしてたら暖房関係が何も無くなっている事に気がついて慌ててヒーター等の検討に入りました。

そしてこんな気候になってくると整備に関する問い合わせが増加傾向になります。
愛車の整備にはうってつけの季節だと思いますので、めっちゃ寒くなってしまう前にいろいろ準備しておきたいですね。

さて本日は最近特に問い合わせが多くなってきた「精密ギボシ端子」の圧着の話。
近年はカプラーの小型化が進んだり、車両のFI化に伴うセンサー系配線が増えたりと電装のコンパクト化が計られております。

カプラーの中とか配線同士の接合で使われているB端子、通称ギボシ端子もちっこくなっているんですね。
車だとやはりECUやセンサー関連、バイクでは何気なく出てくるウインカー配線とかでも使われてます。

で、このギボシがホントに小さいんです。
従来のギボシ圧着用のプライヤーではうまくつぶせません。
昔からド定番のプロ向け圧着工具であるこれ↓

izumi_B125_nw4

イズミ 圧着ペンチB125

普通に出てくる通常サイズのギボシならこれで問題なく使えます。
ギボシ圧着では店舗も含め一番人気のイズミですが、やはりこれでは精密端子がうまくつぶせないんですね。

そこで今プロメカさんの間で人気になっているのがこれ。

hozan_p706nw3

HOZAN 精密圧着対応プライヤー

これもB端子専用なんですがとにかくかなり小さい物まで対応出来ます。
その分機能も制限されててワイヤーカットとかストリップとかは出来ません。
まぁ専用品なので仕方ないんですけどね。

ちなみにこれを使うと……。

hozan_p706nw4

写真上が精密端子。(下は通常サイズ)
こんな感じでばっちり圧着可能です。
前にも書きましたが電装仕事ってその人の整備スキルが分かっちゃう怖い作業ですので、こういった所を綺麗にしていると「あの人は出来る!」と思われますね。

ちなみにこのHOZANの圧着はよくあるなんちゃっての工具に比べるとかなり作り込まれた逸品工具です。
私はこの工具の試作段階からいろいろ見させてもらいましたが、圧着部分やその厚み等々、そうとうな研究を重ねて製品化されております。
精密まで対応出来るので小さめなギボシ対応工具ということで注目を集めておりますが、通常サイズのギボシ圧着にもお勧めです。

ちょっとマイナーな事ですが、プロはこんな工具使ってやってますよーってなお話でした。

シャローソケットについて

いろいろある工具の総合メーカーでもある程度共通の悩みというのがありまして。
それは工具スペックの平均化です。

工具って別に自動車やバイクの整備だけに使われているわけじゃなく、建築や工場とかもうありとあらゆる現場で活躍しているわけです。
で、そんな様々な現場で求められる工具のスペックって結構違うんですよね。

かなりガテン系な現場ではハンマーで平気で叩かれたりして過酷な使用状況ですし、かたや車両整備の現場では手が入らないのはもちろんのこと工具すら入らないような状況での整備が行われていたりします。

これだけ現場ごとに同じ「工具」ではあっても要求されるものが違うってのはメーカーとしてはそりゃ辛いんでしょうね。

で、そんな要求への答えのひとつが自社ブランドをもうひとつ立ち上げる事だったりします。
KTCのネプロスとかもちょっと違うけどまぁそんな感じなわけです、はい。

で、もうあからさまに「それ」が理由で作られたブランドで有名なのがKo-kenの『Z-EAL』シリーズかと思います。
素材や製法はスタンダードシリーズとほぼ同じで、あくまでも車両整備向け工具としての設計だけで違いを見せてくれたブランドですね。

Z-EAL

このジールの中でも最も分かりやすい違いというと全てにおいて「薄く」作られている点かと思います。
ソケットとかでも薄いというのは隣接するパーツやボルトを逃げる手段として最もシンプルで有効ですからね。
で、この薄くはソケットの背の高さにも採用されております。

Z-EALソケット

Z-EAL 3/8ショートソケット

一般的にはシャローソケットと呼ばれる背の低いソケットを通常採用したわけです。

Z-EALソケット

実際スタンダードなKo-kenと比べてもこれだけ違います。
この背の低さが車両整備の現場では威力を発揮する事が本当に多いんですね。

ただしこれ。
なんてことないオープンスペースの整備現場では逆に背が低すぎて使いにくい場面もあったりします。
尖りすぎたスペックはそういう弱点も持っているって事です。
背が低けりゃ低い程どんな場面でも良いのなら全工具メーカーは全てのソケットを背の低いシャローソケットに変えると思いますが、今でも少し野暮ったく見えるスタンダードソケットを作り続けている理由は「全ての整備現場で平均的に使える事」を前提とした作りになっているからなんですね。
だからKo-kenのZ-EALシリーズってのは車両整備の現場で頑張るメカニックさんに向けたKo-kenのひとつの回答だと思います。

ちなみにシャローソケットってZ-EALだけの専売特許ってわけではなく、他のメーカーからも出ております。

SIGNETシャローソケット

SIGNET シャローソケットセット(1/4・3/8・1/2)

これも店舗ではコスパに優れる事からかなり売れているソケットセットとなっております。

普段使い用なら普通のショートソケットをおすすめしますが、狭所で苦労するような整備をやっている人はぜひシャローソケットも追加でお試しくださいませ。

トリプルスクエア(XZN)の解説

見たことない種類のネジが出てきて困る事ってありますよね。
自分の車両だけさわれればOKなサンメカさんならあまり気にすることはないと思いますが、様々な車両を請け負う事になるプロメカさんだと仕方ない事だと思います。
ましてネジの種類っていまだに日々進化しておりまして、工具を専門で販売している私ですら「え?」ってネジが出てくる事があるくらいですからね。

で、そんなちょっと変わったネジなんですけど。
実は昔からあるのに「日本でメジャーではなかった」のが原因で広く知られていないってネジも結構あります。
これにはいくつか種類があるのですが、このブログでも何度か書いているヨーロッパ車で昔から多く使われているトリプルスクエアというネジが工具販売店としては最も問い合わせのあるネジですかね。

ギザキザした12角のキャップボルトなんですけど……。
一見すると工具のめがねレンチとかの12角と同じに見えるので、六角レンチを突っ込んでしまう人が多く壊してしまってから問い合わせがくる事もあります。

で、このネジ。
トリプルスクエアというネジ種なんですけど日本語にすると「3重4角ネジ」なんです。
ここでいくら言葉で説明しても分かりにくいと思うので図にしてみました。

ネジ内角

左が一般的な12角。
六角が1回ずれて角が12個ある形状です。

で、右がトリプルスクエア。
そう3重4角というくらいなので4角形が3重になっているんですね。

これの決定的な差は1山の角度です。
図にもある通りもともと六角形の12角は120°です。
この形状になら六角レンチを差し込んでもそれほど問題ではないです。
(本当は専用工具あるのでそちらを使って欲しいですけど)

そして4角形が基本のトリプルスクエアは角が90°です。
これにいくら合いそうな六角レンチを突っ込んでもなめてしまって終了となります。

トリプルスクエア

>>トリプルスクエア紹介総合ページ

車両整備向けには「XZN」とか言われる事もあります。
とにかくヨーロッパ車を整備していて12角のキャップボルトが出てきたら99.9%このネジだと思ってもらってOKです。
そしてヨーロッパ車ではこのネジがそんなに特殊な箇所で使われているわけじゃなく、かなーり普通にいっぱい出てきます。
(特に車検整備ではないと仕事にならない程度です)
サイズもちょっと分かりにくいのでできればセット買いがオススメですよ。