美しく。

結構昔、もう20年近く前の話になるのですが・・・まだ工具業界に入ったばかりの頃の話なのですが、とある有名整備工場に工具の営業で飛び込んだ時にそこの従業員さんに「別に工具で仕事するわけじゃねーからなー」とか「工具にこだわるなんて仕事の出来ないヤツのする事だよー」とか結構手厳しい事を言われ、事門前払いを受けそうになりヘコんでいたんですね。

まぁ時代ってのもあって、その頃はまだ輸入工具とかもほとんど知られて無くてスナップオンでさえ「え?なにそれ?」とか、そんな事言われたりした時代でしたから、工具自体の選択肢もあまり無く、気に入った工具を選ぶと言う風習もまだ浸透していなかったんですね。

で、そんな事を言われ縮こまっていた私はスゴスゴと帰ろうとしたんですが、奥の事務所から工場長さんが出てきて一喝。

「おめーら!何が工具にこだわらねーだ!ふざけんな!」

「工具があるからウチらは仕事出来るんじゃねーか!」

「買う買わないは後で決めれば良いんだ!ちゃんと工具の説明を聞いてやれ!」

と、言ってくれました。私はポカン・・と。
で、更に。

「工具で仕事してるわけじゃねーだとー?んじゃおめーは明日から手でボルト回せ!いいな!ジャッキも使うな!全部自分の手でやってみろ!」と。

今思えば飛躍した極論でむちゃくちゃな事言っているんですが、とにかく私はその後一生懸命工具の説明をし何度か通ってお得意さんになってもらう事が出来ました。

その後その工場長さんと茶を飲みながら話す機会があって、いろいろ聞いたのですが、ようはお金を貰ってお客さんの車をいじるわけだから綺麗な仕事がしたいと、で綺麗な仕事をやるには手間暇掛けるのが一番なんだけど時間を掛けていたら採算が合わない、なのでそういう費用対効果が見込めるモノにお金が出せないならば、これからの整備業界では生き残れないと。

今だと結構当たり前の話なのですが、その当時にそういう事を言う人は少なかったので驚いた記憶があります。

私がエイビットのHPの説明でも「美しい作業」とかたまに書くのですが、そのときの話が頭に残っていてそういう表現が多くなるんだと思います。

で「綺麗な」「美しい」の評価が見た目ですぐ分かる作業のひとつに配線作業があります。
これコワイですよね、手を抜くとすぐに分かっちゃいますから。実際自分でも見えない所の配線とかで手を抜くタイプの人には今でも作業を任す気になりません。

配線工具の中でも昔から定番人気で評価が高いのが横スライド方式のワイヤーストリッパー。

 

縦型とかもあるし手動のヤツで良いのもあるけど、いろいろな配線作業をやるにはやはり必須の工具のひとつです。

 

これが出来るとエレクトロタップを使わずに綺麗な配線が可能になります。もちろんナイフやニッパで器用にやってしまう人もいるのですが、工具に頼ってしまうのも決して悪い事ではありません。確実に迅速な作業が出来ますからね。

ちなみにその時の工場長は引退しちゃいましたが、いまだにお付き合いがあり自分の車を楽しきいじっております。隠居してあんな感じの生活出来たら楽しいだろうなぁ。