入院顛末記 ─手術編─

5月10日12時40分。
病室のドアが開き

「そろそろ手術室に向かいますよ」

と看護師から言われまして。
自分の足で立ち上がり靴を履いて点滴のアレを持ってガラガラと自分の足で歩いて移動開始。

「あ、そうだ。看護師さんちょっと写真一枚撮ってもいい?」

と聞いて普段はあまりやらない自撮りを1枚だけパシャリ。

入院手術編

もうね、最高に情けない表情してますがこれから未知の手術に向かう人間としてはこんなもんかな?とは思います、はいw

私の病室は4階だったのですが手術フロアは2階にあるのでエレベーターに乗って2階に移動。
(点滴のアレは自分でガラガラと押してます)
2階フロアは普段エレベーターが止まらないようになっていて、入院中も立ち入ったのはこの手術の時だけでした。

2階のフロアは他の階と違ってもうね、すごいの。
完全に近代的な手術のためのフロアって感じでとにかくすごいの(語彙力)

入院手術編

流石にスマホの持ち込みとか出来なかったので拾い画像だけど、マジでこんな感じでした。
で、私は「3」と書かれた手術室に通されるのだけど、直前の待機所みたいなところで担当の看護師と手術のスタッフとの受け渡しみたいな儀式があり

「氏名・生年月日・生体タグ確認」

とかそんな感じで手術スタッフに引き渡されました。
そこでメガネと靴を脱いでくださいって言われ、ストレッチャーに寝かされました。
(ここで看護師さんとはお別れ)

そこからもうドラマと同じ。
カラカラカラカラっと寝たまま手術室に運ばれまして。
そこには昨夜挨拶にきてくれた麻酔の先生と先述の相談にも乗ってくれた主治医の先生がいまして。

「「はい、よろしくお願いします」」

ってな感じでにこやかに挨拶されまして。
もうね、自分ではどうにもならないの、流れに身を任せて内心「わーわーわー」とか思っててもガンガンと事が進む感じ。

ここでも再度「名前をフルネームで言ってください」と言われて答えまして。
そしたら横にいた麻酔の先生が

「はいー、じゃぁ麻酔が入りますよー」

と少し呑気な掛け声を言いました。
入院前に全身麻酔の手術経験がある人からいろんな話を聞いていて、ある人は「数を1から数えてくださいねー」とか「名前と生年月日を繰り返し言ってくださいねー」とか言われるよ、なんて聞いたりもしてたのですが……
結局そんな事もなく

私が覚えているのは麻酔の先生のさっきの掛け声だけ。
多分次の瞬間には麻酔が効いて眠ってしまったんだと思います。

 

っとまぁこんな感じで手術が始まったと思うのですが、当たり前だけど術中の記憶は全く無し。
書くこともほぼないので今回行った手術の事について少しだけ書いておきますね。


私の病名は「後縦靭帯骨化症」という頸椎(首)の中の主神経の周りにあって神経を守るはずの靭帯組織が骨になってしまう難病。
もちろん数日で骨になるわけではなく、何年も何十年もかけて骨化するわけですが、骨化によってメインハーネスである主神経を押しつぶしてしまい、結果として狭窄症を起こしているわけです。
ちなみにこの骨化という症状は比喩とかではなく、何故か本当の「骨」になってしまうみたいで腫瘍とかとは違い「骨」そのものに害はないとの事。

首の骨というのは節みたいな感じで前後左右にグリグリ動くようになっているのですが、その節は頸椎に7個分あります。

入院手術編

上から順番に1~7の番号を付けるとすると。
私の場合は3番から7番までの5個分をいじらなければならなくて、特に4番・5番・6番の3個は切断してスペーサーを入れて再度ハメ込み、その上下にあたる3番と7番は内側を削ってスペースを作るって感じ。

分割されスペーサーを入れられた背骨と削ってスペースを作られた部分のおかげで背骨内に主神経の通り道を確保してあげるってのが今回の手術の主な目的となります。

まぁ聞くだけでも怖いっすよね(笑)
実際手術の方法とかの説明は事前にあったのですが途中まで聞いて「あーもういいす、大体分かりました」と言って聞くのをやめたくらいでしたからw
(さすがに術後に詳しく聞きました)

そんなわけで首の後ろ側を10センチ以上切られ背骨を露出するために、首の主な筋肉を剥がされてしまいました。


そんなこんなで手術の時間的には2時間ちょっと。
その後ICU的な場所で40~50分バイタルチェックが行われまして、無事に自分の病室に帰ってきました。
(まだ目覚めてない)

入院手術編

これは手術の終わりを待つカミさんが撮影した病室に戻り覚醒する前の私。
私はまだ眠っているのですがなぜかスマホのシャッター音がした事だけは覚えているんですよね。(不思議)

そしていよいよ目覚め。

 

入院手術編

「……知らない天井だ…」

目が覚めてすぐに看護師さんから「手術は無事に成功しましたよ」と伝えられました。
誰かが言ってたけど本当に術前に麻酔打ったと思ったら、目覚めたら終わってる状態でしたね。

そしてとにかく喉が乾いていて飲み物を求めて口を開けようとするんだけど、うまく口が回らなくて「うーあー」とか言ってました。
あ、そうそう。
この時に自分的に印象的だったのがずっと涙が出ていたんです。
感情の起伏とかは一切なくてただポロポロと出続ける涙。
多分身体の危機的状況に反応して無意識で出ていたんですかね?この涙はなんなんだろう?とか結構冷静に考えていました。

それでも徐々に覚醒していく私。
なんとか飲み物を飲ませてもらい「他に欲しいモノありますか?」と言われたので時間が見たくて「スマホを取ってください」とお願いしました。

その時に何気に撮った写真が上の天井写真です。

そして無事を確認し落ち着いた頃にカミさんはとりあえず帰宅。
看護師さんからは痛くなったらすぐに手元のスイッチを押してくれと言われ、なんだろう?と思ったら即効性の痛み止めが出るスイッチでした。
(点滴に自動で入るみたい)

で、ここから地獄の48時間耐久の始まり。


ベッドに横たわる私。
腕には点滴と反対の腕にはバイタルチェックの何かのコード。
口には酸素マスクが付いて、下半身にはおしっこの管が入っております。

入院手術編

そして首の後ろから生えているのが血抜きのドレンホース。
このドレンホース、手術痕の横3センチくらいのところに独立して皮膚に穴を開けて刺さっておりまして、仰向けの体制を崩してはいけない私は常に首の後ろに硬いホースがゴリゴリと。
そりゃもうずっと、ゴリゴリとゴリゴリと……
ちなみに食事も36時間以上とってないのだけど腹は減らない。

とにかく身じろぎひとつNGな状態で全身に何かしらが取り付けられた状態ですでに24時間経過。
日付は手術の翌日5月11日になっております。
朝日が登って朝だという事は分かるのだけど横を向いたりも出来ないので、とにかくこの姿勢のまま我慢我慢&我慢。
そして背中の管はずっとゴリゴリゴリゴリ……

ようやく朝の回診で先生と看護師さんがきてくれて再度手術は成功した事と身体も安定(体温や脈拍、血圧等)しているので大丈夫ですよって伝えられました。

でも。
「はよーこの背中の管を抜いてくれー!」
ってのが本心でして、その件を聞いてみました。
そしたら先生が

「かなり順調なのでもうすぐ背中とおしっこの管は抜けますよ」

と!
マジか!やったぜ!
(もうすぐっていつだよー?)

「そうだな明日の朝には抜けると思うよ」(満面の笑み)

えええぇぇぇ!
明日の朝って何時ですか?と聞くと「8時半頃かな?」と。
今何時だろう?と思ってスマホを覗くとAM9:00の文字…。

24時間後かよー!
と心で大きく叫んじゃいましたね。

後はずっとスマホの時計とにらめっこ。
ちょっと経ったかな?と思ってスマホ見るとまだ15分しか経ってない…。

入院手術編

ちなみにこの写真。
私の枕元の横にある有料の冷蔵庫。
200円で24時間動いてくれるのですが入院してすぐに電源入れて

24時間×3=72時間分

を払ってある状態だったんですね。
そういえば冷蔵庫って後何時間動くのだろう?と思った私は姿勢が崩せないのでスマホで何度も写真撮ってやっと稼働時間部分が写ったのがこれでした。
そこで非情の残時間「18」の文字が…。
ああぁ冷蔵庫切れちゃうやん!って落ち込みましたが、あとで看護師さん来て延長ボタン押してくれたので事なきを得ました。

そんなこんなでやっと。
本当にやっとの思いでそこから24時間が経過。

待望の全ハーネス除去に臨みます。

次回最終回。