ラジエターフィンの修正

内燃機に関して高出力や高効率を狙う場合に重要になってくる熱問題。
冬場にかけてエンジンが調子良かったりするのも、夏場の暑い時期にエンジンがタレ気味になるのも全部何かしらの熱が関係してきます。

まぁ馬力と言うか出力自体が熱交換の話なので当たり前と言えば当たり前なのですが、内燃機に関してはエンジン自体を効果的に冷却してあげるっての結構重要な事なんですね。(もちろん気温による空気密度も関係あるけど)

実際自動車のECUをいじったことのある人ならわかると思いますが「水温補正」も結構馬鹿にならない補正が掛かっています。
サーキットやジムカーナ、また渋滞時等々知らないうちに水温補正によってエンジンの出力を下げるような措置がコンピュータ内で行われていたりすることもあるんですね。

それくらい重要な水温を下げてくれる装置がラジエター。

昔と違ってアフターパーツでもそこそこ安価で高効率な物が入手しやすくなりましたから、水温とかを気にする人はそういった物に交換済みな人も多いと思いますが……。

が。

それホントに本領発揮してますか?
飛び石とかいろんな原因でコアつぶれを起こしたラジエターが本来の性能が徐々に出せなくなっていきますよね。
せっかく交換した良いラジエターも徐々にですが冷却性能が劣化していきます。

そんな時におすすめなのがこれ。

keiba_rajiX2

KEIBA ラジエターフィン修正プライヤー

国産ケイバから発売されているラジエターフィン修正専用のプライヤーです。完全に専用品なので他用途には使えませんが、その分フィン修正には絶大な威力を発揮します。

keiba_rajiX1

もともと国内のGTレースのチームから依頼されて作った特注品だった物を製品化した工具ですので、その使いやすさはかなりの物ですね。

keiba_rajiX4

近年のコア間が狭いラジエターにもばっちり対応してますし、マイナスドライバーでぐりぐりやるよりも「確実に起こしながら戻せる」ので簡単に修正する事が出来ます。

地味な箇所の整備ではあるのですが重要な冷却装置の修正が簡単に出来るのであればお買い得な工具だと思いますよ。

ロングな1/4HEXの活用

工具の中でも現場次第で売れ行きが大きく異なるものっていくつかありまして、例えば今回紹介する六角レンチなんかもキャップボルトがほとんど使われてないような職種とかがあって、そういう現場のHEXへの関心度は当たり前ですが低いです。

で、そんなHEX工具の重要度があまり高くない現場なんかで突然六角レンチが必要になったりする場合があって、普段は気にしてなかった工具なので結構相談される事が多いんですね。

いくら六角レンチの重要度が低くてもいわゆるL型HEXレンチくらいは持っていたりするのですが……

PBHEXレンチ

PB 丸軸L型HEXレンチセット(ロング・ボール)

キャップボルトが多くなったり、難しい場所にボルトがあったりするとL型だけではなかなか対処出来ません。

そんな時におすすめしているのがソケットタイプのHEX。
ラチェットを使って回せるし、そもそもトルクも掛けることが出来るので特に6mm以上のサイズが出てくる現場にはおすすめです。

で、そんなソケットタイプのHEXの中でも個人的におすすめしているのがこんなロングなHEXと首振りラチェットの組み合わせ。

1/4HEX

実際1/4の首振りラチェットと組み合わせるとこんな感じ。
トルクを掛ける事も容易だし角度や奥まった箇所のアクセスも良好です。
もっともっと奥のボルトに対してはエクステンションバー付けてあげればいいだけですから、この組み合わせで持っているとかなり重宝します。

でもでも。
1/4のHEXソケットってほとんどのメーカーがスタンダード長を超ショートに設定しているのでなかなかロングモデルってないんですよね。
そんなわけで今回は個人的におすすめな1/4差し込みのロングHEXソケットをいくつか紹介。

Z-EAL1/4HEX

Z-EAL 1/4ロングHEXソケット

まずはKo-kenのZ-EALからひっそりとラインナップされているいわゆる「ちょいロング」の1/4HEXソケット。
サイズは3~6mmまでの設定ですが整備向けとしては必要十分だったりもしますので、お店でもかなりの人気商品です。

PB1/4ロングHEX

PB 1/4ロングHEXソケット

そしてこちらはプロメカさんから絶賛されているPBのロングHEX。
全長も上のZ-EALと同じく「ちょいロング」な雰囲気ですが、一体成型ってこともあり剛性感もあってガンガン使う人には本当に高い人気を誇ります。
(個人的に使っているのはこのモデルです)

ネプロス1/4HEX

nepros 1/4HEXソケット単品

そして近年ジワジワと人気を伸ばしているのがネプロスの1/4HEX。
こちらも珍しくちょっとだけ長い全長のHEXがスタンダードとして設定されてまして、使い勝手はかなり良いHEXソケットです。
ちょっと前まではサイズがあまり出揃ってなかった関係で馴染みがなかったのですが、昨年にサイズバリエーションが増えたのをキッカケに指名買いの人が増えてきました。

ネプロス1/4HEX

nepros 1/4ロングHEXソケット単品

そしてそんなネプロスには本当のロングモデルもあります。
ホールの奥にキャップボルトが埋まっているような箇所では軸長がないと難しい作業もありますのでこの本当のロングは嬉しいですね。

ネプロス1/4HEXソケットセット

nepros 1/4HEXソケットセット(スタッピ・STD・ロング)

そしてそんなネプロスの追加サイズまでフルで入ったセットも新登場しております。

こんな感じで現在L型HEXレンチを使って四苦八苦している人や3/8差し込みのHEXソケットを使って「ちょっと大柄だよなぁ」なんて思っている人は、1/4ラチェットで使えるちょっとロングなHEXソケットを検討してみるのもいいと思いますよ。

サイズ豊富なシャコ万力

新商品というか輸入品なので国内取り扱いが始まったというか、とにかく様々な工具を取り扱う工具の総合商社的存在のIRWINから地味に追加された工具が「シャコ万力」

いわゆるC型クランプってヤツで昔からある定番工具のひとつです。
あまりにも定番すぎていまさら感もあるのですが、このIRWINのシャコ万が紹介以来なんだかすごく売れております。

IRWINシャコ万力

IRWIN C型クランプ(シャコ万力)

まず実物を見てみるとなかなか造りが良い点。
本体はまぁ剛性だけあればいいのですが、ネジ部とか受け部とかがかなり考えられて作られております。
そして「安価な点」
これはかなり驚かれるのですが、特に大きいサイズの安さがかなり目立っておりまして、下手な中華製買うくらいならこれはかなりお買い得なCクランプかと思います。

そしてサイズがとにかく豊富。
もともとシンプルな使い勝手なC型クランプですから、対象物に合わせたサイズってのが結構重要な工具です。
ですのでこれだけサイズが揃っているってのはかなり利点なんでしょうね。

IRWINシャコ万力

IRWIN 深懐型C型クランプ(シャコ万力)

そしてこれまた地味に人気なのがこの「深懐型」
こういう懐長の深いクランプを探していたって人が多く、サイズこそ2種類しかありませんが、とにかく問い合わせが多いです。
しかしこちらの深懐型は在庫外とさせてもらっているので取り寄せに少しお時間が掛かります(3~4営業日)
ご注文の際は余裕を持ってお願いします。

ってなわけで、いまさらに新商品であるこのC型クランプ。
なんだかすごく人気が高いですよってお話でした。

木工用のバイスグリップ

ガチャンと掴んで離さないロック機構付きのプライヤーとして人気のバイスグリップ。
この「バイスグリップ」というのは登録商標でして、工具の分類名としてはロッキングプライヤーが正解なのですが、整備の現場ではやはりバイスグリップという通り名の方が有名ですよね。

バイスグリップ

IRWIN バイスグリップ[スタンダード]

ま、それくらい本家本元であり元祖であるバイスグリップですが、木工用としても海外で人気なのはあまり知られておりません。
まぁそれだと知らなくてもホームセンター等で似たようなモノは見掛けた事があると思うんです。

クイックグリップ

IRWIN クイックグリップHD ワンハンドバークランプ

金属用のバイスグリップはいろんなところにコピーされまくったのと同じで、この木工用のクイックグリップもコピーされて類似品が多く売られております。

で、そういうのを使った事ある人は口を揃えて「イマイチ…」というのでが、この本家のクイックグリップ、ましてHD版(ヘビーデューティー版)はちょっと違いますよってのが今回の主題。

クイックグリップサイズ

サイズもいろいろあるんですが、実際の機構部分(青い部品)の大きさは変わりません。
あくまでも開口幅である黒いバーの長さが違うだけなので、サイズが違っても能力は一緒で締め付け力は272kgを誇る超本格派の木工用バイスです。

クイックグリップ

完全プロ向けの業務用クランプなのでいわゆるその辺で売っているなんちゃって品とはわけが違い造りになっております。
当店でもツーバイフォー住宅の業者さんに人気なんですよ。

木工用とはありますが、相手を傷つけたくないようなクランプにもオススメ。
また使い方がいろいろ工夫できるのでユーザーのアイデア次第でいろいろ活躍する工具だと思います。

トルクレンチの握り箇所を変えるとトルクが変化する件

先日SNSでちょっとした話題になった

トルクレンチの持ち手部分を短く持ったり長く持ったりすると設定トルクから狂ってしまうので注意しましょう

ってやつ。
元ネタはこのKTCの公式さんがつぶやいたこのツイートが発端になりました。

このツイートに関して分かっている人は「そうそう、これ」と言い、生理的に受けつけない人が「なんだよ、意味わからないないよ」とかの意見で喧々諤々に。

しかし工具の中でも特にトルクレンチ関連の話ってやたらと荒れるので私はリツイートだけして静観しておりました。
そしたら私の友人であるショウジ氏がなんかやはりおかしいと検証し始めたので無視出来なくなったんですね。

トルクレンチ検証

ちなみにこのKTC公式の図では支点と作用点が何箇所かに書かれていて工業系の人が見ると生理的に嫌な感じなので、この図から理解出来ないって人の意見も私はなんとなくわかるんです。

で、ショウジ氏の出した結論は握り部分の持ち手距離を変えても変化なんかしないよ!KTCは間違ってるかもよって事でした。

トルクレンチ検証2
プリセット型トルクレンチの先端にデジタル式の直読トルクレンチを装着しトルクの変化を目視。

そうなると無視出来ないのはトルクレンチを販売している私でして、これに待ったをかける事に。
でもショウジ氏が検証してくれた話は私にとってもすごく良いこともありまして、それは「わからないと言っている人が誤解している点が理解出来たという事」です。

まず上でリンクしたKTCの公式さんの図がわかりにくいので、とにかくわかりやすくを重視しての説明にするためにちょっと改竄させていただきました。

トルクレンチ図

こんな感じ。
多くの人が誤解しているのはプリセット型トルクレンチは「A」部分のトルクをA部分で測定していると思っている点です。
(ここで支点とか力点とか言い出すとわかりにくくなるので省きます)

でも実際の設定したトルクの感知は「B」部分で行われているのです。
A部分で測定及び感知しているならばグリップ部分の持ち手なんて関係ないですし、実際A部分で測定しているトルクレンチも存在するので余計にややこしくなっているのです。

しかし多くのプリセット型トルクレンチはB部分で感知して作動します。
これをすっごくわかりやすく説明しようとすると「テコの原理」な感じの図を書くと理解しやすいです。

テコの図

こんな感じ。
上のトルクレンチの図のA・B・Cと相関して見てもらえると嬉しいです。
先程も書いた通りプリセット型のトルクレンチの実際の作動箇所はB部分になります。
テコの原理でAの物体を持ち上げようとした時に正規のC部分に掛かる力が正常なトルク値だと考えてください。
それよりも短い部分で持ち上げようとするとより大きなトルクが必要に、そして長い部分で持ち上げようとすると少ないトルクで十分になる事はわかりますよね。

つまりこれと同じ事がプリセット型トルクレンチに起こっているわけです。
(ショウジ氏が検証してくれた実験でも短めに持つとオーバートルクが掛かる事が証明されております)

ここまで説明するととんでもなく簡単な話なのですが、トルクレンチの内部構造や作動原理がわからないとなかなか腑に落ちない話になってしまうのは仕方ないと思います。

小難しく作用点とか言い出すからわかりにくくなるわけで、実際はこんな簡単な話だと思って理解してしまっていいと思います。
その他にもトルクレンチを使う側、つまり作業者のヒューマンエラーの話とかもあるのですが、あまり面倒な事いっても仕方ないので今回はとりあえず

トルクレンチはメーカー指定のグリップ部分を持って作業しましょう。

って事だけ覚えておいてくださいませ。

※文中でちょっとおかしな箇所もありますが、とにかくわかりやすく説明したい為の表現ですのでご容赦ください。

追記:分かりやすくを念頭に書いたブログでしたが理系の方から総ツッコミをいただきました。
そうしたらこの件を元に詳しい内部構造と力学的な証明をしてくれたフォロワーさんがいましたのでそちらをリンクいたします。
詳しく知りたい人&納得したい人は下記リンクをご一読ください。

https://md-study.com/torque-wrench-structure/